- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022512291
感想・レビュー・書評
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読メ500冊目メモリアルは人生半ばにして本の世界に復活するきっかけとなった久しぶりの江國さんをチョイス。
失礼ながら彼女の年齢でこの伸びしろは驚愕に値する…それほどまでの鮮烈な感性の連続に貪るように一気読み、改めて江國香織の素晴らしさを知ることになった孤高の一冊。
児童文学あり、詩情あり、狂おしいほどの恋情ありのオムニバスはこれまでの作品の集大成とも言ってよくエクニストランキングでもトップクラスと断言出来る。
そんな力があるのだからいい加減に昨今流行りのゲス不倫ネタはもうやめて欲しい、そしたらまた熱狂的なファンに戻ろうと思います詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
拓人の目線を借りて、本当に幼い子どもの頃特有の世界観を自分も覗き込ませてもらったような感覚がして、その色彩や感覚の豊かさ・情報量にひたすら圧倒されました。
回りの人間模様やいずれ失われる世界観・命達のことを考えると淋しくなりましたが、物語の終わりが近づいていても、「本当に美しくて、心地の良いこの世界観にいつまでも浸っていたい」という気持ちでいっぱいでした。 -
とても好き。
一見して読み飛ばすかな〜と思ったたくとの所があまりに素敵で、ひらがなだから流し読みは出来なくて、おかげでとても丁寧に読めた。
両親が不安定な中、子どもたちがあまりにも安定していることが不思議。
私がたくとの年だった時、もうすでに私は”せかい”ではなかった。
ずっと、「だいじなのはそこに”いる”こと、ようすもきげんもとるにたらないもの」なら、生きていくのは楽だろうな、と思う。 -
江國香織さんの作品は本当に大好きなのだけれど、どうしてもこれは受け入れられなかった。
虫たちと会話をする「言葉の遅い幼稚園児」拓人とその姉育実を軸に、幾人かの大人たちのストーリーがそれぞれに進んでいくスタイルで、大人たちのストーリーに関しては江國さんらしいなぁと思う。
ただ、拓人の章はぜんぶひらがななので読み進むのにかなり苦労したうえ、ラスト近くの育実の“殺戮”の表現はあまりにもグロテスクで、必要なシーンだったとはいえ気持ち悪さを長らく引きずってしまった。ちょっと苦手だ…ごめんなさい。 -
スカッとする物語では無いが、様々な女性の内面と悲しい実体は共感できる。
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今年の谷崎賞を取ったということで読むことにした。
子供や虫、小動物が出てくる話はあまり得意でない。
大人の出てくるパートと平仮名で書かれた拓人のパートが同じペースで読めず、おもしろかった。ちょっとイライラしたりして・・・
静かな小説だった。でも、ザワザワする小説だった。
登場人物それぞれの孤独が、私自身の孤独と重なり合い、季節も関係するのか、寂しい気分になったり、ザラっとしたりした。 -
江國香織さんの最新刊。浮気されている妻、浮気している夫、小学生の娘、幼稚園児の息子、夫の浮気相手の女、妻の家族の隣に住むテレビ好きの女、娘と息子のピアノの先生で婚約相手と婚約を解消することになる女、霊園で働く男など多くの登場人物のオムニバス。それぞれの登場人物の物語がパラレルに進み、交差し、昇華して、収束していく。すごくすっきりするラストだったし、江國香織さんの作品で1番好きかもしれない、と思った(これが2番なら、1番は『きらきらひかる』)。
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なんだかもうよくわからなかった……なにかが解決するのかと思ってとりあえず頑張って読んだんだけどなにも解決しないまま終わった感……これは……どうすれば……?
虫ややもりと会話のできる幼稚園児拓人、その姉で弟が動物と会話できることを理解している小学生の育美、息子の会話が遅れていることを気にしている母親奈緒、テレビ局で働いていてめったに家に帰らない父親耕作、耕作の浮気相手の真雪、拓人と育美の通っているピアノ教室の先生千波、千波の母親で庭作りが趣味の志乃、拓人と育美のよく遊びに行く霊園で働く児島、拓人と育美の家の隣に住む倫子。
視点が入れ代わりまくって、だからといってなんの謎もなく、なんの事件もなく、なんの真実もなく、ただ日常として生きているだけというか、虚構なのにすこしさびしい。 -
読むことはないであろうと思っていた作家さんである
小池真理子さんの『沈黙のひと』を読んだように、
今回、江國香織さんの作品を読んでみた。
統合失調症気味のテレパスな幼稚園児と
大人の疲れた恋愛模様を多視点でハイブリッドさせた日常小説であった。
私とそりが合わない作家さんだと確認できたことが今回の収穫。
ごめんなさい。
2015 年 第51回 谷崎潤一郎賞受賞作品。