走れ、走って逃げろ

  • 岩波書店
4.09
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001155716

作品紹介・あらすじ

第二次世界大戦下のポーランド。ゲットーから脱出したユダヤ人少年は、その時まだ八歳だった。森と農村を放浪する過酷な日々は、少年から片手と過去の記憶をうばった。けれども、少年はけっしてくじけなかった。あどけない笑顔の持ち主は、知恵と力をつくし、ときには友情に支えられて、ホロコーストの嵐を生きぬいていったのだ。

感想・レビュー・書評

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  • 過酷だけどユーモアが漂い、危険と牧歌的な雰囲気が隣り合わせの情景。冷静な視点で書きまとめられた第二次世界大戦の貴重な実体験録。

    森でサバイバル生活する少年の姿は、冒険小説を読んでるような楽しさがありつつ、一瞬の出来事で命を落とす不条理さと死の近さは、戦争の現実を突き付ける。また、こんな10歳前後の少年が、自分とは何者かとアイデンティティの喪失に追い込まれる悲しさが胸を打つ。

    本作と同様、前作の「太陽の草原を駆け抜けて」(舞台は中央アジア)も、戦争で追いやられた地で子供たちが逞しく順応していくさまを、冒険成長記のように生き生きと描いているのが印象的。

    さまざまな戦争文学があるが、こういう作品を子供の頃に読んでおきたかった。

  • 第二次大戦下のポーランド、ワルシャワ・ゲット-を脱出し、家族と生き別れとなった8歳のユダヤ人少年(スルリック=ユレク)が、森と農村を放浪しながら、飢えと寒さに耐え、右腕を失いながらも生きぬこうとする過酷な体験を描いた胸迫るホロコ-ストの記録文学です。戦後少年は教育者なり、イスラエルに渡り体験を語り始めます。その聴衆の一人が本著者でありました。『BOOK MARK』のお薦めで、図書館の<YAの本棚>から借りて読んだ感動の一冊です。

  • 著者の実体験をもとに書かれたというだけあって逃亡生活の描写が丁寧で具体的。自分だったら1日もムリかもしれないという日々を、悲観も楽観もなくただただ生きるという姿に、自分が雑に扱っている平和や生きることの基本を思い知らされる気持ちになる。

    J・スピネッリの「天子の羽のように」に登場するウーリーのモデルだと聞いて読みました。

  • 恐怖と暗闇、孤独の中で細々と繋がる生。ただこの一瞬を「生きる」ためだけの日々。
    主人公の壮絶な体験はナチス政権下のユダヤ人にとって特別なものではないだろう。何も残すことなく死んでいった多くの人々。生き残ったユレクは、その中のたったひとつの例にすぎない。なぜ、彼が生かされたのか?
    絶望の中にも時にはかすかな希望と生きる喜びがあった。それがせめてもの救い。

  • ナチスドイツに支配されたポーランドで迫害されるユダヤ人の8歳の少年がナチスドイツの魔の手を逃れるために1942年から終戦まで3年間に渡った、本名をポーランド名に変えて、キリスト教徒になりすまして、ポーランド人の農場などを転々としながら逃げ続けるのだ。

    逃亡中には何回も死にそうになりながらも、ポーランド人に助けられたり、裏切られたりして、時には一人で暗い森の中で生活しながら3年間を生き抜いていく。その生き様と明日はどうなるかわからない運命の日々は8歳の少年にはあまりにも壮絶すぎる。そして、この本も映画もフィクションではなく実話に基づいている。周囲の支援と自分の直感で生き抜いてきた奇跡のような物語である。そして森の中でサバイバルをしていく間に、いろいろと生きる知恵を習得していく。例えば、鶏を盗んでも料理をするのは夜。なぜならたき火は昼間に森の外から煙が見つかってしまい、危険だから。そのようなことは平時においては学ぶことはできない。

  • ③内容
    ・対象: 高、YA
    ・特色&ジャンル ポーランドのホロコースト
    ・時代 第二次世界大戦下
    ・舞台 ポーランド ワルシャワゲットー
    ・主人公 スルリック・フリードマン
    ④キーワード
    ・オススメ 
    ⑤コメント
    ・著者情報 Uri Oriev ウリ・オルリブ
    ヨラム・フリードマンに聞いた話がもと。
    1939年9月1日、彼が5歳のときに第二次世界大戦が勃発、ポーランドはナチス・ドイツに占領された。

    ・出版情報  オリジナル2001年 日本2003年


    ・翻訳の場合は原題 RUN BOY, RUN

    ・背景

    8歳のスルリックはユダヤ人。第二次大戦下のポーランドワルシャワゲットーに父、母、姉と兄たち(ひとりはダヴィド)と暮らす。ゲットー内では、食料がなくゴミ箱を漁る日々。ゆっくり飢え死にしていくより、なんでもためしたほうがいいと、脱出を試みる。以前住んでいたブオニェへ向かおうと。以前そこでパン屋だった。
    しかし、父とはぐれ、母はその後に行方不明。兄ともはぐれ、8歳のスルリックはひとりぼっちになってしまう。
    途中で出会った父との会話、
    P102「これからいうことを、しっかりぜんぶおぼえるんだ。おまえは生き残らなくちゃいけない。どうしても、だ。キリスト教徒としてどうふるまったらいいか教えてくれる人を見つけて、十字の切り方やお祈りをおぼえるんだ。そうすれば、戦争がおわるまでどこかの農家にいさせてもらえる。いつも貧しい人たちのところに行くんだよ。貧しい人たちのほうが助けてくれる。それから、ぜったい、ほかの子どもたちと川で水浴びしちゃいけない」
    「自分の名前を捨てろ。記憶から消すんだ」
    「だが、ぜんぶ忘れても、父さんや母さんを忘れても、自分がユダヤ人だということは決して忘れちゃいかんぞ」
    それから、生きるために農村や森などあちこちを彷徨い、戦争を生き抜く。その中で片腕を失い、記憶を失う。

    ところどころに出てくるユダヤ人の習慣が興味深い。
    例えば
    P56裁きの日に魂が爪をさがさないように、切った爪は焼く。

    セデル~ペサハの食事

    また、キーワードにもなっている「名前」が面白い。

    スルリック ユダヤ人
    ダヴィド(兄) ユ
    スタニャクさん(ブオニェの商店)
    ファイゲ(上の姉)
    モイシェ ゲットー内のサッカー仲間 盗み
    ヤンケル 〃
    ヨイネ靴屋

    シュレメ 森の仲間
    アブルム  〃
    ヤツェク  〃  もどってこなかった
    イツェク  〃
    ヨサレ

    ユレク~森からはぐれてひとりになったスルリックが初めて会った農家の幼子の名前 男に捕まるが、女の人が逃がしてくれた

    ノヴァク~農家 牛を持っている

    マリシャ~牧草で出会った女の子12歳 レンズをくれた

    パルチザンを夫に持つ女性、キリスト教徒の祈り方を教えてくれた

    ヴルベル一家
     主人マテウシュ
     妻マーニャ
     長男ヴィクトル
     次男フランク
     
    ジグムント 土地の子ども、スルリックをユダヤ人と見破る

    ユゼフ・ヴァプイェルニク 牛飼いを探している
      妻と三人姉妹
    アゾール 犬

    神父
    マルタ 年配の女性

    ユダヤ人の屋敷を接収したドイツ士官

    フラウ・ヘルマン夫人

    ジュラプスキ博士

    ヴェルナー ドイツ兵士

    馬車の兵士

    スタニスワフ・ボグタ
      次女マリナ
      長女クララ

    グジェゴシュ 大工

    サーシャ軍曹 ロシア軍

    ヴォイチェフ・ヘルカ
       ヤン
       娘クリスティーナ

    タデク 子ども

    コヴァルスキ 鍛冶屋

    イェジィ・スタニャク(発音)

    モシェ・フレンケル

    ラパポルト

    フリードマン一家
    ファイゲ上の姉
    マルカ下の姉
    ヨセフ上の兄
    ダヴィド下の兄
    父ヘルシェ
    母リヴァ

    ソーニャ

    地名
    ヴィクワ川
    ブク川
    リヴィエツ川
    カンピノスキの森





    アクツィア~移送、強制収容所へ送ること
    『ふたつの名前を持つ少年』
    http://www.futatsunonamae.com/

  • 資料番号:020097309
    請求記号:929オ

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