戦時期日本の精神史: 1931-1945年 (岩波現代文庫 学術 50)
- 岩波書店 (2001年4月16日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006000509
作品紹介・あらすじ
カナダの大学で学生に向け語られた、広い視野からの現代日本思想史前篇。ファシズム支配下の日本知識人の軌跡を通して「転向」の事実と意味を問い直し、それが日本の精神史を貫く「文化の鎖国性」という特質と通底することを明らかにする。知識と思想のあり方に反省を迫る独自の日本文化論でもある。
感想・レビュー・書評
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歴史的事象とは、人々の思想・感情の潮流がその時々に記録した「結果」だ。
だからこそ出来事の羅列ではなく、精神史をストーリーの形で語ることでしか
見えてこないものがある。
しかし精神史を広く平等な視座で語れる人がどれほどいるのか。
なにしろ思想・感情の話である。
その難解な仕事に、鶴見俊輔ほどふさわしい人物はいないだろうと思わされる本作だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦前から戦後に至るまでの日本の歴史を、まさしくその時代を生きてきた当事者が、自分の実感と、それをきちんといろんな文献で検証した結果を、何も知らない外国人のために英語で講義した、その記録。現代の日本人は、もうその外国人と知識においては変わりないわけだから、まずはとっかかりとしてこの本を読むといいと思う。やはり、事実の把握と、失敗はそれと認めて反省する勇気を日本人は持つべきだと思う。
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40年前のカナダでの大学の講義録なので大雑把に話しているし、さすがに内容的に古いというか歴史認識に疑問の残る点が複数ある。
精神史に対する著者独特の視点(キーワードは「転向」のようである)もないわけではなく、全く参考にならないという事もないのだが(なぜか時々挿入される妙に細かいネタ的なエピソードは興味深い)、この時代の精神史について学びたいなら他の本を読んでからの方がいいかも。少なくとも教科書的な内容ではなく、どちらかと言うとエッセイ的である。(後から注を入れて補足しているが、参考文献は50~60年前のもので古いし・・・) -
アメリカから戦争末期に交換船で帰ってきた人。最近まで生きていた。
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坂口安吾氏の本を読んだ後だったので、別の内容を期待したのだが、難しかった。
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移動中にあまり気負わずに、気楽な気持ちで読んだ。
鶴見俊輔の言葉は一貫してさらっとしているが明晰である。世界が極めて歪んた時期、人が人であり続けるのが難しかった混迷の時代をまともに語る本書は、それゆえに超現実的に聞こえる。 -
[ 内容 ]
カナダの大学で学生に向け語られた、広い視野からの現代日本思想史前篇。
ファシズム支配下の日本知識人の軌跡を通して「転向」の事実と意味を問い直し、それが日本の精神史を貫く「文化の鎖国性」という特質と通底することを明らかにする。
知識と思想のあり方に反省を迫る独自の日本文化論でもある。
[ 目次 ]
一九三一年から四五年にかけての日本への接近
転向について
鎖国
国体について
大アジア
非転向の形
日本の中の朝鮮
非スターリン化をめざして
玉砕の思想
戦時下の日常生活
原爆の犠牲者として
戦争の終わり
ふりかえって
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ] -
東大新人会や共産党のことをはじめ、「転向」の問題など、知識の不足が目立つ。
鶴見はこれらの問題を説明しているのではなく、そうしたことをある程度は前提にしつつ語っているので、まず土台がぐらぐらだと彼の論を十分にわからないだろう。