歴史とは何か (岩波新書 青版 447)

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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004130017

感想・レビュー・書評

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  • 「すべての歴史は思想の歴史である。」いろいろな思想と触れ合うと「いま・ここ」に縮こまっていた自分を未来へと解き放ってくれる気がします。

  • 今読んでも古くないって、すごい。
    全く興味のない分野だったのに楽しかった。いろんなことに繋がっている。

  • 歴史家が歴史を作るとはどういうことなのかを説明する名著。

    まず、著者は歴史は合理主義に則ったものであると考えている。
    学問という意味で考えるとそれも最もなことだと思う。

    仮説をたてて、それを支持する事実を示すという意味で歴史も科学なのだから、説を主張するためには事例群の一般化も行う必要があるという説には首肯。

    全体的に問題なく歴史とは何かを語った本で一読の価値があると思う。

  • リーディングハックス著者座右の書その一

  • 学生の時に課題で読んだが、とても当時は理解できるようなものではなかった。といっても、今でも状況にあまり大きな変りはないかもしれないが。
    そのときは、現在から見るところの歴史が取捨選択されたひとつの解釈であるという当たり前のことに深く納得して満足していた。
    歴史が過去と現在との絶え間ない対話であるということが事実だとして、読者はその対話にどう関わればいいのだろうか。
    過去と現在とを見渡す位置にいる客観的な視点でいられるだろうか。
    そのような神の視点ではあるまい。どうしたって現在という立場から発話する主体でしかありえない。
    目の前の様々な事実について、どうしてそのようであるのかという疑問を持つ時、現在の己の立ち位置について少しでも客観的に把握しようとして、現在の来歴を知ろうとするのだ。
    それは古い言い方をすればイデア論に近いのだろう。

  • ものの見方とそのもの自体、学ぶにはその両面が必要だ。自覚的であること、騙されないこと。真実を知り得ない歴史に対してはそういう視点が必要。進歩という言葉には違和感。読みたくなった本 ダーウィン・種の起源 マルコポーロ・東方見聞録 失敗の本質

  • j自分のやっていることに迷いが生じたため自分を見つめ直すために読んでみた。歴史学素人なので理解できてるとは言い難いが、日頃ぼんやり考えていたことがより精密に書いてある、と思った。それは俺がこのような知見が披露された後に教育を受け、その延長線上で思考したり作業してきたからなんだろう。いい刺激を受けた。ただ「進歩」を強調する論旨に違和感を覚えるのは、俺がオプティミストではなく今が思いっきり停滞していて時間がウロボロスの蛇みたいに閉じているようにしか感じられないからなのかも知れない。原文ではprogressだろうか。時代が感じられる。

  • 大学の時に読んだ時より何処か物足りなさというか、説明のくどさが目について興奮しなかったなぁ、もしかして自分の感性が悪くなったか?
    今回の読了感に素直に従い★3つ、読み返す前は★5つという気持ちだったのだが。
    「歴史とは過去と現在の対話」、まさに名言。
    僭越ながら付け加えれば、現在は必ず未来の過去になる訳であるから、「歴史とは過去・現在・未来の尽きぬ対話」と言っても良い。
    歴史学はこの倫理感により歴史小説などと一線を画していると思われる。

  •  難しかったです。ただ例を挙げて説明されているところは、大体分かりました。とくに、ロシア革命で置き換えてる所は、ロシア研究家だけあってよかったです。
     同時代の他の歴史家を結構辛辣に批判している所は、あとで問題にならないのかな、と心配しました。
     最後の章で、日英同盟に関してだけ日本の言及がありました。この時代のヨーロッパの歴史家からしたら、東洋の国なんてこんなものなのか、と思いました。

  • 今年読んでいた本の中で1番興奮し共感した本なので記す。

    この本はE・H・カーが1961年の1月から3月にかけてにケンブリッジ大学で行った連続講義をまとめ出版したものである。

    本書はまず歴史的事実とはそれぞれの時代の歴史家が選択してきた事実という点から始まる。

    そしてその選択にはその歴史家が下した価値判断があり、その判断を見ればその歴史家がどのような歴史家であるかが解るとし、同時に歴史家もまた時代や思想・社会環境に制約されているので、歴史家を学ぶ前にそれらを知る必要があると説く。


    従って優れた歴史家とはその自らが置かれた被制約性を認識しているものであり、ジョルジュ・ソレルから

    「われわれは自分の方法を意識しながら進んで行かねばならない。われわれは蓋然的で部分的な仮説を徹底的に検査して、いつも今後の訂正の余地を残すような暫定的な近似値で満足しなければならない」

    と引用し、ミスティズム(神学、終末論)やシニシズム(全部意味ない or 意味がある or 好きなように意味を与える)になる事を避け、過去に対する建設的な見解という態度を採用する。


    また歴史における進歩とは、広い意味での環境に対する人間の支配力の増大を指すとし下記のように説く。

    「人間が先輩たちの経験から利益を得ることが出来る、-必ず利益を得るというのではありません- ということ、それから、歴史における進歩とは、自然における進化とは違って、獲得された資産の伝達を基礎とすること、これが歴史というものの前提である」

    そして第1章で歴史とは何かに対して

    「歴史とは歴史家と事実との間の相互作用の不断の過程であり、現在と過去との間の尽きることを知らぬ対話なのであります」

    と述べたものを

    「歴史とは過去の諸事件と次第に現れて来る未来の諸目的との間の対話と呼ぶべきであったかもしれません」

    と若干修正し、歴史における進歩を肯定する。


    最終章では現代について述べており、その中で現代は上記した環境が人間自身に適用された時代であり、人間は人間自身の理性を用いて自分を変化させているとし

    「恐らく、産業革命が生んだもっとも広汎な社会的結果は考えることを知った人たち、自分の理性を使うことを知った人たちの漸次的増加ということだったでしょう」

    と歴史的解釈を述べる。しかし同時に英語使用世界、特にイギリスの相対的地位の低下に対して悲観的になるばかりにノスタルジーに浸り、理性への信頼が低下する事に強い危惧もまた同時に述べる。


    全体を通して著者の知・歴史に対する真摯な姿勢を伺う事ができるだろう。耳触りが良かったり解ったつもりになる超越論的なものや超経験的なものは避け、建設的な態度をとり続ける姿に本当の大人を見ることができる。

    基本的にあまり強くは書かず、柔らかい言葉を使うのは、本書の中であったように自身を取り囲んでいる制約に自覚的であるからである。しかしだからこそ口調がきつめになる点は相当程度の確信があってこそだろうと読む事ができる。

    また本書でも何度か繰り返される今の自分が思う解釈というのは時間や社会空間に制約されており、それらは当然未来において解釈し直されるという態度には深い共感を覚える。

    そこには未来の歴史家に対する明示的には書かないが温かい信頼のようなものがあるように思える。

    そしてこの歴史という言葉を我々自身に置き換える事ができるならば、本書は現代に生きる我々に対して非常に多くのものを、彼の言葉を使えば「最も役に立つもの」を提供してくれているのかもしれない。


    なにはともあれ、E・H・カーという人物の物事に対する真摯であるが故の控えめな態度に是非触れて欲しい。

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