- Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
- / ISBN・EAN: 9784001155716
作品紹介・あらすじ
第二次世界大戦下のポーランド。ゲットーから脱出したユダヤ人少年は、その時まだ八歳だった。森と農村を放浪する過酷な日々は、少年から片手と過去の記憶をうばった。けれども、少年はけっしてくじけなかった。あどけない笑顔の持ち主は、知恵と力をつくし、ときには友情に支えられて、ホロコーストの嵐を生きぬいていったのだ。
感想・レビュー・書評
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過酷だけどユーモアが漂い、危険と牧歌的な雰囲気が隣り合わせの情景。冷静な視点で書きまとめられた第二次世界大戦の貴重な実体験録。
森でサバイバル生活する少年の姿は、冒険小説を読んでるような楽しさがありつつ、一瞬の出来事で命を落とす不条理さと死の近さは、戦争の現実を突き付ける。また、こんな10歳前後の少年が、自分とは何者かとアイデンティティの喪失に追い込まれる悲しさが胸を打つ。
本作と同様、前作の「太陽の草原を駆け抜けて」(舞台は中央アジア)も、戦争で追いやられた地で子供たちが逞しく順応していくさまを、冒険成長記のように生き生きと描いているのが印象的。
さまざまな戦争文学があるが、こういう作品を子供の頃に読んでおきたかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
第二次大戦下のポーランド、ワルシャワ・ゲット-を脱出し、家族と生き別れとなった8歳のユダヤ人少年(スルリック=ユレク)が、森と農村を放浪しながら、飢えと寒さに耐え、右腕を失いながらも生きぬこうとする過酷な体験を描いた胸迫るホロコ-ストの記録文学です。戦後少年は教育者なり、イスラエルに渡り体験を語り始めます。その聴衆の一人が本著者でありました。『BOOK MARK』のお薦めで、図書館の<YAの本棚>から借りて読んだ感動の一冊です。
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恐怖と暗闇、孤独の中で細々と繋がる生。ただこの一瞬を「生きる」ためだけの日々。
主人公の壮絶な体験はナチス政権下のユダヤ人にとって特別なものではないだろう。何も残すことなく死んでいった多くの人々。生き残ったユレクは、その中のたったひとつの例にすぎない。なぜ、彼が生かされたのか?
絶望の中にも時にはかすかな希望と生きる喜びがあった。それがせめてもの救い。 -
ナチスドイツに支配されたポーランドで迫害されるユダヤ人の8歳の少年がナチスドイツの魔の手を逃れるために1942年から終戦まで3年間に渡った、本名をポーランド名に変えて、キリスト教徒になりすまして、ポーランド人の農場などを転々としながら逃げ続けるのだ。
逃亡中には何回も死にそうになりながらも、ポーランド人に助けられたり、裏切られたりして、時には一人で暗い森の中で生活しながら3年間を生き抜いていく。その生き様と明日はどうなるかわからない運命の日々は8歳の少年にはあまりにも壮絶すぎる。そして、この本も映画もフィクションではなく実話に基づいている。周囲の支援と自分の直感で生き抜いてきた奇跡のような物語である。そして森の中でサバイバルをしていく間に、いろいろと生きる知恵を習得していく。例えば、鶏を盗んでも料理をするのは夜。なぜならたき火は昼間に森の外から煙が見つかってしまい、危険だから。そのようなことは平時においては学ぶことはできない。 -
資料番号:020097309
請求記号:929オ