なにこれ、面白い。とにかく読み終わった後の余韻がいい!まさに短編の醍醐味。
表紙にある通り、解釈より感覚にひたりたくなる。
「判決」
タイトルの意味が、最後の方になってやっとわかる。
読んでいるうちに、何が本当の出来事なのかわからなくなってくる。どこまでが彼の中の世界で、どこからが彼の外の世界だったのか。
最後の一文が秀逸。この文を読むと、それまではすべて中の世界だったのでは、とすら思えたり思えなかったり。
「雑種」
本文だけだと3ページ程度の短い作品ながら、とても好き!
「半分は猫、半分は羊という変なやつ」と主人公の男との牧歌的な日常。
ハートフルファンタジーかと思いきや、そこはカフカ。最後の段落でぐっと作品の印象が変わる。
(その文を載せてしまうとつまらないので伏せますが)カフカの他の作品にも通じる異端の悲哀のようなものがふっと感じられて、なんだか切なくなってしまう。
この生物のキメラ的な特性は、精神の分裂を象徴しているという解釈が。言われてみれば納得はできるけれど、そんなことはいいからずっと主人公や近所の子どもたちと幸せに過ごしてほしいな、と思わされる、不思議と愛着のわく「変なやつ」。
「流刑地にて」
正義とはなんなのか。
ただのと言うとなんだけど、ああ恒例の不条理ものかなと思って読んでいくと、自分が確かだと思っていたものがほんの少し揺らぐ。ほんの少し。でも、自分が絶対だと思っているものほど、その「ほんの少し」は大きい。
作中で登場する処刑の機械は、とても残酷なんだけれど、読んでいくほどなぜか荘厳さや美しさを感じてしまう。
機械の針がカフカにとっての「ペン」を象徴している、という考察を読んで、なるほどなと思った。
「父の気がかり」
オドラデクってなんなの!!父って誰なの!!
「夢」
解釈しようとしないで純粋に余韻に浸りたくなる。好きだなぁ。
「夜に」
この感覚は知っている。心の奥深くに共鳴する。
「誰かが目覚めていなくてはならない」
自分は目覚めている人なのか、眠れる軍団なのか。
「中年のひとり者ブルームフェルト」
前後半に場面が分かれている。
前半のめくるめくボールとの攻防が楽しい。「ボールもさるもの」には思わずくすり。
作品を知らない人にとっては何のこっちゃだと思うけれど、ボールとの攻防なのだ。
短編といえば太宰が好きなのですが、カフカの方が好きかも。
前半がすごく良かっただけに、後半の作品があまりピンとこず、テンションが下降してしまったのが残念。
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- 感想投稿日 : 2019年10月25日
- 本棚登録日 : 2019年10月25日
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