エピクロスの園 (岩波文庫 赤 543-6)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003254363

作品紹介・あらすじ

作家アナトール・フランスは思想的には懐疑主義の流れを継ぐ自由思想家といわれる。本書はその随想集。宇宙全体がはしばみの実くらいに縮んだとしても、人類はそれに気づくことはないだろうという「星」をはじめ、さまざまな題材を用いて洒脱にその人生観を述べている。

感想・レビュー・書評

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  •  画家ポール・ゴーギャンの作品に『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』というものがある。ではこの問いにどう答えるか。

     例えば、アナトール・フランスの『エピクロスの園』p.52はひとつの方向性を示す。「人間にその存在理由とその究極の目的を教えることはもろもろの宗教の力であり仁愛である。科学と知的自由との現代において我々のほとんど皆がそうしてきたように、道徳的神学の教義をしりぞけた暁には、なぜわれわれはこの世にいるのか、何をしにこの世にやって来たかを知る手だては、もはや何一つない」そして「運命の神秘はその力強い秘儀の中にわれわれ全部を包み込んでいるので、生の悲劇的な不条理を残酷なまでにかんじないためには、本当のところ何も考えない人間でなければならない。そこにこそ、我々の存在理由についての絶対的な無知にこそ、我々の悲哀と我々の嫌悪との根源はある。」また「(中略)信仰の耀きが消えた世界においては、悪と苦痛とはその意味までも失ってしまい、もはやおぞましい悪ふざけや不吉な笑劇のようなものに見えるばかりである」という。

     好き勝手にふるまい放蕩の限りを尽くす先に、この問いを発見する。そしてその問いへの回答として、自らの絶対的な無知を自覚する。こうした不条理こそが、末法の世に生きる我々の一生涯の耀きだと思った。

  • 230610026

    すべてのことについて、自らが深く考えていく。もちろん、時代の変化はあるが大切なことは変わらない。深く、自らが考える。

  • 「大衆」と題した随想の全文である。感情が迸(ほとばし)ると衆愚となり、責任と理性を働かせれば集合知となるのだろう。
    https://sessendo.blogspot.com/2021/11/blog-post_20.html

  • 再読。小説ではなく随筆。アナトール・フランスの視点は、基本的にシニカルなのだけど愛情があるので、上から目線にならないとことがいい。博識もひけらかす印象を受けない。庶民的、と言うと語弊があるかもしれないけど、日本人でいうなら澁澤龍彦的な。

    現代の日本人が読んでも「あるある」的共感できることがたくさんあって面白かった。

  • 心臓がドキドキする系の絶品。読んでいて実際に激しい動悸がおさまらなくなるときがありました。
    鋭い人間一般への洞察を、あくまでも現実に繋がった形であらわした随想集です。あくまでも、何がなんでも人間に執着する姿勢は、執念といってもいいような大きな感情を感じさせます。
    著者の人生観は、底に深い諦念をおき、そうでありながら決して悲観的なものではありません。穏やかな諦めの上には、人生のところどころにあらわれる美との感応への明るい称賛があります。美との感応こそが善への通路の入り口であり、そこにおいて人生は楽しまれるのですね、と感じました。この内容で560円(税別)とは、あまりにも安すぎるので大幅に値上げしてもかまわないな、とも感じました。

  • 読め。そしてメモれ。

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著者プロフィール

1844-1924年。パリ生まれ。高踏派詩人として出発、その後小説に転じて『シルヴェストル・ボナールの罪』、『舞姫タイス』、『赤い百合』、『神々は渇く』などの長篇でフランス文学を代表する作家となる。ドレフュス事件など社会問題にも深い関心を寄せ、積極的に活動した。アカデミー・フランセーズ会員。1921年、ノーベル文学賞受賞。邦訳に《アナトール・フランス小説集》全12巻(白水社)がある。

「2018年 『ペンギンの島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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