たったひとつの冴えたやりかた (ハヤカワ文庫 SF 739)

  • 早川書房 (1987年10月1日発売)
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大学図書館の司書が、連邦草創期のヒューマン(人間)のファクト/フィクションを調べているコメノ(という種族)のカップルに三つ選んであげる、
という形で中編三話を並べた形式。

※「ファクト/フィクション」とは、重要な事件や時代をとりあげて、既知のディテールのすべてをそこにぶちこみ、ドラマティックな物語に再構成したもの。
それによって歴史が記憶しやすくなるという。



〇第一話「たったひとつの冴えたやりかた」

ストーリーを一文でいうと、
「冒険心の強い少女が宇宙の辺境を旅して、脳に宿った生命体と友情を育むが、自我が制御不能になる前に共に犠牲になることを決意する」


主人公:コーティー・キャス(16歳)

ライバルもしくは協力者:シロベーン/シル(イーア、イーアドロンという種族)



What if ~(もし~だったら? セントラルクエスチョン)

もし脳に寄生する生命体がいたら?
もし自分が自我を失い、他人に害を及ぼすことが確定的になったとき、残された時間でできることは何?


What(何を描いているか? テーマもしくはコンセプト)

自己犠牲と友情の尊さを描いている。


How(自作にどう活かすか?)

単なる自己犠牲だけではなく、そこに友情や愛情などの絆もえがくことで、感情が大きく動く。



〇第二話「グッドナイト、スィートハーツ」

一文でいうと、

「回収救難官の男が、現場で偶然出会った昔の恋人とそのクローンを救うために、宙賊相手に命を懸けた危険な行動をする」


What if

もし、自分を含め三人のうち二人しか命を救えないとしたら、時間がない中でなにを基準にどう選択するか?


What

崇高な自己犠牲的行動が成功した直後に、一攫千金か昔の恋人か、どちらを取るかという俗なことで迷ってしまうのが人間というものだ。


How

人間の崇高な部分と卑俗な部分を同時に描くことで人間性の深みを表現できる。



〇第三話「衝突」

一文でいうと、
「異星人同士のファーストコンタクトで、誤解や犠牲などを払いながら、カタコトのコミュニケーションで全面戦争を防ぐ」


主人公は不明確だが、ヒューマンとジールタン(という種族)のホームと現場でそれぞれ主要な人物がいる。

ヒューマン:連邦900(基地)ポーナ 現場:トーラン、船長

ジールタン:カナックリー 現場:ジラノイ



What if

敵意を持ち、言葉もあまり通じない相手に最後まであきらめずに向かい合って、争いを回避できるか?


What

自分と異なる存在とわかりあうことの難しさと、相手に信じてもらうためには、自分から信じることが大事だということ。


How
争いごとは、ほんの些細な行き違いで起こる。あきらめずに粘り強くお互いを信頼しようと努めることで争いは回避できる。



 

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF
感想投稿日 : 2020年6月6日
読了日 : 2020年6月6日
本棚登録日 : 2020年6月6日

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