ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く (岩波新書)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316442

感想・レビュー・書評

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  • 新聞社のニューヨーク駐在記者がトランプ支持者が多いラストベルトやアパラチアを歩く。出会った人たちの声から見えてくるアメリカの今、そして大統領選の結果。
    これからもこういう時間をかけて生の声を集める取材が必要だと思う。

  • トランプさんを支持する人はどういう理由かを迫った書籍です。
    現地の人の訴えが分かるため、貴重な本です。

    ラストベルトの人々の訴えは日本と全く同じだと思い、危機感を感じます。
    基本的には、移民問題による雇用の減少がテーマとなっております。著者は統計データに基づき、トランプへの疑問や反対意見も挙げてますが、賛同できるところとできないところがありました。ですが、そこも含めて良いです。

    私は、この本の反対意見も踏まえた上でトランプさんを支持しています。

    この本で取材に応じておる現地の人々が、日本人より人情が溢れている感じがして、凄い好感を持てました。
    現地の人の声で、「テレビが伝えるアメリカはエスタブリッシュメントばかりだ」「映画で見るアメリカはニューヨークやロサンゼルスばかりだ」という言葉には、確かにそうだと胸を打たれました。移民問題や人種差別問題が多く取り上げられ、少しずつ改善はしていってますが、裏では忘れ去られた白人の人々が貧困になっていることは見向きもされません。
    あと、アメリカ国民の政治への関心がとても強いです。私の周りでは選挙に行かなきゃだめだとという考えを持っている人は多いですが、政治についての関心は他国と比べて本当に低いと思います。テレビやネットを見てなんとなく投票するでなく、国の命運をかけているという自覚を持ち、できる限り勉強をして投票をしてほしいです。

    もしアメリカに行く機会があれば、この本で登場をした人々の街を旅行して地域貢献をしたいです。

  • 面白かった!廃れていくラストベルト。細っていくミドルクラスこそトランプを支持したんやな。反エスタブリッシュメントがキーワード。

  • ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く (岩波新書) 新書 – 2017/2/4

    アメリカン・ドリームが死んだ先にあるものは現状への怒りだ
    2017年5月20日記述

    金成隆一(かなりりゅういち)氏による著作。
    現在、朝日新聞ニューヨーク支局員。

    1976年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。
    (大学の恩師は久保文明氏)
    2000年朝日新聞社入社。
    大阪社会部、米ハーバード大学日米関係プログラム研究員、国際報道部などを経て、ニューヨーク特派員。
    教育担当時代に「教育のオープン化」をめぐる一連の報道で第21回坂田記念ジャーナリズム賞(国際交流・貢献報道)受賞。
    好物は黒ビールとタコス。
    他の著書に『ルポMOOC革命―無料オンライン授業の衝撃』がある。

    2015年11月~2016年11月まで
    アメリカの特にラストベルト周辺、アパラチア山脈の人々へのインタビュー、連載記事をまとめた本。
    TVの特集などでトランプ支持者について何となくわかった気になっていたけれども、本書を読んで問題はより根深く深刻であることがわかった。
    トランプが強かったのはバーニーサンダース上院議員に人気があったのとつながっていた。
    本書では第6章でサンダース支持者について紹介している。
    可能であればサンダース支持に関してもより深く取材し記事を読んでみたかった。

    著者はプロローグにあるように米大手メディアのトランプ番記者にトランプが大きく伸びる理由を教えられた。
    このことが大きな示唆として取材のはずみになったに違いない。
    しかしこの番記者、トランプの遊説先を地図に落としてみるなど分析に優れている。

    本書を読むとウォール街、シリコンバレーなど一部の地域しか1990年代の好景気の恩恵を受けていなかったことが分かる。
    野口悠紀雄氏が指摘するような米は日本と違い新産業が生まれ新しい経済構造があるという指摘を読んだりすることもある。
    しかしそれはあくまで米の一部に過ぎないのだ。
    むしろ大半の州はそうではなかった。
    本書を読んでいてまるでバブル崩壊後の日本の不況と大差が無いではないか。
    あくまでアメリカはアメリカ合衆国であり多くの国の連合体だということを再認識した次第である。

    増えない給料、老朽化するインフラ、工場移転で地場産業が無くなり孫世代の就職先が無い。
    白人中年層の寿命が短くなっていること。
    広がる薬物汚染。
    インタビューしていた3人組女子大生の内、1人が夢は学費を返済することだと返答していたのには驚いた。
    アメリカン・ドリームは完全に死んでいる。
    ミドルクラスの象徴でもあった長期休暇を取って家族旅行に行くことも出来なくなっている。

    多くのミドルクラスが貧困層に陥る中、企業献金に頼らず労働者、生活者、有権者の為の政治を求めている。
    トランプの行った敵意を焚き付ける方法は正しいとは思わない。
    それでもトランプ躍進、サンダース躍進の背景問題が解決に向かわない限り、既存政治の延長線はあり得ないだろう。
    それは次のアメリカ大統領選挙でも同様だろう。
    その辺りを踏まえた政策が民主党にも求められているのではないか。

    とは言っても著者の指摘するように製造業や石炭産業の復活などあり得ないとは思う。
    メキシコ国境沿いの壁建設も資金面で
    難しいかもしれない。ただ人々は簡単には国境を越えれないし簡単に転居出来る訳でもない。
    (逆に言うと転居を厭わず動ける人の強みも見えた気がした)

    非常に難しい問題だ。またそれは日本にも当てはまる問題だ。
    夢を失った地域は活力を失う。
    夢を喪失せず希望を見いだせる社会を築く為には
    何が出来るのだろう。
    放置して時間が解決する問題ではない。

  • 2020年の大統領選挙を経た2021年の現在から見返してみると、まさしくこの5年間に議論されていたことを2015年の段階で浮かび上がらせていた見事な取材力だと感じる。

    MBA留学中に知り合ったアメリカ人のうち最も親しくなった友人がインディアナ州出身であった。他の多くのアメリカ人達が東西沿岸部出身であることに対して、彼は彼自身のことを他のアメリカ人達とは少し違うと言っていたが、まさにその背景はこの本で描かれているラストベルト、アパラチア山脈地方のバックグラウンドによるものであった。

    彼の話を聞いた際にも感じた事柄であるが、アメリカを外から見る際にはこういったデモグラフィーの違いによる多様な背景があることを念頭においておかなければ見方を誤るだろう。
    実際に2020年の大統領(選挙人)選挙でも依然トランプは7000万票以上を集め、2021年1月のキャピトル・ヒル襲撃を経て退任したあとも熱烈な支持者を集めている。かの共和党でさえもトランプ退任後もトランプ人気に配慮した政党運営をしなければならないことは、今後のアメリカ社会におけるデモグラフィーの動向がアメリカ政治、ひいてはスーパーパワーをバックグラウンドとした国際社会への影響にも強い影響を及ぼす可能性を示唆しているだろう。

  • 落選しました。でも、なんでこんなに人気があるのかよくわかりました。日本もおんなじジャン。

  • アメリカのラストベルト地帯で、トランプを支持する中流階級の声を取材したルポ。
    ラストベルトとは、五大湖周辺の、かつて製造業等で栄えた地域。グローバル化の進展とともにブルーカラーの雇用が減り、中流層が没落した。
    取材から浮かび上がるのは、生活が今後悪くなるという不安。雇用がなく、インフラは手入れされない。年配者は余裕のあった昔を懐かしみ、若者は高い学費の返済に苦しむ。働けば悪くない暮らしができるというアメリカン・ドリームは失われている。
    雇用が無いという話の一方で、雇いたい高度な熟練機械工(p241)がいないというエピソードも印象的だった。人を育てる余裕がどこにもなくなっているのだろうか。

    今後への不安がエスタブリッシュメント(既得権益)層への不信となり、その裏返しとしてのトランプへの期待に繋がる。トランプ自身は富豪であるが、献金を受けていないため大企業の意向から自由というイメージを作ることに成功し、状況を変えてくれるという希望から支持を集めている。
    支持者は手弁当で草の根の選挙活動を行い、集会で熱狂する。ダイナーで取材を受ける人々は、よく筆者に奢ってくれるという。おそらく家族の生活や地域を心配し、友達づきあいを大事にする良い人たちなのだろうと思う。
    人々の疑問と不安のはけ口として、トランプが示している標的が自由貿易と不法移民(p216)。共通点はグローバル化と言える。もっとも世論調査によれば、移民がアメリカ社会に害だと考える人の割合は意外に少ない(p135)。広く訴えるのではなく特定層を強く引き付けている。
    第6章で民主党のサンダース候補への熱狂ぶりも取材することで、トランプ個人というよりも、アメリカ社会全体にある鬱屈をたまたま体現できたのがトランプだったのだろうという印象がある。

    取材と参与観察の違いはあるものの、[ https://booklog.jp/item/1/4000613006 ] もほぼ似た空気を伝える。また国は違うが、[ https://booklog.jp/item/1/4334043186 ]で描かれた状況とも、あまりに似ていて衝撃を受けた。

  • ブレイディみかこの「労働者階級の反乱」でイギリスのEU離脱とトランプ誕生の比較があった。その本では、どちらもナショナリズムと評価されるが、イギリスのEU離脱はそうとも言えない、という内容だった。
    私もEU離脱はナショナリズムの高まりとこれまで捉えてきていたから驚きだった。一方で、イギリスEU離脱も表面的なことしか理解していなかったから誤解していたように、トランプ誕生についても私は知識が少ないし、誤解しているのではないかと思って本書を読んだ。そもそも日本ではトランプの蔑視的発言ばかり取り上げられていて、日本の報道だけではアメリカでなぜそれだけの人がトランプを支持したという結果に至ったのか辻褄が合わない。
    ただ、本書を読んでなぜトランプが誕生してしまったのかがよく分かった。トランプが誕生したのは、アメリカに、あるいは資本主義社会に病気が発現したという実態なのかもしれない。

    途中の章でトランプとサンダースの主張が実は似ているという指摘はとても驚いた。確かに多くの人はサンダースとトランプは全く違う主張をする候補者だという認識をしているだろうが、本書を読み進むうえでトランプやアメリカの現状への認識が変わったであろうから、それを踏まえたうえで今一度トランプとサンダースの相違点についてまとめてあるのが望ましかった。

    トランプが大統領として誕生した後を描いた「トランプ王国2」も読みたい。

  • トランプの勝利は世界で驚きを持って受け止められたが、この本を読むと確かに、ラストベルト・田舎という古いアメリカが今回の勝利をもたらした。うむ、これってイギリスのブレジット派の勝利と同じ構図じゃないか。

  • トランプを支持する、メディアからはなかなか見えない主に地方のアメリカ人の考え方や感じ方を丁寧に取材してる。

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著者プロフィール

金成 隆一(カナリ リュウイチ)
朝日新聞編集委員
朝日新聞経済部記者。慶應義塾大学法学部卒。2000 年、朝日新聞社入社。社会部、ハーバード大学日米関係プログラム研究員などを経て2014 年から2019 年3 月までニューヨーク特派員。2018 年度のボーン・上田記念国際記者賞を受賞。著書『ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く』(岩波新書)、『記者、ラストベルトに住む』(朝日新聞出版)など。

「2019年 『現代アメリカ政治とメディア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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