ふたりの距離の概算 (角川文庫)
- 角川書店(角川グループパブリッシング) (2012年6月22日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041003251
作品紹介・あらすじ
大人気<古典部>シリーズ第5弾が文庫化!
春を迎え2年生となった奉太郎たちの古典部に新入生・大日向友子が仮入部することに。だが彼女は本入部直前、急に辞めると告げる。入部締切日のマラソン大会で、奉太郎は走りながら彼女の心変わりの真相を推理する!
文庫第5巻はアニメ版表紙とのリバーシブル仕様です。
感想・レビュー・書評
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古典部シリーズ第5作。折木たちが2年生になって、古典部に大日向友子が仮入部してくるのだが、突然入部できないと部室を飛び出していってしまう。折木は、マラソン大会で走っている間に、4月からの数か月を振り返ってみて、何故そういうことになったのかを考えてみる。相手の性格まで踏み込んでしまう、折木の観察力と洞察力は凄いけど、ある意味怖いというか、折木にとっても結構やっかいなものなのかもしれないなあと思う。ただ、人にどう思われようとあんまり気にならない性格は羨ましい。大日向友子さん、思い込みが強すぎる。今回は入部しなかったけど、いつか入部できるといいと思う。が、難しいだろうなあ。
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二年生になった奉太郎たち〈古典部〉の4人。
摩耶花は兼部していた漫画研究会を退部。
そして、仮入部していた一年の大日向友子が入部しないと言ってきた。
5月の末の「マラソン大会」の日、奉太郎は走りながら考え、過去を思い出し、事の真相を突き止めようとする。
前作で舞台となった「文化祭」と同様に、「マラソン大会」も高校生らしいイベントだけれど、奉太郎が走りながら推理するという物語の構成が、斬新で面白かった。
走るという単純作業の様子に加えて、「マラソン大会」の数か月前、奉太郎の誕生日に、大日向を含めた古典部の4人が奉太郎の家を訪ねてきたり、大日向の親戚が新しく開いた喫茶店に、モニター客として呼ばれたり、そこからの発展する奉太郎の推理が実にみごとだった。
大日向が退部したのは自分のせいだと思っている千反田のことを、奉太郎がどことなくかばって真相を突き止めているという空気が伝わってくるし、省エネ主義と言いつつ、奉太郎を中心に古典部の4人の絆が深まっているような感じがして、いいなぁ、青春だなぁと思ってしまう。
真相がわかったところで、人の気持ちにどこまで踏み込んでよいものか、このシリーズを読むと、やはりせつなくほろ苦さが残ってしまうけれど、甘さで終わらせないところがまたいいのかもしれない。 -
古典部シリーズ第5弾。
とてもとても平和なミステリー。
でもそれが読んでいて良い意味で
楽だなぁと感じます。
ミステリーなのに、何も考えずに読める!笑
第6弾も楽しみです。 -
古典部シリーズ再び。
長距離走という苦行のさなか、奉太郎は推理する。
勧誘らしい勧誘もしていないのに仮入部し、上級生にも馴染んでいたように見えた一年生はなぜ、急に本入部をとりやめたのか。
千反田えると彼女の間に何が起きたのか…
んもう、そんなの…
新歓で折木奉太郎先輩に一目惚れ♥→仮入部→高校生活、恋に燃えちゃうゾ♥→あれ、千反田先輩と奉太郎先輩ってもしかして?→思いきって千反田先輩に訊いてみた→「はい」→そっ、そんな…礼儀正しくて顔が広くてお料理だってパパッとできて、野菜や山菜の下処理まで詳しい千反田先輩相手じゃ勝ち目ないよ…→悲しいけど入部取りやめます!くすんくすん…
これで決まりでしょう!と思ったんだけど、米澤さんがそんなベタ甘展開を許す訳ないのでした…
今回も奉太郎の姉から目が離せない。目からレーザーを撃てる招き猫…私、気になります! -
2人の距離の概算という題名、概算って、人の距離はきっちりした数字で表すのは困難なので、ほぼ概算だろう。それを題名に持ってくるということは、「私気になります」
2人の距離はおそらく対人距離のことなのだろうと、正座をしたまま本書を手に取った。
4人とも2年になった古典部に新入生が入る。この新入生もひと癖ある。この新入生は大日向友子という名前だが、名前からして友だちの概念が一味違う。こんな時期もあったと懐かしさを感じる。
マラソン大会で千反田と大日向の間で何があったかを推理しながら走る奉太郎。後から来る古典部のメンバーを待つ体で話を聞いていく。時速7kmくらいで20kmは一般的にはジョギング程度だが、私はヘロヘロになる速さと時間だ。さすが高校生。
この物理的距離も意味を持つのか?
菩薩と夜叉の件はミスリードではないかと勘繰ってしまう。新規オーブンの喫茶店の名前を推理する場面は面白かった。
最後に題名の意味がわかった。 -
古典部シリーズ
もはや青春ミステリーじゃなくて、言葉の教科書みたいだった。語彙力が羨ましい。
☆3.5 -
再読。古典部シリーズで奉太郎が仲間たちのために文字通り奔走するなんて一番の変化球な気がする。ほろ苦い真相も里志と摩耶花が付き合ったらしいのも忘れてた‥
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ミステリとしては、もしかしたらシリーズで一番好きかもしれない。
作中に散りばめられたヒントに気づけるかどうか、という作りになっていた。
本格ミステリ好きとして、この作風は、楽しい。
また内容も、青春だな〜、って思えるような物語だった。
誰かを傷つけたり、誰かに傷つけられたり。
例えそれが当人たちの思惑ではなかったとしても、傷つけたり傷つけられたりしたほうは、自分が何かしてしまったんだろうか、何かされるようなことをしてしまったんだろうか、と悩むことになる。
大人になっても、もちろん人間関係の悩みはあるが、優先順位が仕事のほうが上である以上、仕事に対する悩みのほうがウェイトが大きくなる気がする。
友達との関係で悩めるのも学生時代の特権。
大いに悩め、若者よ。