〆切本

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レビュー : 128
hotaruさん その他   読み終わった 

世の真理と、そして、不条理までも集めたような、〆切にまつわる話を集めたエッセイ・アンソロジー。
夏目漱石や谷崎潤一郎と言った大文豪、小川洋子や西加奈子と言った平成の今をときめく人気作家、はたまた、作家都合で伸びに伸びる〆切にやきもきどころか時に煮え湯を飲まされた編集者など、多種多様な人々による文章94編から成り立っています。

「〆切が来だからといって書けるもんではないんだよ…まあ、〆切があるから必死になるんだけどね」と言い訳をする作家が大多数なのは予想通りのこと。

意外で面白かったのは、「小心者なので〆切を破るなんて怖くてできない!した事もない!」という悩み?を吐露する、なんとも品行方正な作家さんが数名いたこと。
そういう作家さんは編集者から有り難がられる反面、変わり者扱いされて、挙げ句の果てに、「編集の仕事の醍醐味奪うよな、あの先生」的に言われてしまっていたという…。
世の中って、なんて不条理なんでしょう。
思わず笑ってしまいました。

個人的にとても好きなのは、三浦綾子さんの文章。
晩年は体の調子がよくない綾子さんの代わりに夫の光世さんが口述筆記をしていた三浦家。
出版社に原稿を送った後だったのに、内容にどうにも納得がいかないと思った光世さんは、筆記役の自分の労を厭わずに綾子さんに書きなおすよう進言。
綾子さんも、「第一の読者からの大切な評だから」と受け入れ、二人でやり直しをし、〆切に間に合わせたそう。
この作品集には載ってないのだけど、光世さんが書いたエッセイに、彼から進言してやり直した原稿が、主人公の生きた時代背景と一致しないことが後でわかってボツになり、先に書いた原稿がそのまま採用になったというのに文句一つ言わなかった綾子さんに感心した…という内容があったのを思い出しました。
三浦さんの作品はもう何年も読んでいなかったのだけど、夫婦の絆に改めて読みたくなりました。

色々な人の文章が入っているので、まだ読んだことない作家さんの文章を読んで新規開拓に努めるもよし、好きな作家さんの文章を拾い読むもよし、作家と編集者のスリリングな駆け引きを楽しむもよし。
色々な読み方ができるお得な一冊です。

レビュー投稿日
2018年10月21日
読了日
2018年10月21日
本棚登録日
2018年10月21日
6
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