乱反射 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (600ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022646385

作品紹介・あらすじ

地方都市に住む幼児が、ある事故に巻き込まれる。原因の真相を追う新聞記者の父親が突き止めたのは、誰にでも心当たりのある、小さな罪の連鎖だった。決して法では裁けない「殺人」に、残された家族は沈黙するしかないのか?第63回日本推理作家協会賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 【ネタバレします】タイトル通り「乱」反射。ある日、1人の幼児が強風で街路樹が倒れ頭を強打し亡くなる。この事故に納得しない父親で新聞記者の加山聡が追求する。街路樹の診断を怠った潔癖症男性、そこに犬の糞の放置、そこの伐採を反対する主婦、救急車の渋滞を引き起こした女性、診察を拒否した内科など、いろんな偶然が重なる。でも偶然では片付けられない今の日本の縮尺図。この本では、各々が小さな、本当に小さな罪を犯しその代償として幼児の「死」につながる。小さな犯罪を謝罪できるか、これができない日本の社会病理が乱反射した。⑤↑

  • ちょっとしたマナー違反位に思い犯している罪。それが時に誰かの命を奪うかも知れないなんて。人生を大きく変貌させるかも知れないなんて。誰もが加害者になり被害者にもなり得る小さな罪の多さに怖くなる。例え小さなマナー、ルールでも社会生活を安心安全、円滑に営むという大きな役割があるのだと思わせられた。子供を亡くした親の無念さが伝わり涙無くして読めない。何より他者をも思いやる心を持って生きたいものだ。

  • 「ラッシュライフ」「ドミノ」が好きならこちらもどうぞ
    とおすすめいただいた本
    って、あらすじを読み、冒頭を読み


    ……重たい。上記二作が陽ならこちらは陰

    ある一点(一つの事件)に対して
    様々な年代、職種、性別、家族関係の違うは人々が登場し、ほんの少しの
    「私だって」「何で俺が」
    「少しくらいいいか」「これくらいして良い権利がある」「仕方がない」
    と、自分にいいきかせつつ
    悪いことをする。

    その嫌な小さい積み重ねと、それぞれの登場人物が抱える不安、フラストレーションがドミノというより静かなゆっくりとした暗い爆発となって連鎖していく…

    2011年の作品なのに、考え方の古さがチラチラ出てくるのもイライラポイント…
    もう、ほんと読んでて嫌になる。

    なのに、その事件を迎えてからラストまでは、ページを数行単位で貪り読んでいる様な感覚に加速し怒涛の勢いで読み終えてしまった……放心状態

    話の予想はついたが、どこかで希望を感じさせる部分が出てこないかと探していた。ほんの少しだけしかも意外な形で見ることができた。

    読んでて嫌になるのは、自分自身にも当てはまる「本当にどこにでもいる普通の人達」の負の連鎖に圧倒されてしまうから、これは起こり得ないとは言い切れない。
    本当に気づかないほどささやかに起きていることだと感じた。

  • さすがにこれは鈍感な私でもちゃんと理解できましたよ。
    貫井 徳郎先生の作品、慟哭、愚行録を読んで、イマイチピンと来てなかったところもありましたが、これは分かりやすく良かったです。

    ネタバレなるのでなんも書けねえ!って感じなんですが、前半は個別の話だったのが、だんだんつながってきて、残り1/3くらいで一気に一本の線につながっていく感じです!

    映像も見たいんだけど、配信やってないのよね。残念。。

  • まぁいいかと自己都合で考えてしまう私たちの想像力のなさと共に、強いエゴを感じました。
    作中の登場人物を100%自分は違うと考え批判できないのが、この作品の苦しい部分です。

    「法律ではなくモラルでは、罪ある人を糾弾することができないのだ」

  • ❇︎
    色々な人の些細なモラル違反が重なって
    起きてしまった小さな子供の死。

    起きた結果のワンピースだと指摘されても、
    自分にそんなつもりはなかった、
    自分だって仕方なかった、
    自分には責任がない
    と開き直って責任からの目を背ける人々。

    一度だけと目を瞑る身勝手な行動から、
    知らないうちに無自覚に加害者になり得る
    怖さを教えてくれた物語でした。

  • 後半はノンストップで読んでしまった。終始少しだけ嫌な気分で読んでいる感じだった。
    悪い行いにしろ良い行いにしろ、それ以降におこる出来事のプロローグになっているのだなあと感じた。
    世の中に存在する事故と呼ばれる物全てがこんな感じなんだろうと思う。

  • 最高の嫌ミスでした!
    誰にでも経験のあるような小さな悪事で、2歳の子の命が奪われてしまう。犯人を責めたいが、責めようがない。
    この本は読んでください!めっちゃ楽しめました

  • 題名が気になり買った一冊。

    いろんな所から始まる話が事件をきっかけに、すべてが絡んでいく話だった。

    始めは個々の話が長く、いらつく内容もあったので、ちょっと読むのがダルくなった。
    しかし最後まで読めば納得する話になった。

    細かに個々の心情が書かれているから個々の話が長くなるし、それが必要な内容の話だっと思う。

    最後の主人公のショックは自分自身の心にも突き刺さった。

    一回ぐらいいいや、わからなければいいや、無責任な行動が最悪な事に繋がるかもしれない。
    いろいろ衝撃をうけ、反省しなきゃならないなと感じた小説でした。


  • ちょっとした出来心でやったそれぞれの行いが取り返しのつかない事になってしまう、読んでいてずっとモヤモヤしてしまう話だった。けれど、日常にはそんな事が溢れているようにも感じた。徳を積むではないけれど、自分も周りも気持ちよく過ごせるような行動をしていきたいとおもった。

  • 最近、本を読みスピードが遅くなった私が久々に引き込まれました。とでも読後までには時間はかかりましたが。600ページの長編。物語の組み立てが面白い。たくさんの単元に分かれていて、最初の頃は単元ごとに登場人物が違います。登場人物が多い。もちろんロシア文学のような訳がわからなくなるほどではないですが。この人たちが、どのように繋がるのか興味津々です。途中から、なんで理不尽なんだ。自分さえ良ければ、こんなことぐらいの思いが悲惨な結果をもたらすことがあり得ると痛感させられます。自分自身が彼らのようになる可能性があることに愕然とします。小さな行動が重なり大きな事件になる。恐ろしいですね。当事者は決して自分の非を認めない。嫌な世の中、謝ると言う行為が危険を巻き起こすかも知れない社会に疑問を感じました。面白かったです。

  • ただただ放心した。自分の些細なモラルの欠如によって人が死んでしまう、そんな非現実的だがどこまでも現実的なストーリーは、人間という生き物の抱える運命というか性というか、そんな点を突き詰めて表現した傑作だと感じた。今を生きる人間、自分自身も決して無関係ではないこの物語は、読者に、自覚をもたらすだけでなく、そこから不可避であることも同時に突きつけてくる。
    答えも解決も存在せず、登場人物の全てが自分でありうる。自分の語彙力では表現できないが、素晴らしい傑作だった。

  • 今読んだのは、自分的ホラー特集の一環で。ブックオフ特集で取り上げられていたから。そして久しぶりの貫井作品という期待も胸に。”慟哭”が素晴らしくて、その後数作入手した経緯あり。でも次の”プリズム”がいまひとつで、しばらく遠ざかってしまっていた。そして本作。これは素晴らしい。二番目にこれを読んでたら、彼の作品はもっと読んでたかも。順番って大事。それはさておき内容だけど、これはホラーじゃありません。小さい悪意の積み重なりと考えると、確かに見え方はホラーチックになってくるんだけど、そもそも各人、悪意とすら思っていないわけで、怖いってだけで簡単に済ませるべきでない深さが、この物語には備わっていると思える。読み手の立ち位置によって、各人の行動に対する感想もずいぶん変わってくるだろうけど、その各視点からの見え方が、リアルに描き切られている点も素敵。

  • 関係のなさそうな今までの出来事が勢いよく次々と結びつき、完成した後の衝撃。さまに乱反射で起きた事故。
    自分も何の気なしにとっている行動が、事件や事故の原因になってしまっているのではと怖ろしくなる。

  • 何人もの、日常の「ちょっとした悪いこと」から結果として起きてしまった痛ましい事故。

    色んな人が出てきますがとても読みやすく、一気に読み終わりました。
    こんなことになるなんて…と気分は重くなりますが色々考えさせられ、読んで良かったと思える作品でした。

  • 「自分さえ良ければいい」といった、きっと多くの人が持つであろう、日常に潜む黒い心。
    当たり前のように身近にある、その小さな積み重ねが悲劇の引き金となる。
    直接手を下したわけではない。
    一つ一つは本当に些細な出来事であり、一人一人は少しの罪悪感を感じながらも、悪意があるわけではない。
    ちょっとしたマナー違反やルール違反であったり、モラルに欠けた行動は、「誰も見ていないから」「これくらいなら許されるだろう」「皆やっている事だ」「自分だけが悪いわけではない」そんな言い訳が成り立ってしまうような世の中だから。
    ただ、その積み重ねが不運を招いただけ。
    だとすれば、その怒りの矛先をどこに向ければ良かったのか。
    誰に責任を問えるのか。
    しかし、小さな命を奪ってしまった事実に知らずに加担していたとすれば、己の行動や考え方を正すきっかけとなったはずだ。
    勿論読者各々も。
    この話は、誰もが被害者にも加害者にもなり得る。
    とても読み応えのある一冊だった。

  • 池井戸潤がカタルシスの人なら、貫井徳郎は反カタルシスの人といえるんだろうか、それだけ物語の中の登場人物や読み手の気持ちは解決しないし報われない話。
    冒頭の一節から、これから起きる事件の顛末は予想がつくのだが、次々と出てくる登場人物たちが、悲しい事件のどの部分にどう関わっていくんだろう、とページを繰る手が止まらない。
    ミステリじゃないけれど、そんなことを推論しながら読むと新しいミステリ。

    父親の心の整理に光明の兆しが見えただけでも、読者の立場としては、まだ他の作品に比べ報われた方なのかも。

  • 決してありえない話ではないから。
    自分の行動に注意しようと思う。
    モラル違反…少しの罪悪感がどんな影響を及ぼすの。その結果について責任を誰も負おうとはしない。
    小さな身勝手であれば自分にも思い当たる節は少なからずあるかと。。。自分の行動を見直さねば!
    人は、自分の痛みには敏感で、他人の痛みには鈍感。
    自分の罪には鈍感で、他人の罪には敏感。

  • かなり前に読んだものの内容を忘れてしまって再読。
    読み終わってからしばらくぼーっとしてしまうくらいの余韻。
    大勢のちょっとしたモラル違反が最終的には2歳の男の子の命を奪う結果になるなんて。
    非常に細かくよく練られたストーリー。

  • 背表紙のあらすじで分かっていたけど、辛いお話。語り手がどんどん変わっていくんだけど、全ての人が自己中心的で自己愛が強く、独りよがりでズレていて、腹が立つ。感情的に寄り添える人はいない。でも、自分自身にそういう一面が無いのか?と問われると、絶対的にある。無い人なんていない。でも、間違っていたら素直に認め、謝ることができる人になりたいとも思わされる。
    旅行中の生ゴミ問題から始まるところがすごい。そしてエピローグの切なさ。

  • かなり苦しくなる。
    ちょうど真ん中位から加速度的に面白くなります。今までの話が見事に繋がっていきます。
    後半はひたすら切なく、最後の父親の気付きの瞬間は天を仰いでしまいました。

  • 久しぶりに貫井さんの作品を手に取りました。

    ある不幸な事故で2歳の男児が亡くなります。
    亡くなるシーンは、作品の中盤に描かれているのですが、事故発生理由のそもそもの発端から事故発生、そして男児の父親が真相究明の為に動くー
    という流れとなっています。

    事故は不幸が重なって起きた、と言わざるを得ないものです。
    その不幸達は、多くの人が身に覚えのあるような些細なマナー違反、ちょっとした虚栄心、保身…そういったことが連なり、重なって起きた事故。
    誰もが、自分の行為によって人命が奪われるとは予想しておらず、そうと分かっていれば犯さなかった行動です。
    多少の非があることは認める、けれど人殺しでは決してない、認めてしまうわけにはいかない。

    人間ならきっとそう考え、作中に出てきた人々のような振る舞いをするのでしょう。

    読み手として、客観的に彼らの言動を見ていると、非難する気持ちが生まれます。
    何故、自分の非を認めないのか。
    被害者の父親は罪に問おうとしているのではなく、ただ真実を知り、謝罪の言葉が聞きたいだけなのに。

    けれど、認めることを望んでいる“非”は、多少の違いはあれど、自分にも身に覚えがあるもの。
    過去を振り返り、「一度だけだから」、「仕方がない状況だから」と自分に言い訳をして、やってしまったルール違反を棚にあげ、彼らを非難できるのか。

    何故事故が起きたのか、といったミステリー的要素は皆無に等しく、またフィクション故に多少(言葉は適切ではないですが)タイミング良く、各事象が重なる感は否めませんが、「痛いところを突かれた」というのが、読み終わっての素直な感想。

    男児の両親のその後を描いたラストが、ちょっと飛躍しすぎていて、その点が残念でしたが、読み応えは十分にありました。

  • 正しいのは自分で間違っているのは他人や社会、そんな自己愛の強い登場人物たちの身勝手ではあるけれどささいな「悪」。そのひとつひとつの点と点が最悪の巡り合わせでつながって一つの犯罪が形成される。その「犯意なき犯罪」をテーマにすえたミステリー。登場人物たちの「自分はそこまで悪くない」という、微細な悪のありようを暴き出し、果たしてそれらを適切に裁く方法はこの社会にあるのか?という命題に意欲的にとりくんだ500ページ超の労作。ひとつひとつのエピソードが面白く飽きさせないので一気に読める。

  • 街路樹が倒れ、あるひとりの幼児が命を落とす。
    表面だけ見れば不運な事故、しかしそれは、身勝手で無責任な人たちの小さな「罪」によって引き起こされた殺人だった。

    この物語は、幼児の死に関係した人物一人ひとりの視点で描かれ、誰もが経験した事のあるような些細な過ち、と言ってもほとんどが条件反射的に行為に及んでしまうような身近な過ちがいくつも出てくる。そして、その結果として街路樹が倒れ、被害者の父親である加山聡は加害者を求めて調査を進めていくことになるが、そこで対峙した人物たちは自分の保身しか考えていないような態度ばかり。

    法でも裁かれない。自分の立場が危うくなるなら罪を認めない。息子の命を奪った奴らが反省もしないでのうのうと暮らしている。そんな現実に絶望する加山だったが、ふとした時に自分が過去にしていた小さな「罪」を思い出し、発狂する。加山にも奴らを責める資格など無かったのである。





    登場人物を適当にまとめると

    ・三隅幸造…会社で威張り散らかしていたが、定年後は家庭内で孤独感。犬を飼い、世話が生き甲斐になったが、腰痛が出て散歩中に犬のフンを処理を諦めた。このぐらい大丈夫だろうと考える。

    ・小林麟太郎…市役所の道路管理課、街路樹に犬のフンを発見。先輩たちに片付けを押し付けられる。別日にも犬のフンの片付け、子供にバカにされ仕事を放棄する。

    ・田丸ハナ…50代主婦。自然が大切という価値観。街路樹を守りたい為、道路拡幅工事には反対だが、人の先頭に立って行動はしたくない。頼れる協力者たちと、伐採業者を強引に帰らせた。

    ・足達道洋…石橋造園土木の従業員。実は極度の潔癖症。5年に1度の街路樹診断だが、道路拡幅反対運動をする人たちから伐採業者に間違えられ妨害を受ける。早朝に何とか実施するも、犬のフンがあった木だけは潔癖症の為どうしても点検出来なかった。

    ・榎田克子…2人姉妹の姉。妹とは違い、小心者。車の運転が苦手で、買い替えるなら小さい車に乗りたかったが、妹の発言権によって大きい車を購入。道路に面した自宅の駐車場は交通量も多くて狭い。バックで駐車出来ずに逃げ出し、道路に放置した車により渋滞を引き起こしてしまう。

    ・安西寛…身体が弱く、すぐ風邪をひく。良い診療所は普段混んでいる為、苦しいフリをして救急外来を利用。そのテクニックを好きな子に教えたことで、若者の利用者が増加。救急外来に風邪で来る人が増えた。

    ・久米川治昭…病院の内科医(アルバイト)。責任感がなく、医者を信用しない患者は不幸になっても自業自得だと考える。重体の幼児を専門外だからと受け入れず、その日も救急外来が多かった為言い訳があって良かったと思う。

    他にもいるが、大体こんな感じ。



    (ストーリーのまとめ)
    犬のフンが街路樹を腐らせ、市役所職員がフンを片付けず、環境保護を訴える団体が街路樹診断を妨害し、業者が個人的な理由から診断を怠った。
    そして事故が起こり、渋滞によって救急車が遅れ、モラルの欠如した若者により救急外来の医者に言い訳を与え、その医者の怠慢によって受け入れ拒否、病院をたらい回しにされた幼児は間に合わずに死亡。被害者の父親は原因を追求。責められるべき人たちの話を聞いて絶望。自分も同類だと気付き発狂。最終的に、冷静になり人生を歩き始めるが、我が子を失った苦しみが消えることは無い。





    今年に入ってようやく読み終えた一冊目。

    他人事とは思えないリアルな内容に、自分もそうなのではないかと不安な気持ちにさせられることが少なからずあった。

    唯一、心から謝罪した造園業の足達道洋が逮捕され、他の性悪どもが罪に問われないのはスッキリしなかったが、そういった理不尽さを表現しているのかなとも思った。

    一人ひとりが意図ぜずに犯した罪の連鎖が、巡り巡って人の命を奪っているとしたら、それに気付いたとしても法律で罪に問われないとしたら、自分もこの登場人物たちのように保身に走り、自ら償おうとはしないと思う。

    だけど、そんな小さな罪が自分や周りの人に乱反射しないように、出来るだけ減らしていきたいと思った。

  • これまたすごい本を読んじゃったな……。
    読んだら売ろうと思ってたのに、そうはいかなくなっちゃった。

    まず、お話の構成が良い。この話は2歳の男の子が死亡する話ですよ、という情報だけ与えられて、そこからなんだか全然関係なさそうな、色んな人の話になる。

    みんなちょっとだけモラルがなかったり、自分のことしか考えてなかったりする人ばかりで「おいおい…」と思っていると、それが間接的に1つの悲しい事故に繋がっていく。
    最低な奴らだなあ!と思うけど、自分が果たして日常で「1回だけならいいか」とやってしまっていることがないか、と言われれば自信がない。

    でもこの中で個人的に誰が一番むかついたか、というと、犬の糞を片付けないやつも嫌だけど、榎田一家(特に両親)かなあ。
    なぜ、主に運転する人の意見を第一に車を買わないのか。不思議でならない。

    最後の夫婦の姿が悲しかった。

  • 超ド級のイヤミス。子供が不幸な事故に合うところから逆算して物語が始まり、日常に小さな不満を持つ小市民のほんの小さな悪意が、子供の命を奪うことになる痛ましい話。犬のフンを放置する老人、夜間診療にしか来ない学生などなど身勝手な連中がいっぱいだが、自分達は彼らを否定できるのか?というテーマ。
    ミステリとしては、シナリオが一本道で裏切りもどんでん返しもないので、粗筋の内容が全て。ただただ痛ましいだけに感じた。最後のバタフライエフェクトというか、主人公の記者が絶望に気づく描写も、序盤に意味ありげに書きすぎていて、驚きは薄い。

  • 結構面白かった。かなりページ数はあるが早く読めた。
    この作者のは無難に面白い。

  • どこにでもいる、普通の人々の何気ない行為が、重大な事件につながり、しかし誰もがその結果に無自覚で、責任を認めない、まさに現代社会を告発する書。
    「みんな少しずつ身勝手で、だから少しずつしか責任がなくて、それで自分は悪くないと言い張る」人たち、「己のちょっとした都合を押し通し、それが巻き起こした波紋の責任など取ろうとしない人たち。自分だけがよければいいと考え、些細なモラル違反を犯した人たち」、被害者の父親が告発する言葉に、誰が身に覚えがないといえようか、書を閉じ、己の胸に問いかけてみたい。

  • 2020/07/26
    #乱反射
    #貫井徳郎

    まぁいいか。って日常生活のほんの些細なルールを怠る事によって、他の誰かの負担になっている。そして、その行為は誰かを殺めるきっかけになってしまうかもしれない。

    人間は1番可愛いのは自分で、今日だけは。今だけは良いか。
    明日からやれば良いか。ってやらなきゃいけないルールを守らなかった時に、重大な事故につながる。
    そして知らない誰かを不幸にする。

    後半にかけて、ここでも、ここでも、この不注意のせいで!
    って伏線が繋がっていくのでとても、引き込まれます!
    それに加えて、自分の生活の中でこの本と同様のことしてないかな?って読んだ後に考えます。

  • 600ページ近くあるのに、面白くて一気読みした。

    どこにでもいるような普通の人たちによる、ちょっとだけ身勝手な行動が、子供の死につながってしまう不幸な話。

    「風が吹けば桶屋が儲かる」のようで、木の点検を怠った業者と車を道路に放置した女性を除けば、自分の行動が誰かの死につながるとは、とても想像できないだろう。
    帯に書かれているように、ラストは衝撃的。

    怖いのは、己自身もここに登場する「ちょっとだけ身勝手な人々」になりうることだ。改めて、責任ある行動をとらなければいけないと思った。

    悲しいのは、これらの普通の人々が、自分の行動が間接的に子供の死につながったことを知った時に、心の中では罪の意識を感じ、子供が亡くなったことを気の毒に思いながらも、それを声に出さず、自分は悪くないと自己防衛に走ったことだ。現代社会では自分の非を認めれば、社会から非難されたり訴えられかねないので、そのような行動に出てしまうのだろうか。

    色々と考えさせられる作品だ。

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著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。93年、第4回鮎川哲也賞の最終候補となった『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞受賞、『後悔と真実の色』で第23回山本周五郎賞受賞。「症候群」シリーズ、『プリズム』『愚行録』『微笑む人』『宿命と真実の炎』『罪と祈り』『悪の芽』『邯鄲の島遥かなり(上)(中)(下)』『紙の梟 ハーシュソサエティ』『追憶のかけら 現代語版』など多数の著書がある。

「2022年 『罪と祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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