子規365日 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022619839

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学評論随筆その他】こんなにも無邪気で軽快で明るい子規がいたなんて──365日を俳人・正岡子規の365句で、まるごと味わおう! 愛媛在住、MBS「プレバト!!」俳句コーナー講師で大人気の著者が、34歳志半ばで逝った子規の世界をていねいに読み解く快著。

感想・レビュー・書評

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  • 夏井いつき先生の「子規365日」を読んだ。もともと朝日新聞の愛媛版で「子規おりおり」というコラムとして連載されたもののようだ。

    著者は言わずと知れた、プレバトで毒舌さわやかな(笑)夏井先生だ。家族共用で利用しているkindle本のライブラリーにコレを見つけた。恐らくプレバト好きの家内がワンクリック購入したものだろう。

    もちろん、今回これを選んだのは、私もプレバト好きの一人だからだ。ただし、俳句のほうはあまりわかっておらず、番組ではハマちゃんや梅沢富雄のトークバトルやフルポン村上の意外な才能などを見聴きしてバラエティとして楽しんでいる口である。

    それでも「俳句」はあの短い言葉の中に、いくつもの思いを表現することができて、できる人はすごいなと感心している。

    現代のプロの夏井先生が、少し前の郷土の先輩歌人・正岡子規の作品を1日1句セレクトしてコラム記事にしているので、著者であるだけなく編者でもある。いずれにしても本書を読むだけで、最高級の歌にふれられる満足感というか幸福感みたいなものがある。

    最初の1月1日の句から読み始めたが、同じ季節を味わってみたいなと思い、先回りして11月や12月の句を先に読んでみたりした。そして一足早くクリスマスから大晦日に至った。

    12月31日 「来年はよき句をつくらんとぞ思ふ」 1897年(明治30年)

    俳句でなくともこういう誓いを晦日に立てたいものだ。

    夏井先生は当然、子規のこともたくさん研究されており非常に詳しいが、日によっては子規の句から自分の思いに至り、特に食べ物の句の場合には、それをツマミに酒が飲みたいという話題になることがしばしば。夏井先生が酒を飲みたい日には、そういう句をセレクトしているのではないだろうか(笑)?

    それともう一つの特徴は、夏井先生の読書の話がよく出てくること。「いまこの本を読んでいる」とか「この本を読みだした」とかの話題が出てくる。そもそも、本書の「まえがき」では、司馬遼太郎の「坂の上の雲」に登場する正岡子規のことに触れられている。なんと司馬遼太郎氏も正岡子規のファンだったんだ・・・と本書の「まえがき」を読んで初めて知った。

    そして本書の巻末には、著者の大連吟行の紀行文が載せられていた。正岡子規が従軍記者として大連に渡ったことで現地に作られた句碑が、一時行方不明になっていたところ、発見され愛媛県人会の手により再興されたものを見に行くツアーだったようだ。その従軍記者時代の子規も、「坂の上の雲」では読むことができるのだろう。

    さきの「まえがき」には、関川夏央氏の「坂の上の雲と日本人」という本を夏井先生が読んで、なぜ日露戦争を描いた小説に正岡子規という俳人の存在が必要だったのかという疑問がスッキリ晴れたと書かれていた。

    この流れで行くと、夏井先生に続いてスッキリしてみたいという願望が当然のように湧いてくるのである。

  • 夏井さんの言葉でわかりやすく、エピソード等をふまえて書いてくれてるので情景が浮かびやすかったです。
    時折出てくる「花」が気になり、どんなものだろうなんて自分で検索して楽しみながら読むことができました。

  • 俳句から見える子規の姿を、夏井さんのエッセイで。
    病床の切なさとともに、食いしん坊で元気な青年の笑顔が浮かぶ。
    ふと口をついて出たような言葉をそのまま俳句にする、子規の語り口。

  • 10年位前の著書だが、テレビで芸能人の俳句に辛辣な批評をかまし、巧みに推敲する著者の姿は以前から変わっていないのだなと感じた.子規の俳句に軽妙な解説の取り合わせは、一幅の絵画を眺めるような心地がした.楽しめる本だ.

  • いくたびも雪の深さを尋ねけり

    寒椿力を入れて赤を咲く

    蜜柑剝いて皮を投げ込む冬田かな

    藤の花長うして雨ふらんとす

    とんねるに水踏む音や五月闇

    六月を奇麗な風の吹くことよ

    舟一つ虹をくぐつて帰りけり

    短夜(みじかよ)やほろほろもゆる馬の骨

    田の中の墓原(はかはら)いくつ曼珠沙華

    凩(こがらし)や燃えてころがる鉋屑

    恋にうとき身は冬枯るる許(ばか)りなり


    子規の歌とともに、夏井いつきさんによる鑑賞が加えられている。鑑賞といっても、同じ俳人としてのもので、読みやすい。

  • 20/02/01。

  • 正岡子規の俳句365句を1年365日丸ごと味わう本。プレバトの夏井いつき先生が楽しく子規への愛たっぷりに解説してくれる。
    私の好きな句「桃の如く肥えて可愛や目口鼻」はないようだ。子規はどんな思いでこの句を作ったのか、夏井先生の解説を読みたいな。

  • 数年前から「プレバト」というテレビ番組を観ている。
    楽しみにしているのは、夏井いつき先生の、俳句の添削コーナー。
    見始めた頃はこわい先生だと思っていたのだけれど、今では辛口のユーモアも癖になり。
    私には、そう悪くはないなと思われる俳句も、先生に添削されて、アヒルの子が美しい白鳥に変わって飛び立って行くのを見ると心が晴れる。

    私は散文人間なのか、俳句の潔さは憧れではあるけれど手が出せない。
    読み解き方も分からない。
    ただ、響や、目の前にぱっと広がったイメージで好きな句というのは幾つかあるのだが…

    そう言ったわけで、俳句集を読むことはなかったのだけれど、365日すべてに違う季語で選ばれた正岡子規の俳句に、夏井先生の短いエッセイが添えられたこの本は、先生に手を引かれて子規の宇宙を旅するがごとく。
    風景は、俳人が立ち、あるいは病臥のまま読めば、夏井先生が、さっと美しい書き割りを描いて見せてくれるもの。
    時々顔を出すお酒好きの一面にも親しみが湧く。
    散文人間ゆえ、長文ご容赦、呵呵。

  • 2007年に『朝日新聞』愛媛版にて連載された記事をまとめたもの。付録の旅行記である「大連風聞」も、10年前の中国の風景を伝えてくれる貴重な資料。長嶋有氏の解説が、本書の魅力を十二分に伝えてくれており、読後感を整理するのに参考になった。

    個人的には、伝統と近代とがせめぎ合っている句が1890年代という時代を象徴しているようで、面白く思う。
     餅搗にあはす鉄道唱歌かな
     議事堂や出口出口の青簾

  • 毎日、子規一首、の本なのでどこから読んでもいい。
    解説もいいので、このまま、図書館に貼りたいくらい。
    てなわけで、学校は買い!!

    2019/08/28 更新

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著者プロフィール

昭和32年生。松山市在住。俳句集団「いつき組」組長。俳都松山大使。「第8回俳壇賞」「第44回放送文化基金賞」「第72回日本放送協会放送文化賞」「第4回種田山頭火賞」受賞。著書に『超辛口先生の赤ペン俳句教室』『夏井いつきのおウチde俳句』、句集『伊月集 鶴』(小社刊)等多数。

「2023年 『おウチde俳句くらぶ 作品集 2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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