頭が切れるわけでもなく、あまり聡明ではなくて、頼りない感じだが、顔が良く、守りたいと女性に思わせるのか、誘いはいつも女性の方からという、今のところ反感しか買わないモテるテレビ記者が左手首より先をライオンに食われ、本当の恋やら愛を知っていくコメディだと思う。内面がざんねん過ぎて、主役のテレビ記者はおもしろくないんだけど、周りの人の個性が強すぎて、無垢でおもしろい。特に手の主治医が強烈で、彼の結婚に至るまでの方が、主役そっちのけで気になってしまうほどだ。
移植してもらった手の提供者の妻の「手の面会権」という発想も不思議だが、その妻の人物も神秘的で謎だ。実際の面会もモテる男目的ではなく、夫のものだった左手のみを見、それにのみ反応する。見事にぼくの浅はかな期待は裏切られたのだけど、その夫の左手以外を切り取ったような世界に生きる女と、自らの存在は認められていないように接せられる、現左手の所有者の男の描写が切なくて、男が恋に落ちるのもわかる気がした。それまでが簡単過ぎただけに余計にいろいろと思うところもあるだろう。拒否反応を起こし、再び切除した後、どんな風に展開していくのか、この不思議な物語のあれこれを下巻に思いを馳せたい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
世界文学
- 感想投稿日 : 2012年11月2日
- 読了日 : 2012年11月2日
- 本棚登録日 : 2012年11月1日
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