- Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022500809
感想・レビュー・書評
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東京と思われる街を舞台とする不思議な物語の後に、レトロなモノクロ写真が数枚。都市化の波が呑み残したような風景です。行ったことなどないはずなのに、「こんな場所、あった…」なんて気がします。物語がフィクションであろうとも、妙にリアルです。
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一人でお散歩しているはずなのに、
此の世で最も気の合う人と
ふたりでぶらぶらお散歩しているかのような、
そんな心地よさを感じる物語。
言葉を追ってる意識も無いのに、
意思だけで伝わる会話を
ぼんやりと眺めているかの様な…
私はきっとこの作家さんがすごく好きなんだと感じた。
最も好きな『黒砂糖』より
「いいか吉田君。 夜には果てがない。そのことを忘れてはならん。
果てがないものは次々と驚きを見せる。
それを誰にも気付かれぬ様、こつこつと拾い上げて行くんだ。」 -
「つむじ風食堂」も、十字路の角にあったのだった。これは、「クラフト・エヴィング商會の作家と写真家が街を歩いて拾いあげた六つの絵巻」クラエヴィ(?)の本の場合、帯は外してはいけないような気がします。どの本でだったかな、書籍の装幀や帯まで含むデザインする、かの商會が、「これほどバランスも色も文字デザインも考え抜いて作っているのに、買ったとたんに帯を無造作に外すのは許せない」というようなことを書いていたのを目にしたからです。だからこそ。『ないもの あります』が、「帯を剥がせない」ように作ってあったのを見て爆笑したのでした。この本も、下3分の1ほどの帯がタイトル文字と同じ色調のグリーンで、それが本体・見返しや栞紐とも階調をなす趣向。こういう帯は、剥がせません。私は基本、「なんとかフェア」とか大げさな文句の付いた帯は剥がして、少しすっきりしたところで本棚に並べる主義です、帯は捨てません、本体に挟んでおきます。でも、クラフト・エヴィング商會だけは別、帯までおろそかにはできません。
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本の内容とは全く関係ないけれども 吉田篤弘の本は 吉田篤弘の本である ということだけで私はとても安心する いつもなんだか不安でぐらぐらする足元を それでもいいんじゃない とマイペースに生きる けしてはなやかではない登場人物を見ると 私は自分が肯定されたような気分になる どうか大きく作風を変えないで欲しい わがままな読者の願いです
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地元にはどこにもなくて、ネットにはあるけれど実物を買う前に手に取りたくて、そのためだけに東京に行って、ブックストア談 錦糸町店でやっと見つけました。(遠い昔)
十字路ばかりある街で出会う不思議な名前の人たち。
モノクロの写真も合わせて、実在するかのように入り込めます。 -
ヘンなお話六篇と物語が終わったあとの町のモノクロ写真のコラボなので楽しいものです。
■簡単なメモ
水が笑う、とたしかにあの本にあった。(一行目)
歩くたび「S、S、S」と妙な音を立てる。(p.8)
空中の売り場だった。(p.47)
あのな、おでんってものは、濁点がつくほど、うまいもんなんだ。(p.49)
「自由を求めるあまり、ずっと不自由だった人です」(p.59)
煙突は眠たげである。(銭湯の壁画)
「その、足のつむじっていうのは、いったいどのあたりにあるんです?」(p.79)
ない言葉をつくる。それでわたしだけの辞書をつくって、ひそかに愛用する。(p.82)
この世の正体はこれすべて繁殖じゃないのか。(p.86)
何もしないで、何かをしたような気になれるってことはないものでしょうか?(p.89)
いい質問には常に答えが何通りもある。(p.89)
「夜を拾うんだ、吉田君」(p.115)
彼なりの「トンネルの向こう」(p.171)
「偶然」を封印しました。(p.172)
怪盗の老後(p.186)
「甘酒が今日もあるよ」(p.187)
「読み」を通り越し、「読み過ぎ」と称し称されるようにならないことには(p.188)
「ちくしょう」と「くそったれ」と「うるせぇ」の三つ。(p.191)
「街は終わらない。終わらないのが街だ」p.193
「僕は師匠の〈言葉〉の弟子になりたいだけです」(p.196)
俺という人間がいまここにいるたった一人とは限らない。(p.205)
俺がこの都から何を盗みとろうと、俺がこの都にいる以上、結局のところ盗んだものはまだ都にある。(p.205) -
先ほど、吉田篤弘さんの「水晶萬年筆」(2010.7)を読みました。著者は十字路がお好きだなと思いながら、次の本「十字路のあるところ」(2005.12)を手に取りました。なんと、「水晶萬年筆」と同じ6話が。確認すると、「水晶萬年筆」は「十字路のあるところ」を改題したものでした。ただし、「十字路のあるところ」は、写真家、坂本真典氏の写真が随所に添付され、物語のイメージアップに一役買っています。改題文庫化の際は、写真は削除されています。
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十字路のでてくる短編と写真。
「雨を聴いた家」「水晶萬年筆」「ティファニーまで」「黒砂糖」「アシャとピストル」「ルパンの片眼鏡」
暗いときによめる。
C0093 -
帯表
物語あり。
帯裏
「夜を拾うんだ」
先生は事あるごとにそう言っていた。
「ピアノから黒い鍵盤だけ拾うみたいに」
そうした言葉が、黒砂糖を丸ごとのみこんだように、いまも僕の腹の中にある。
あんな人はもう二度と現れない。
「小説トリッパー」二〇〇三年冬季号~二〇〇五年春季号連載に加筆・修正しました -
脇道、袋小路、迷い道。
本書のタイトルにあるのは「十字路」。
どれも人生に使われる。
十字路に出た。さあ、どちらに行こうか? -
前に本屋で水晶万年筆、と言う本を見かけて綺麗なフレーズだなあと思い読んでみようと図書館で借りてみました。正直よくわかりませんでした。感性で読むんだろうなあ、こういう本は。
お話が始まる前に終わってしまった、そんな印象のお話ばかりでした。個々のイメージは透明で綺麗なのですが、もう一歩踏み込んでだから?と言うところまで書かれている作品の方が好みです。 -
「自由を求めるあまり、ずっと不自由だった人です」
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十字路のある街での6つの短い物語。それぞれの終わりに、「十字路の探偵」という章がついていて解説というか説明というかあとがきと、その話に関する写真がいくつか。カラーじゃなくあえて白黒なのが世界観を惹きたててる。
どれも不思議な話だけど、でももしかしたら何処かにこの十字路の街が実在するんじゃないか・・・そう思いたくなる。
そしてこの6つの十字路は、一見バラバラなように思うけど、全て同じ街の中にあるのかもしれない。目線を変えただけで。
吉田篤弘さんの本は不思議なメッセージ性があるというか、とにかく大ファン。大好き。
この本は装幀も独特で本屋で一目ぼれ。でも買って数年読まないままだった…自分の本棚にあるだけで素敵だし落ち着く。 -
026
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ストーリーのあまりない吉田さんの本はそんな好きじゃないな
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しーんと静かなところで読みたいお話。
てんてんとした文章で、読むのがちょっぴりしんどいというか言葉がうわついてなかなか頭に入ってこない感じ。
すきなんだけどね。
「ティファニーまで」がいちばんすき。 -
すぐ身近に潜むファンタジーといった趣。
「水晶萬年筆」は良かった。 -
埃っぽい臭いのする本。
他の本に比べると、ちょっと渋い印象。
私は他の作品の方が好きです。
写真からストーリーを感じて◎ -
「水晶萬年筆」の話が好き。モノクロの写真も雰囲気があって素敵。
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2009.1
6つの作品とそれにまつわる写真で構成された短編集。
『雨を聴いた家』
水と「S」にとりつかれた物書きの物語。
「運命ですよ。あなたが書くより先に、そうして物語はもう始まっていたんです」
『水晶万年筆』
えかきのオビタダさんとおでん屋のつみれさんが少しずつ近づいてゆく様子がとてもとても好きな感じです。
「すでに纏ってしまった恋の美しさに見合うシャツなどあるはずもない」
『ティファニーまで』
研究者の老人と助手のサクラバシ君の道草(もしくは迷子)のひととき。
「胸がドキつく」って言葉使ってみたい。
「寄り道がすぎて道草に転ず→道草の繁茂。草が足にからみついて前に進めなくなる→いぜんとしてそのまま」
『黒砂糖』
「いま、月夜に種蒔く人は、この僕である。」
最初のこの一文のみで、ほぼ心つかまれてしまいました。
読後迷わず夜の散歩へ出かけました。
熱いほうじ茶を入れた水筒をお供に。
ファンファーレが聴こえたらいいのにと思いながら。
『アシャとピストル』
鴉を射つとかいてアシャ。
言葉遊びの感覚が面白い。
漢字と平仮名とカタカナとそれぞれの使い分けでイメージが全く変わる、そういう感覚好きです。
この物語だけ、三人称、語尾がですます調だからか、どこか童話のような風情でした。
・ルパンの片眼鏡
〈探偵小説読書倶楽部〉予備部員の「僕」は路地で偶然、怪盗ルパンを名乗る男に出会い弟子となる。
街に惚れるってどんな感覚なんだろうか。
惚れすぎて盗んでしまったなんて、ほんと気障ですな。
「洒落を知らなきゃ、冒険も出来やしない」
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著者は、言葉遊びが巧みな方だな、という印象でした。
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ノスタルジックは、合っているようで一寸違う。
何処となく、ざわっとする。そこが好き。 -
写真を見ると、更に不思議な妄想に取りつかれます。
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街の中のちょっとした謎や違和感を探る人たちの姿を、
十字路の影から見守っているような話。
師匠というものの存在を大きく感じさせる。 -
6つの短篇が収録。6篇とも現実からふわりと1歩浮いた位置を流れるような、吉田さんらしい不思議な雰囲気だと思います。一篇一編のタイトルもすごく綺麗で好き。あと装丁が、とても綺麗な本です。この本も緑を基調としたしんとした雰囲気。汚れやすそうで扱いに非常に気を使ってしまうのだけれど。
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十字路のある風景を淡々とかつ清浄な空気をまとわせた優短編。
様々な十字路を風景につむがれていく物語。
十字路探訪をしてみたくなります。
一番好きなのはコンクリートを突き破って生える雑草や花に水をやって回る話。
自然に生えているようで実は誰かが「雑草の生えている風景」を作っていたら。
想像すると面白くてムフフーとなります。 -
クラフト・エヴィングの吉田氏の小説と、写真家坂本氏の本。言葉や空間とほどよく遊んだような本。面白い。モノクロの写真も、いい影が漂っている。
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2007.07. 吉田さんの書く文章の空気が好き。どんどん好きになる、ちょっと奇妙なぽよりとした世界。ここにありそうで、きっとどこにもない十字路ばかりの街。夜の話が良かったな。眠れない夜、どうしようもない孤独感に苛まれる時に、ファンファーレを想像するのはとても楽しい気持ちになれそう。
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夢かうつつか。物語の痕跡を探して、物語の中の十字路を訪ねて歩く――作家が「水」をめぐる物語を模索する「雨を聴いた家」、「影の絵」を描くオビタダが主人公の「水晶万年筆」など、6つの短編を、文章とモノクロ写真で構成。人気制作ユニット、クラフト・エヴィング商會の物語作家と写真家による新しいコラボレーション。
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十字路のある先には、壁があって、また別の十字路を歩いて行くと、また壁がある、という迷宮に沿って物語りは展開される。ある時は脚本家だったり、ある時は探偵だったりして、十字路の路地をさまよう。十字路という国を夢じゃなく、現実に繋ぎとめているものはモノクロームの写真だ。