ゴッホの手紙 上 (岩波文庫 青 553-1)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003355312

感想・レビュー・書評

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  • ゴッホが、親友「エミル・ベルナール」に宛てた22通の書簡が収録。

    ゴッホが、ベルナールを愛し、ベルナールも意見の違いはあれ
    ゴッホをとても大事に思っていることが伝わる。

    晩年、精神を病んだゴッホ。彼に対し、付き合いにくさや異常さを想像していたが、この書簡からそういう印象は一切受けなかった。

    ただ、人間らしい優しい画家がそこにいただけでした。

  • 中・下巻が弟:テオ宛の書簡から成るのに対して 上巻は編者であるところの後輩画家:エミル・ベルナール宛。
    前半は四つの序文から成る。前置きとしては長く 多少煩わしい感は否めないが 簡単なゴッホ評と見做すことは可能。
    漸く始まるゴッホの手紙は 彼が画家であると同時に生活哲学者で在り 農耕詩人でも在ったことを伝える。これが体系化されて出版されたことの意義は大きい。所々に挿されるスケッチも 完成品と照らし合わせるなど愉しみは尽きない。

  • 書が書を呼ぶ。

    そんな出来事が自分の中にも時折起こるようになってきた。「街道をゆく オランダ紀行」の中で司馬氏が本書を紹介するのである。「自殺という手段によって短い生涯に自ら幕を引くヴィンセント・ヴァン・ゴッホという人に対し、多くの人がもつ彼はただの奇人であったのだろうというような認識は、本書を読むことによって吹き飛ぶであろう。」と。

    年末年始にアムステルダムを通り過ぎることになりそうな流れになってきたからこそ「オランダ紀行」にも手を出したのではあるが、司馬氏が旅先に向かうとき、そこに行かねばならない自分なりの理由とどこに収穫を求めるのかを明確に掲げてから現地に足を踏み入れる態度は真似したいという自分とかなわないという自分と、前者が四割後者が六割といったところだろうか。でもそんな時この本が目の前にあった。四割側に振って手にとった次第。

    まずはベルナール宛。このベルナールという人についてももう少し知りたくなってきたというのが本音。

  • 上巻はベルナール宛の書簡を収録している。そのうち前半はベルナールによる序文。画家の後輩に向けたもので芸術に関する思索や年長者としての諭しが多い。自己を客観視した文体は鋭く内容も面白いけど、弟テオ宛の中巻下巻にあった、自己や世界をどこまでもどこまでも深く掘り下げていくような感覚は得られずちょっと物足りない。

  • アムステルダムの美術館をはじめ、いくつかの美術館でゴッホを見ました。
    ヨーロッパの美術館では、絵を志す人には、模写をさせているのが印象的でした。

    本書を知るまでは、ゴッホの手紙は、弟とのものだけだと思っていました。
    ゴッホファンにとっては、ゴッホを理解する、絵とは赴きの違った、別の道として貴重だと思います。

    ps.
    ゴッホの模写をしたことが、絵画を習いに行っていた最初の選択でした。

  • 自然をいじくりまわす、という発想。

    「日本」という言葉がたくさん。日本は素晴らしいという。ゴッホは本当に日本が好きだったんだなぁ。

  • テオに宛てたものよりはいきってる感じがする。長い序文は読むのが面倒だけど、ベルナールがだいたいどんな人かわかるので必要。

  • ゴッホのすばらしさがわかる

  • 六郎さんも言ってたけど、
    芸術は知識、思想の部分も重要。
    その意味は、ゴッホの思考体系を知れば、
    十全に理解できるというもの。

    【学ぶとは物を見る謂であり、ものを観るとは、美しいものを毎日解体してゆくことである。ものをよりよく見つめれば見つめるほど、今まで無邪気に眺めていたものの姿は消え、それは人間の貴い智慧と入れ替わるからである】

    【孤独な暮らしは厳しい精進を強要して、その精神を社会的宗教的神秘的問題に没頭させたのであった】

    【美とは既存形式の模倣ではなく、個性によって感じた新しい真理の中に包含された崇高なものを発散させること】

    【感じることは理解することよりも難しい】

    【芸術はあるものの説明ではなく、宇宙と神々の存在と事物の変わりやすい姿のかげに隠れた永遠の真理を表すもの】

    【憂鬱の時期が過ぎたら以前よりも強くなって、君は健康を取り戻す】

    【落ち着いた筆触よりもわれわれが求めているのは思想の強靭さ】

  • ゴッホのよき理解者ベルナール宛の手紙を収録している。ゴッホが日々どういうことを考えて過ごしたのかを垣間見ることが出来る。
    本文の間にある挿絵がいいなあ〜。
    中・下巻では彼を経済的に支えた弟のテオ宛が収録されている。経済的に貧しく、恵まれていない中、絵を描き続けたゴッホ。最後は精神的にまいってしまい、悲しい結末となってしまうのですが。本書を読んで、本物のゴッホの絵を見たくなった。
    それにしてもゴッホは日本が好きだったんだなあ。

  • The collection of letters by Emile Bernard taken its from Van Gogh.
    It was told about pictures

  • 上は、17歳年下の友人ベルナール宛の手紙がまとめられている。
    このベルナールが異常に自己顕示欲が強く、前半90頁近くがベルナールによる、時系列もぐちゃぐちゃで要領を得ない序文に充てられて、読者の気持ちを削ぐ構成になっている。
    これに加えてベルナールは信用できない語り手である。序文でゴーギャンをこき下ろしているが、中巻のゴッホの手紙によれば同人を褒め称えているらしい。ゴッホから詩や素描を褒められている手紙が多く(自分で選んだのか?)、年長者ゴッホから可愛がられているのはわかるが、時々批判をされている部分に周到に脚注を付けて亡きゴッホの勘違いであるとか、いちいち反論をしているあたりに人間性が垣間見られる。
    ゴッホのいるアルルに行きたいと言って期待を持たせておきながら全然行っておらず、結果的に耳切り事件を回避しているあたりも、なんかそつのない後輩キャラという感じがすごい。
    そんなベルナールが悪目立ちする中、ゴッホが引っ越してきた南仏アルルの景色を、まるで日本のようだといい、この環境で夏を過ごすのが「蝉のように楽しい」と喜ぶ無邪気さが際立って眩しく感じられる。

  • ゴッホ「取り敢えず寒いし、体しんどい。ご飯もろくに食えないし胃が痛い。あと寂しいからお金もって早くこっちへ来てくれよ。3人いれば、逆に生活費は個々で暮らすより安くすむよ。助け合いって素晴らしい精神でしょ?お父んにお金だしてもらって早よ来てくれよ。いや、これ君のために言ってることだからね?」
    ってのの繰り返しにしか見えん。謙虚さを纏った対人操作のやり口に近い物言いだ。
    まあ必死だったのは分かるし、かなり追い詰められてはいたのだろうが…見た目には傲慢よね。

    色彩の捉え方、反応の仕方が外拡型の人っぽいな。カラーカードで反応数増えそうだし、形態水準ちょっと落ちそうな印象。Ⅷ、Ⅸ、ⅩでF使えるかな。Ⅸは難しそうだな。

  • 2019.10―読了

  • 上巻は、画家のベルナールへ宛てた手紙22通。それに加えて巻頭にベルナールによる献辞が、割と長文で用意されているのだが、これが関門というべきか、きびしい読書。

    時代背景の整理としては役立つことは承知、またゴッホとの文通の当事者として重要なのは理解するのだが、この巻頭長文の関所によって過去何人の読者が門前払いを食ったのだろうかと思ってしまう。かくいう私も三度目の挑戦でようやく突破できた。

    改版することがあるのであれば、上中下巻の最後に移したらどうだろうか。この献辞を読まなければ、あとに続く手紙の意味が分からない、などということは無いと思われる。あるいはこれ自体、無くてもいいかも。

    本文においては、南仏アルルでの独居の日々を読み通すことになる。友人の来訪や手紙の返信を待ちわびる孤独な時間でもあり、また一方では些事に囚われず絵に打ち込む満ち足りた日々でもある。

    中巻へ。

  • 資料 書簡

  • 私はゴッホのことを何も知らなかったので、まず、“わけのわからない発作からヴィンセントは自分の耳を切取って、淫売宿にいる女友達に届けてやった(p28)”という一文に衝撃を受けました。“天才が気狂いじみていたとも考えられないことはない。彼等を手離しで感心して好きになるためには、こちらも少し狂う必要がある。(p146)”とあるように、ゴッホも狂っていたのかと思わざるを得ませんでした。

    手紙では、画かきが“協力出来たら”と手紙で何度も書いていたのが印象的でした。芸術家は心の赴くまま描いているのかと思っていましたが、色々考えているのだと意外でした。

    また、兵士が「海みたいに美しいんだって、俺はこっち(広々とした平野)の方が大洋よりも綺麗だと思うよ、人が住んでいるからね。(p132)」と言ったエピソードが好きです。兵隊の方が芸術家だと思うゴッホに頷きました。

  • 下巻に譲る

  • 上巻の半分近くはベルナールによる序文。
    当のゴッホやベルナールについてほとんど予備知識がなかったので、この序文が役に立った。
    ゴッホの目を通じて描写される世界は、自分が同じ景色を見たとしてもきっとこうは見えないだろうな、と感じるくらいに色彩的。
    都会と寒さが苦手な身としては、パリを離れて南仏アルルに移り住んだゴッホの気持ちはなんとなくわかるような気がする。
    ところどころに挿入されている素描を見るのが楽しかった。

  • 下巻参照

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