チェルノブイリの祈り――未来の物語 (岩波現代文庫)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006032258

感想・レビュー・書評

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  • 文学は、土地と人間の関わりを長年に渡って描いてきた、そういう言い方ができるかも知れない。本書は、その究極、極北と呼べるに違いない。
    チェルノブイリの惨事は、人間に与えられた時間で数えれば、ほとんど永遠というべき未来を、ベラルーシの住民から奪い取った。この土地がかつて有していた歴史も無慈悲に奪い取った。土地の再現は、かつての住民の記憶の中でしか叶うことはない。
    規制区域内でいまも暮らす人々(サマショール)の証言が積み重ねられる。当人一代限り、あるいは二代つなぐことが限界の、被爆地での生活の記録。土地と人間のかかわりの極北といわずして、何と表現すべきか。
    著者が最終行に記した皮肉に、胸がつまる。そもそも希望を見いだすことが不可能な物語に、トドメを刺す。人間の羞悪な実体をいやというほど知らしめる。
    我々の住む地球は、人類史の続く限りチェルノブイリを抱えて回転する。

  • 以前、友人に借りた本です。今回、ノーベル文学賞を受賞だけではなく、福島で起こっていることを改めて見直す為に自分の本として手に入れました。

    歯を食いしばる、なんのために。おそらく自分が誰かの不幸の上に胡坐をかいて座って生きていることが口惜しいため。

    涙をこらえる、なんのために。泣く資格なんてない。だって、私たちは原発の恩恵にあずからないで生きていくことが想像もできない。

    そんな傲慢な人間が一冊の本で心を揺さぶられる。
    ここには広島があり、長崎があり、福島もある。
    そこにいる人々はみんなごく普通のどこにでもいる人間で、幸せだったり、不幸だったり、様々な人生を送っている。私たちと変わらない。

    ただそこに放射能があっただけだ。

    正しさとは何だろう。勇気とは何だろう。悲しみとは何だろう。愛とは何だろう。生とは何だろう。死とはなんだろう。
    私は幸福な日々に思う。それこそが人間の傲慢さなのだと。

  • オーラルヒストリーの持つ力と、それぞれの語り手の内側から耳を澄ますような著者の感覚があってこそ生まれた一冊なのだと思う。
    有無を言わさずかき集められ、国家のためと疑うことをしないソビエト的作業員たちは線量計も与えられないまま原発内の汚染された黒鉛やがれきを生きたロボットとして拾い集め、屋根の上を長靴で歩いて作業をする。近隣の村人も何も知らされないまま、供出量を確保するため今まで通り穀物を収穫し、牛乳や肉を出荷して行く。子供たちは砂場で遊び、作業員の父親が帰ればその帽子を嬉しそうにかぶる。数年後にはそんな皆がバタバタ死んでいき、障害のある子供が生まれてくる。想像などなんと生やさしいものだったかと思う現実。しかも、そんな土地でさえ、自分たちの最後の棲家だと移り住んでくる内戦で何もかも失った人たちがいる。難民でさえ自己責任とはねつける冷淡な日本の一部の人たちにこそ読んでほしい。村人みんなで日頃から支えていた障害のある女性が原発事故後政府にどこかに連れていかれてしまい、「彼女は寂しくて死んでしまうのではないか」と心配する人の話も忘れられない。

  • 2016.04―読了

  • 【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • 原発事故に遭った一人ひとりから聞き取ったドキュメント、様々に向き合った人々の物語。事故から10年後くらいの上梓。

  • ユートピア5部作のひとつらしい。最終的に神話みたいで、自分が何を読んでいるのか分からなくなった。わたしが「神話のようだ」と感じたものの正体が「多声性」(ポリフォニー)と呼ばれるものらしい。

    証言は「生き物」。
    生きてる声の集まりは共鳴協和して声なき者の魂も呼び起こす。

    死者となっても、本の中で想いを発し続けている人々の声が聴こえる。
    『証言 水俣病 (岩波新書)』でも同じものを感じる。
    文字に込められた想いって、とてつもないパワーを秘めているのをひしひしと感じた。今も渦巻いている人々の想いが強かった。

    ☞『命こそ宝』『証言 水俣病 (岩波新書)』ポリフォニー繋がり

  • 政治と金はいつだって人を狂わせる

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