彼女の名前は (単行本)

  • 筑摩書房 (2020年9月23日発売)
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感想 : 68
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韓国の女性一人当たりの出産数が0.8人でOECD諸国で最低値だと報道されていた。新聞では主な要因は教育熱の高まりから子育てにお金がかかることだと書いていたけれど、最近立て続けに韓国の本を読んだせいか、背景にはフェミニズム運動の高まりがあるのではないかと私には感じられた。そういう数値出るよなあと、小説の世界と実際の韓国がピッタリ一致したニュースだった。

この本は「82年生まれキムジオン」の作者が、その後に出した本。同作でジオン氏は声を上げず内に内にとストレスを溜め込んでしまうが、こちらに出てくる女性はもっと強くてたくましい。

正直、ボロボロになりながら戦い続ける女性たちの姿は痛々しくて、面白いのだけど気が重くなる本でもある。戦う相手も、男尊女卑を強いる親世代や配偶者だけではない。セクハラを隠蔽しようとする会社や、掃除人や給食のおばさん、鉄道の乗務員といった非正規の女性社員の立場を軽視する会社であったり、さらには当時の朴政権であったりする。その中で、高校生、大学生から社会人までそれぞれがそれぞれの想いを抱いてデモやストライキに参加する姿に、韓国社会の中のうねりの波を感じる。

2016年に出された「キムジオン」を読んだ時は、男尊女卑文化、儒教文化がなんだか凄まじく、「日本も、ここまで口や態度に出さないけどこういう文化残ってるなあ」という感じだったのだが、それから少し進んだこの本の中の韓国社会は、社会運動のうねりという点であっという間に日本を追い越している。そして日本よりも出生数が少ないことが韓国人女性たちの強い抵抗と主張に感じられ、納得するのである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年2月25日
読了日 : 2021年2月25日
本棚登録日 : 2021年2月24日

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