羅生門/鼻/芋粥/偸盗 (岩波文庫)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003107010

感想・レビュー・書評

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  • 人間って感じが出てて良い

  • 『羅生門』『鼻』『芋粥』『偸盗』。1文が短く、無駄なく、小気味がいい。短中編だが、どれも読みごたえがあり、余韻もある。
    とくに『芋粥』が気に入った。欲望は叶えられないうちが花なのだ。
    『偸盗』は映画のような場面転換の妙。死に行く者と生まれ来る者が重なるラスト。筆一本でこれだけのシーンをつくり出すとは。もっとたくさんの作品を読んでみよう。

  • 模試で出ていた『芋粥』が読みたくて読みました。ゴーゴリーの『外套』を読む前後で少し読後感が変わったような気がします。読む前は「健気な爺さんだな」と思っていましたが、『外套』を読んだあとでは「可哀想な爺さん」だなと思うようになりました。

  • 羅生門は教科書で読んだことがあったけど、当時なかなか刺激的な内容と雰囲気だった。

    芥川龍之介はもちろん知ってるけど
    私の中では作品とは結ばれてなくて、
    有名な偉大な作家、みたいな存在の人で

    そんな人がたまに、作者は…とか言って話の中に
    突然登場するとちょっとおかしかったな

  • 24.06.2021 読了

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/687676

  • 羅生門
    『生きる』という人間の本能について書かれた作品。下人は盗人となってしまったが、その行動は否定も肯定もできない。寧ろ自分が下人であれば同じ行動を取ったのではなかろうか。窮地に陥ると人間はどのような行動を取るのか人間の本能や欲望が垣間見えた作品だ。


    人は妬み羨む生き物であると感じた。人はどうしても他者と比べたがる。下を見て安心するのではなく、また他人からの目を気にせず、自分らしく自分がどう生きるのかが大切だと感じた作品。

    芋粥
    皆似たような経験があるのではないか。例えば、長期休暇に入る前はそれを目標に仕事をがんばるが、休暇に入ってしまうと『すぐに休暇が終わってしまう』と悲しい気持ちになったりする。人は何かしらの目標や誰かの為になど、生き甲斐がある方が人生豊かになるのでは無いかと再認識した作品だ。

  • 「羅生門」を読むと、犯罪の境界線が自分のすぐ一歩さきにあるような気がする。いつ自分が踏み越えるかも、または踏み越えられるかもわからない、そんな日常を生きていると思う。

  • 芥川龍之介の初期の名作3編が収録されています。
    理想主義的な白樺派に対して、少し距離を置いた視点から近代人らしい思想を見出そうという動きが生まれました。
    芥川龍之介はこのムーブメントの代表的な作家で、新現実主義や新技巧派と呼んだり、文芸雑誌「新思潮」を中心として活動をしていたため、新思潮派と呼ばれています。
    本作収録の"羅生門"、"鼻"、"芋粥"は初期の代表的な芥川文学で、人のエゴイズムを克明に描き出しています。

    初期は古典に構想を得た作品が多いのも特徴で、本作収録の作品は四作とも古典が題材となっています。
    絵本の日本昔話のようなとっつきやすさがあり、話がわかりやすく読みやすいです。
    教科書で取り上げられることも多いので知名度も高く、中高生にもおすすめできる作品集と思います。

    ・羅生門 ...
    基となったのは"今昔物語集 巻第二十九 本朝付悪行"収録の一篇。
    相次いだ天変地異位の影響で衰退していた平安の都・羅生門を舞台に、行き詰まった若い下人が、"生きるための悪"に手を染める物語です。
    羅生門は無名作家時代に"芥川龍之介"の名で雑誌・帝国文学に文学に発表され、同時期に新思潮に発表された"鼻"と共に、後に短編集「羅生門」に収録されます。
    結びの文章は度々変更されていて、本書収録のものは雑誌・帝国文学収録時でも短編集「羅生門」でも無く、その後出た短編集に収録されていたバージョンで、最も有名な文句「下人の行方は、誰も知らない。」で締めくくられています。

    "生きるため"という、ある意味でエゴイズムの究極を迫られる状況で、目まぐるしく変わる感情的な変化が描かれる様は鮮やかともいえます。
    装飾せずに言えば、下人の手のひら返しがすごいと感じました。
    このあたりも本作で"エゴイズム"を感じさせる一因かと思います。
    短編で読みやすく、芥川龍之介、新現実主義を強く感じさせる(初出は新思潮ではないですが)一作です。

    ・鼻 ...
    題材になっているのは"今昔物語集"及び"宇治拾遺物語"の一作。
    新思潮の創刊号で発表され、夏目漱石に絶賛されたことで有名です。

    京都のある長い鼻を持つ僧が主人公です。
    滑稽な鼻故に人に笑われ、弟子に迷惑をかけるが、人前では鼻を気にかけていない風を装っていた。
    ある日、弟子を通して、鼻を短くする方法を知り、その方法で鼻を人並みに短くすることに成功するのだが、という展開です。

    おとぎ話っぽいストーリーで、ライトに楽しめる文学作品と思います。
    一方で描かれているのはしっかりとエゴイズムとなっています。
    鼻が短くなった僧を見る人々の感情は、羅生門で描かれたエゴイズムと同様、人の本質をついたものであると思います。

    ・芋粥 ...
    宇治拾遺物語の一篇を題材とした短編。
    なお、タイトルの芋粥は、さつまいもの入ったお粥などではなく、山の芋を甘葛で煮て作ったデザートで、平安時代によく食べられていました。
    主人公の五位は、風采の揚がらない小役人で、いつも馬鹿にされていたのですが、そんな彼には年に一度、臨時の席で出される少量の芋粥という楽しみがあり、また、腹いっぱい芋粥を食べてみたいという渇望がありました。
    ある日不意にそれをつぶやいてしまい、それを聞いた藤原利仁が、「それなら飽くまで芋粥をご馳走しよう」と申し出るという展開。
    ふとしたことで、願いが叶ってしまうストーリーです。
    ただ、五位には何もなく、唯一、年の一度の芋粥を食べる機会を楽しみにしていたのですが、そんな希望すらも半ば強制的に叶えさせられてしまう。
    極端に言えば、五位のすべてを踏みにじられてしまう、残酷な物語とも取れます。

    ・偸盗 ...
    他の三作に比較すると知名度が落ちます。
    中央公論に掲載されましたが、芥川龍之介生前、短編集には収録されませんでした。
    偸盗とは盗人のことで、タイトルの通り、盗人の集団の物語となっています。
    平安の世が舞台で、日照り続きに疫病が流行り、荒れ果てた時代で生きる盗賊の兄弟「太郎」と「次郎」が主人公。
    太郎は、自分の肉体を武器にあちこちと関係を持ち、人々を翻弄する女性「沙金」を想っているが、沙金は次郎と関係があり、太郎と次郎の関係性は良くないです。
    沙金には母の「猪熊の婆」がいて、猪熊の婆は「猪熊の爺」と連れ添っているのですが、沙金から見て継父となる猪熊の爺と沙金は肉体関係にあります。
    また、「阿濃」という身ごもっている白痴に近い女性がおり、お腹の子供の父は次郎であると思い込んでいます。
    そんな人間模様の盗賊団が、沙金の差し金で警戒態勢の屋敷に盗賊に入るというストーリー。

    作中には象徴的に"羅生門"が登場します。
    舞台設定も羅生門に類似していますが、キャラ等は異なっていて、思わせぶりですが"羅生門"との関連は無いのかなと思いました。
    書かれた時期、古典を題材とした点に加え、羅生門との対比ができるため、本書に収録されたものと思います。
    短編ですがやや長めです。
    ただ、展開は早く、内容がドロドロしていて読み応えがあり面白かったです。
    芥川龍之介自身の評価は非常に低かったそうですが、芥川龍之介らしいエゴイズムが書かれた、魅力ある作品だと思いました。

  • 羅生門・鼻・芋粥・偸盗
    (和書)2010年02月08日 21:29
    2002 岩波書店 芥川 竜之介


    読み易くてとても良い作品集でした。

    一番好きなのは偸盗です。

    芥川竜之介の作品をもっと読んでみたい。

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著者プロフィール

1892年(明治25)3月1日東京生れ。日本の小説家。東京帝大大学中から創作を始める。作品の多くは短編小説である。『芋粥』『藪の中』『地獄変』など古典から題材を取ったものが多い。また、『蜘蛛の糸』『杜子春』など児童向け作品も書いている。1927年(昭和2)7月24日没。

「2021年 『芥川龍之介大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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