ハムレットに続いて四大悲劇第2弾
舞台はヴェニス
主人公オセローは「ムーア人」
ムーア人ってよく聞くけどいまいちわからない
(サロメにも登場したなぁ…)
「ムーア人とはむしろ、スペインをその時々に支配したイスラム教徒やアフリカ系の人々などを表す概念…」
(「NATIONAL GEOGRAPHIC」のネット記事にあったのだが、「概念」というところがミソだ 民族に疎い我々にはなかなかわかりづらい)
本書においてはムーア人が黒人ぽく書かれているが、人種的にはコーカソイド(地中海集団)になるらしい
ここでは差別的象徴のように「ムーア人」を使っている感じがする
オセローはヴェニスの軍人でムーア人と少々差別を受けながらも優秀っぽい
最初の印象は誠実で優秀で冷静沈着、高潔な感じの優等生タイプ
彼の人生は波乱万丈で、(千夜一夜物語っぽい)苦労を乗り越え、今の地位を掴んだのがうかがえる
そんなオセローに惚れ、彼も気に入ったデズデモーナは由緒ある純潔な娘
父の反対をも克服し晴れて結婚した二人
幸せの絶頂ともいえるのは束の間…
ここに刺客現わる!
オセローの信頼おける部下イアーゴーだ
ムーア人の将軍に仕えることがお気に召さないのか、オセロー自身が気に入らないのか
とにかくイアーゴーはオセローを憎み、破滅させてやりたい!とメラメラしている
イアーゴーは言葉巧みに人の心を操り、意のままに人を動かしてしまう天才的な悪いやつ
あれよあれよとオセローはイアーゴーの悪だくみにハメられていくのだが…
あれほど揺らぎなく愛し合っていたはずの二人が
まさかのイアーゴーの罠に落ちてしまうのだ!
オセローの性格からしても驚きの展開なのである
イアーゴーのゲスな企みがこれほど皆の運命を狂わせようとは…
生真面目なオセローの狂気がなんだか切ない
ムーア人としての引け目を覆すほどの積み重ねてきた彼の信頼性と実績と美しく純潔な妻…
ああ、全てが一人の罠で泡となる
結構突っ込みどころは満載で、不自然なところも否めないのだが、内容を知らずに読むのはやはり想像力を刺激されるので楽しめる
それ以外に面白いのがシェイクスピアの豊かな表現力
もちろん翻訳者の力量もあるとは思うが…
気に入ったやつをピックアップしてみた
■「体面」ってやつは…
およそ取るに足りぬ、うわつらだけの被せものにすぎない
手に入るときは手に入るし、失うときは失うようにできている
(説得力あります!)
■「酔っ払い」ってやつは…
酔っ払いの悪魔の気まぐれ、勝手に暴れておいて、あとは癇癪の悪魔に肩がわり
(どうにもならないのよ~と伝わってくる)
■「嫉妬」ってやつは
何かあるから嫉くのではない、嫉かずにはいられないから嫉くだけのこと、嫉妬というのはみずから孕んで、みずから生まれ落ちる化物
(確かに 自分の中からしか生まれない そして生かすも殺すもあなた次第)
最後に…
この時代って本当に女性蔑視がひどいのかしら?
女性に浴びせる言葉暴力的過ぎて、さすがにちょいちょい不愉快
当時は普通だったのかな…
それでも健気に頑張る女性像も見どころ
にっくきイアーゴーの妻が脇役ながらに光っていた
- 感想投稿日 : 2023年4月18日
- 読了日 : 2023年4月18日
- 本棚登録日 : 2023年4月18日
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