ロミオとジュリエット (新潮文庫)

  • 新潮社
3.52
  • (92)
  • (200)
  • (319)
  • (35)
  • (4)
本棚登録 : 2993
感想 : 191
4

新潮文庫のシェイクスピアは表紙が好みで訳も読みやすかった。
ただ第一幕第一場のしょっぱなのサムソンとグレゴリのセリフのなかの「石炭(コール)かつぎなんて仕事は……」が「虫を殺すのは……」とだいぶん意訳されていた。
「石炭coal(コール)」は続くセリフの「石炭かつぎcollier(コリア)」「癪cholar(コラー)」「絞首索collar(コラー)」という語呂合わせとなるもので、読み比べした岩波文庫『ロミオとジューリエット』ではそのような訳のままだった。
うーん、日本語で英語表現のそのような面白さを表すのはなかなか難しいのだろうな。

岩波文庫版の訳もよくて、だけどジューリエット(ジュリエット)が「乳母(ばあや)」を「あんた」と呼んだり、乳母が「ジューリエット」を「お前様」と呼ぶのは、私のイメージとはちょっと違うんだよね(←細かい)。
やっぱりジュリエットには「乳母」のことは「ばあや」と呼んでいてほしいし、乳母も「ジューリエット」のことは「お嬢様」と呼んでてほしい。
ちくま文庫や角川文庫、白水社などのものは読んでいないのでわからないのだけど、これからも数冊を読み比べてから、どの戯曲も手元に一冊はおいておきたい。でもいちばん表紙がお気に入りなのが新潮文庫だから、そのシリーズを揃えたくなるんだよなぁ。

さきに映画を観たり朗読を聴いたりしていたおかげで、文字からだけでも人物像や情景は十分想像できたので戯曲をスムーズに読むことはできた。でもやっぱり文字だけではあじけない部分もあって、戯曲は演じられることで命が吹き込まれるものなんだと改めて感じる。
なかでもマキューシオとティボルトの、ロミオとティボルトの決闘シーン。たとえばロミオとティボルトが剣を交えるとき、セリフ以外は「(両者闘う。ティボルト倒れる)」の一文であっけなく終わる。そりゃそうだよね、小説じゃないのだから。
だけれどシンプルに書かれているからこそ、自由に想像を広げることができるのも戯曲の脚本なんだなって思う。
シェイクスピアの脚本では、ロミオが初めてジュリエットを意識したシーンは、ダンスをしているジュリエットに気づいてという、まあオーソドックスな出会いなんだけど、私が観た映画はもっとドラマチックな出会いのシーンとなっている。
それはロミオがマンチュアへ追放となる前夜のシーンも同じことで、ジュリエットと過ごした最初で最後の甘く切ない時間をシェイクスピアは書かずに、いきなり場面は朝の窓辺となる。
思ったのは、その余白があることで、これからも演じられていく『ロミオとジュリエット』にたくさんの素敵なシーンが生まれるのだろうなってこと。

原作を読んでよかったなと思ったのは、初めて知ったことがいくつかあったこと。
キャピュレット夫人が、ティボルトを殺しマンチュアへ追放となったロミオに毒薬を飲ませるつもりでいたこと。
パリスとロミオの邂逅、そしてパリスの最期。←これには大変驚いた。
モンタギュー夫人がロミオの追放の悲しみによって、死んでしまったこと。
そしてモンタギューとキャピュレットの和解まで描かれていること。
これらを知って、ロミオとジュリエットの両親とパリスへの見方が変わった。

その上で、やっぱり原作が魅力的だったのは、ロミオとジュリエットの数々のセリフの美しさ、そして若々しさを詩集のように味わえたこと。
原文にも触れてみたくなる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 英米文学
感想投稿日 : 2023年1月9日
読了日 : 2023年1月9日
本棚登録日 : 2023年1月9日

みんなの感想をみる

コメント 6件

雄志さんのコメント
2023/01/09

いつも感想楽しく読ませていただいてます。
シェイクスピア作品の翻訳本で個人的におすすめなのは、研究社から出ている大場建治さんの翻訳です。対訳版もあるので、もし手に取る機会があれば原文との読み比べをしてみてはいかがでしょうか?

地球っこさんのコメント
2023/01/09

雄志さん こんばんは☆

こちらこそいつも楽しくレビューを読ませていただいてます。
雄志さんの「悶絶恋愛モノ」のタグが気になって、とくに雄志さんのレビューから初めて知った「天官賜福」読んでみたいですーー
アニメも観たいですーー

シェイクスピアのおすすめ本、ありがとうございます!
「シェイクスピア・コレクション」というシリーズですね。
さっそく図書館に行ってみます。原文は全くもって全然読めるレベルじゃないのですが、気持ちだけは燃えてるので読み比べはちょっとずつでも頑張ってみます。

最後になりましたが、今年もどうぞよろしくお願いします♪

雄志さんのコメント
2023/01/09

ありがとうございます!改めて本年もよろしくお願いします。
天官賜福は日本語版2巻が2月に出るそうなのでそちらも合わせてどうぞ。。

淳水堂さんのコメント
2023/01/09

地球っこさん
読み進んでますね〜

>セリフ以外は「(両者闘う。ティボルト倒れる)」の一文であっけなく終わる。そりゃそうだよね、小説じゃないのだから。
これ本当にそう。私はそれで戯曲がいまいち読みづらい。
マクベスで「子供刺される。『ぼく殺された!』子供倒れる。女悲鳴を上げて走り去る」残念ながらこれでは悲惨さを想像できなかった…_| ̄|○
シェイクスピアでは、本を手に持ちながら映画見てたりします。

>だけれどシンプルに書かれているからこそ、自由に想像を広げることができるのも戯曲の脚本なんだなって思う。
この読み方こそが戯曲ですね。もっと読まなきゃだなあ。

地球っこさんのコメント
2023/01/09

雄志さん

情報ありがとうございます!
まずは1巻読んでみます~

地球っこさんのコメント
2023/01/09

淳水堂さん こんばんは☆

私は映画とか朗読から入って大正解でした。
先に原作を読んでたら、きっと挫折…か、面白く感じられなかったはず。そこで終わってたかもしれません。
マクベスも、それでは……ですね。
「ハムレット」の朗読ドラマもオススメしていただき聴いたのですが、ハムレットの運命にもう絶望しちゃってしちゃって、聴き終わったあと突っ伏してしまいました。
次は「ハムレット」にいきたいと思ってます。
でもこれも先に読む方からはじめたらそこまでハマれなかったはず。
淳水堂さんオススメの映画と一緒に読み進めることもしたいでーす。

ツイートする