任命拒否された6名による応答的論考集だが、ハッキリ言って玉石混交。中でも2章の加藤陽子のは群を抜いてデキがよい。ここでは「トランスサイエンス」の問題が取り上げられている。この問題は昨今のコロナや原発の問題に通じるテーマである。という意味においては「学問と政治」というよりも「科学と政治」という問題が指摘されていると言えるだろう。
次に興味深いのが任命拒否問題に消極的であるとされていた6章の宇野重規。架空の対話形式でちょっと茶化した書き方ではあるが、消極的であった理由が示されている。また、任命拒否問題に社会的関心が大きくならなかったのは「これは自分の問題だ」と思えなかったという点を指摘し、研究者の力が足りなかったと反省の弁を述べている点は興味深い。
5章も興味深い点はあるのだが、キリスト教思想に傾倒しすぎていて特殊。その他の法学系の3人は憲法問題に絡めてやや恣意的解釈によりエモーショナルに政権批判をしているだけで、これでは読者の支持や共感を得るまでには至っていない印象を受ける。この問題を法的問題として指摘する事は可能なのだろうが、それでは「これは自分の問題だ」とは思えないため、社会的関心が高まらないことを自ら証明してしまっているようにも思える。
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- 感想投稿日 : 2022年6月18日
- 読了日 : 2022年6月18日
- 本棚登録日 : 2022年6月18日
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