- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784040820866
感想・レビュー・書評
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戦争法が成立し自衛隊に新たな任務が出される・武器輸出3原則が事実上撤廃され防衛装備庁が新設される等、海外で戦争のできる体制が徐々に確実に作られようとしている中、どのような現状にあるのか知りたく手に取りました。
著者は東京新聞社会部記者。加計学園をめぐる問題等に対して官房長官にするどく質問する姿が話題になっていますが、本書もテーマに深く切り込んだ中身になっています。粘り強く丁寧に行われた取材をもとに、武器輸出をめぐる現状が書かれていました。
読み終えて、ほんとうに恐ろしい状態になっているなと背筋が寒くなりました。政治及び経済はすべて人々の暮らしに貢献するのが本来の役割なのに、新自由主義による経済政策のもと、お金のあるなしですべての価値判断を行うという間違った方向が進められています。武器を売ることによって誰が儲かるか、誰が不利益を被るかは明らかなのに。こんな状態を放置はできません。お金の使い方、政治の方向を変えないといけないですね。
「デュアルユース」は、民生用にも軍事用にも使える技術のことと説明がありました。便利だなと思っている技術の背景や方向について、私たち自身がよく考えないといけないですね。
「国の政治に何か重大な変化や転換が起きるときは、その前兆として現れるのがまず教育と学問への干渉と圧迫である」(南原繁)との発言は、今の状況を如実に表していると思いました。
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随分前だが、ナタデココなる食べ物が爆発的に流行ったときがあった。日本が大量に買ってくれるとして、フィリピンではナタデココ農家が激増した。ところがブームは長くは続かず、ナタデココはたいして売れなくなり、多くの農家が破産した。需要がなければ売れないのは当然のことだ。
戦争があれば、武器に関係する企業は儲かる。設備も人員も大幅に増やし、業務を拡張する。ところが、戦争が終わってしまうとこれらは無用となる。それは困る。ある種の企業は、収益を維持し、増やすために、戦争を必要としているのである。
本書は、武器輸出の歴史、背景、現状、問題点を的確に教えてくれる好著である。どんな理屈を並べようと、武器のそもそもの目的が殺戮であることは、争えない事実だ。こんなものを持つ必要がなければ、それにこしたことはない。人間世界の現状が必要悪として武器の存在を認めざるをえないのならば、我々は武器とどのように向き合っていくべきなのか、本書はそれを考えるきっかけを与えてくれる。
武器の問題の難しさのひとつは、別の用途で開発されたものが武器にされてしまうことにある。例えば、米軍がベトナム戦争でスマート爆弾に装着したのはソニーのビデオカメラであり、湾岸戦争以降投入されているステルス機には、本州四国連絡橋が船のレーダーを攪乱しないよう開発されたTDKの塗料「フェライト」が大きな役割を果たしているとのことだ。
こうしたことに目を光らせ、歯止めをかけるのは政府の仕事なのだが、「デュアルユース」「防衛設備移転」(武器輸出のこと)などと言葉をもてあそび、オスプレイなどという粗悪な商品を買わされている現政権は、残念ながら人の命には大して関心がないようだ。
結局、防波堤は個々の科学者や技術者の倫理観のみなのだが、そんなものはとっくに放棄している科学者がいる一方で、少なくない人々がこの国のこうした流れに抵抗していることに希望が見いだせる。例えば新潟大学は、政府のくれる金に飛びつく大学や研究機関を横目に見ながら、武器開発に関する研究を行わないことを新たに申し合わせている。
もう一度言うが、武器は殺すためのものであり、ない方がよいのだ。間違っても金儲けの手段にしてはいけない。そうした途端、武器も、どれだけ効率よく人を殺せるかという性能も、必然的に自己増殖し、暴走するからである。子ども、配偶者、恋人、友だち、猫など、自分が大切に思う命が身近にある人には、ぜひ読んでもらいたい本である。 -
2014年4月、武器輸出三原則を47年ぶりに見直し。
三原則は長年にわたりアメリカと財界の圧力により変化を強いられてきた。
科学研究費と国防が結び付くと利権が自己増殖し、後戻りはできない。 -
武器に関する著者の懸念は正常な感覚だと思う.現役時代,防衛装備品の開発に携わっていたので,丸防の考え方,企業の思惑は十分に把握している.丸防が大学まで触手を伸ばし始めている状況は第5章に詳しくあるが,所詮丸防の技術水準はまだまだ低いのが実態だ.それを認識しているが故の行動なので,ある意味で取り返しのつかない状況が出てくることを危惧する.
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軍事研究禁止の原則において象徴的存在である15代東大総長、南原繁は「国の政治に何か重大な変化や転換が起きるときは、その前兆として現れるのが、まず教育と学問への干渉と圧迫である。」と警鐘を鳴らす。
デュアルユース(軍民両用)、対テロ・サイバーなどの安心安全の印象づけに、研究機関や企業は巧みに利用されてはいないか?
日本もアメリカのように科学の研究開発と軍事が「密接に結びついてしまう」国のかたちを選ぶのか?
今こそ『科学は人類の平和と福祉に貢献するもの』という言葉の意味を、市民ひとりひとりが深く考え行動しなければ。 -
☆無しかマイナスにしたい気分。
中立な立場で書かれた本ではない。公正さを保つという気概が感じられない。偏りが酷くて参考にならない。
徹底的に批判するだけなら誰にでもできる。
何もしないで口だけ…というのは無責任ではないか。
はじめに
第1章 悲願の解禁
第2章 さまよう企業人たち
第3章 潜水艦受注脱落の衝撃
第4章 武器輸出三原則をめぐる攻防
第5章 “最高学府”の苦悩
第6章 デュアルユースの罠
第7章 進む無人機の開発
あとがき
2016年7月初版発行 -
日本企業も、海外子会社が武器会社を買収することには歯止めがこれまでもなかった。
武器のファミリー化が日本で進んでこなかったのは、防衛省の天下り先が減るから。
フェライト
潜水艦には音の出ないポンプがある。ポンプを開ければ構造が分かるが、これは機密中の機密で、特許にもできていない。
当初アメリカは日本をオーストラリア政府に推していたが、後に同盟国ならどこでもOKというスタンスになった。
フランス製が採用されたとはいえ、それはフランスの原子力潜水艦を通常型に切り替えたうえで。これは設計がひじょうに難しく、7,8年はかかるとも言われている。
糸川ひでおも、チェコにロケット製品を売っていた。 -
東2法経図・開架 559A/Mo12b//K