過ぎ去りし王国の城

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著者 : 宮部みゆき
  • KADOKAWA/角川書店 (2015年4月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041028360

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過ぎ去りし王国の城の感想・レビュー・書評

  • 宮部さんの現代ものファンタジー。
    中学生が不思議な絵の中に入り込み‥?

    中学3年の2月、もう高校が決まった尾垣真は、ある日ヨーロッパの古城を描いたデッサンを拾う。
    絵の中に吸い込まれるように感じ、どうやら自分のアバター(分身)を書き込むと、その世界の中に入れるらしい?

    テニス部で「壁」と呼ばれ、友達らしい友達もいない真。
    美術部の城田珠美に、絵を描いてもらおうと思いつく。
    珠美は、女子にもっと露骨にハブられていた。
    その世界では森の奥に古城があり、城の中には女の子がいるように見えた。
    もう一人、パクさんと名乗る四十男も、その世界の探索を試みていたと知る。
    10年前に起きたある失踪事件が、関わっているのかも知れない‥?!

    それぞれに問題を抱えた3人が、事件の真相を知ろうとして、出来ることを探していきます。
    中学3年の終わり、進路が分かれる前の限られた期間での出来事。
    珠美自身の境遇は、そう簡単に解決できるようなことではないんですね。

    子供向けのファンタジーならば、もっと解決しやすい問題にして大きな爽快感を味わわせることも可能なはず。
    そこをやらなかったのは、重さを実感させる告発的な意味があるのかも。
    現実にもこういう家庭やいじめはあるでしょうから。
    けれども、共に冒険に乗り出し、他の人のために精いっぱいの勇気を出した経験、事態が変わることに力を貸せたという喜びは、奥深い自信となっていくでしょう。
    やや軽くまとめてあるのかと思えたけれども、予想より余韻のある読後感となりました。

    表紙の絵は、黒板に白墨で描いたものだそうで、すごくいいですね!

  • 久しぶりに宮部みゆきの本を手に取った。古城のイラストにアバターとして入り込むという、ゲームのようなファンタジー設定に惹かれたが、帯文句の「ネグレクト」「スクールカースト」といった社会問題がどのように絡むのか…正直おっかなびっくりしながら読み始めた。
    絵の中の世界と現実世界を行き来する、あり得ないと思いながらもワクワクする展開。平凡で地味な中三の真、同級生で変わり者の美術部員・珠美、絵の中で偶然出会う漫画家アシスタントの中年・パクさん。この3人がぎくしゃくしながらも少しずつ交流を深めていく過程に引き込まれていくのだが、さすがにいじめの凄絶なシーンにはぞっとした。そして、この非現実世界に、十年前の少女の失踪事件が絡んでいることがわかっていく。この少女に対するネグレクトもまた酷く、珠美に影を落とす家族環境も過酷で、シビアな現実に目をそむけたくなるのだけれど…なかなかに物語の展開が早く、3人が絵の中に入り込むのと同様に、自分もすっかり物語世界にどっぷりなのである。どんなに辛い状況でも、もはや目を背けることが出来なくなっているというか。
    どうして失踪した少女が絵の城に閉じ込められているのか。そもそもこの城の絵は誰が描いたものなのか。少女の過去と共に少しずつその謎が明らかになっていき、ファンタジー色が濃かった前半に対し後半はミステリー・SF的な展開になっていく。そのため、後半は若干内容を詰め込み過ぎたような…めくるめく展開に頭が付いていかなかった部分もあるが、ラストが切なくてとにかく泣けた。現実は甘くないかもしれない。真・珠美・パクさん、それぞれ置かれている状況は違うけれど…今が辛くても、どうにかやり過ごしながら、前を向いて歩いていけますようにと心から願う。少なくとも自分は、彼らの行いに勇気付けられ、背中を押された思いがした。たくさんの要素を盛り込んだ、スケールの大きなこの物語がどんな着地をするのだろうと読めなかったけど、読後はよいジュブナイルもののに出会ったなという満足感。
    話題の黒板アートの表紙も本当に素敵で、本書の内容にピッタリです。

  • 一番好きな作家である宮部みゆき。だが宮部ファンタジーは正直ミステリーには劣るんだよなといつも思っていた。結局は読むんだが。感想は、率直によかった。面白かった。ファンタジーでありミステリーであり、社会問題にも目を向けている作品。これだけの中身をこの量で収める宮部クオリティ。相変わらず半端じゃないな。そして今更言うまでもないが、この表現の素晴らしさ。あー満足満足。お腹いっぱいである。

  • 宮部さんの本は、情景が浮かびやすくその場に入っている感じがいつもしてたけど、この本は特にその感じが強くしました。ストーリーとも合ってすごく良かったです。

  • 特に可もなく不可もない中学三年生の男の子がある絵と出会ったことによって物語が動き出していく。
    いじめなどシリアスな問題が絡まり、お城の寂しい雰囲気もあり、重たい雰囲気が終始漂っている。
    協力して絵を攻略していく過程に引き込まれていったけど、最後の怒涛の展開、主人公と一緒に混乱し、蚊帳の外に出されてしまった感じ。でも、胸にストンと落ちたラストでした。

  •  時代物ではない宮部みゆきさんの作品は久しぶり。

     序盤からパクさんが出てくるあたりまでは、なかなか読み進められなくてダラダラと読んでしまった。ラストまで読めば、その丁寧な描き方は必要だったなと思えるけれど、序盤のスローテンポに比べて、終章は怒涛のように過ぎていき、一気読み。
    思わぬ方向に話は進んでいき、え?ええ?と頭の中で混乱が生じたまま終わる感じ。描かれている状況に理解が追いついていかない。終章をもうちょっと詳しく読みたかった。
    真と城田の数年後の後日談とか、伊音が語るこの物語とか、別の切り口からも読んでみたいと思った。

  • ファンタジーであっても
    さすがにぐいぐい読ませる。
    絵の中の城に閉じ込められてる少女
    どう展開するのかと読みながら
    そうきたか~!と膝をうちつつ
    なるほどね~うまいなぁ。
    と読了。

    少年少女の心理がなぜここまで
    細かくわかるのか、不思議でならない。

  • 絵の中に入り込む…。 夢のある設定だなぁと思いましたが、なかなか簡単にはいかないようで、絵にきちんと描きこまないと入れないとか、入った後のダメージが凄かったりとか、その辺りはあまり現実離れしすぎないように宮部さんが考えたのかしら。そして、絵の中のお城の中に少女を見つけて…。 主人公は推薦で進学先が決まった中学生の男女。宮部作品の中高生は大人びてしっかりした子が多いけれど、この作品の主人公も中学生にしてはしっかりしていると思います。話の展開は予想していたのと違っていて、正直「ん?」と思うところもあるのですが 、うまく決着したなぁ、という感じです。 こういう話はどう決着させるか難しい、それによって読後感が変わってくるから。

  • 途中までは想定読者年齢層から外れてるかなと思いながら読み進む。
    パクさんに出会い、伊音ちゃんにであったあたりから、俄然面白くなって読むスピードがあがり一気読み。
    不幸な現状を変えたいパクさんと珠美、原状にさしたる不満のない真の考え方の対比も面白い。
    珠美の自分の不幸でなく、他人を不幸から救い出す行動には頭が下がる。
    真の訳の「いっちゃった王国」には噴いた(笑)

  • ファンタジー詐欺っていってもいいかな!?
    絵の中に入れるって素敵展開なのに、そこがイマイチ活かされてなくて話は現実世界で展開していく。
    思わせぶりな古城も、どっかの現存する修道院だなんて。

    いやこれはこれでいいんだけど、タイトルでわーいとなったら、あれ?なんか違ったってなるよね...
    むしろこれファンタジー要素なくてもいいのでは、って内容な気がします。

    いじめとか虐待とかテーマが重いと、ファンタジー的逃げ道を絡ませるとすんなり消化できるのかも。

  • 1枚の絵から現在の子供達を取り巻く様々な問題とファンタジーが織り成す物語。現実世界で起こっている、学校での生徒間の問題、家庭や親子間の問題は重く深刻な内容だが、全体的にファンタジーの要素が強かったのか読みやすかった。親からネグレクトを受け、行方不明になっていた少女が見つめる大人、心の闇、描かれているお城が桃源郷でありたいことを如実に表しているものだと感じ取れる。お城の謎から現実世界に移り、伊音が自分と同じ辛い思いをしてる人を助けたいとNPOで頑張っている姿に心打たれたこと、安堵の気持ちがして良かった。

  • ★ペンネーム:A.M.11:00さんからのおすすめコメント★ 表紙の黒板の絵はアナと雪の女王の黒板絵でゆうめいなれなれなさんによるものです。小さい頃の冒険心をくすぶられる作品です!
    OPACへ ⇒ https://opac.musashino-u.ac.jp/detail?bbid=1000025404

  •  宮部みゆきさんご自身の作品名を挙げて印象を述べると、『英雄の門』の難解さと、『ICO』の消化不良を兼ね備えたような作品だろうか。長さが比較的手頃という点では手を出しやすいが、描き切れていないというか。大変偉そうですみませんが。

     学校では空気のような存在の中学生、尾垣真(しん)。家の用事で銀行に来ていた彼の目が、ある絵に吸い寄せられる。地元の小学生の絵が展示されている中で、その写実的な絵は浮いていた。小学生の作品ではないのは明白だった。

     その絵を持ち帰った真は、絵に入れるらしいことに気づくのだが、彼の「腕」では限界があった。そこで、真と同じくスクールカーストから弾かれた同級生、城田珠美の「腕」に頼ろうとする。気弱そうな彼にしては、思い切った行動に出たものだが…。

     簡単に言ってしまうと、絵の中を冒険する話である。この程度の荒唐無稽さは別に気にならないが、絵の成立過程と、作品世界のメカニズムが理解しにくい。その割に、冒険自体はあっさりしている。というのも、絵の中に長時間滞在はできないのだ。

     彼らがここまで躍起になる背景に、学校における境遇がある。帯に並んだネグレクトなどのキーワードに、覚悟して読み始めた。真はともかく、城田は家庭事情も複雑だった。要領よく立ち回るいじめっ子と、問題を大きくしたくない学校。十分辛いし腹立たしいが、そうした描写は少なく、やや拍子抜けした感がある。

     近作では『ソロモンの偽証』など、宮部さんが中学生年代を描く例は多いが、彼らはそれぞれ現実と対峙していた。本作ほど現実逃避しているのは初めてだ。それほど学校が辛い場所ということなのか。しかし、達観している2人だけに、その心理はうかがい知れない。最後にそういう方向に行くとは思わなかったが…。

     もう1人のキーパーソンについては触れずにおこう。これが3人の転機になるかどうか。うーむ、どうしても誤魔化されたというか丸め込まれたような気がする。それだけうまいとも言えるが、宮部みゆき初心者にはお薦めしにくい作品かな。

  • 宮部さんのファンタジーの話が好きで、読んだけど何となく中途半端。

    最後、マジック1本で終わるって現実感ありすぎな感じもしました。

  • 宮部みゆきさんだから。

    *図書館の所蔵状況はこちらから確認できます。
    http://opac2017.lib.kitami-it.ac.jp/webopac/BB50110054

  • 不思議な絵との出会いからこんな展開になるとは…流石です。この世界の伊音ちゃんを救うことができてよかった。

  • 宮部さんらしい、平凡だけど善人な主人公。偶然手に入れた不思議な絵の中に入れることに気がつき、物語は始まります。
    可愛らしいファンタジーかと思いきや、意外な方向に話は進んで行きます。かなり後半までパクさんを疑ってしまって申し訳ないです。

  • 異世界と現実世界を行き来する話。つい最近別の作者の異世界ものを読んでうんざりぎみではありましたが、こちらは一気に読めました。

  • 宮部みゆきは逃げません。世に満ちる悪意から暴力から、人の持つ厭な部分から、どうしようもない悲劇から。だから読むとしんどい思いもします。ああ、その箱を開けるのか、その思いを開陳するのかと。
    しかしただ露悪的に悪意を書き綴っているのではありません。打ちのめされるけれど、それがこの作品の目的ではありません。芯の部分には優しさがあります。だからつらいだけではない読後感があります。どうしようもないつらさの向こうにある希望を見せてくれます。それは作者自身の願いかも知れません。そしてつらさを書きながら希望を感じさせることは、物語が持つ力なのでしょう。宮部みゆきの作品には、そんな力を信じさせてくれるものがあるのです。

    偶然手にした古城が書かれた紙。その世界に入り込むことができると知れば試してみたくもなるでしょう。それも中学生男子としてはもちろん。他の宮部みゆきのファンタジーと同じく、ここでも現実と地続きの異世界が用意されています。
    まずは現実世界でのできごとがこと細かに描写され、その後異世界の冒険が始まる。そう思っていました。スクールカーストと称されるような学校内での鬱憤としたものが、異世界で晴らされるのかと思っていました。でも異世界で待っていたのは、余りにもつらい現実の結果に過ぎなかったのです。
    なかなか冒険が始まらないなと読み進めていたのですが、状況説明だと思っていた現実世界のできごとこそが主題でした。異世界というファンタジーは現実を描くための手段だったと知った時、世界はひっくり返らずそのまま目の前に突き出されます。その突き出されたものに対して、どのように立ち向かうのか。選択肢が示され、登場人物たちはそこから自分がしたいことを選びます。その選択の意味がわかる時、そして選択自体の意味がわかる時、その時こそ世界はひっくり返ります。そして向こう側にある希望に気付かされるのです。

  • 銀行のロビーで見つけた古城の絵。
    思わず真が持ち帰ってきてしまった絵は、不思議なことに、その中に入り込めるのだ。
    その絵の中に一緒に入り込む珠美。
    と、怪しげなおじさん。

    古城の中と現実は「過去」でつながっている。
    その「過去」は悲しい過去。
    いやいや、そんな悲しい過去なんて、「どこにでも転がっている」、「珍しくもない」、「よくある」、そう他人は言えてしまうもの。
    でも、当事者にとってはたった一人で大蛇に締め上げられ、大猿に襲われているほどの圧倒的な絶望感を持った耐え難いものだ。
    もっと苦しい人がいる、なんて決して思えないし、他人がそう言って耐えることを強いてはいけない。

    本書はファンタジーではあるけれど、万事がうまくいってめでたしめでたし、あー楽しかった、という物語ではない。
    一つが変わっただけで世界のすべてが変わることもないし、全員が救われるわけでもない。
    それはとても悲しいことに違いないけれど、救いがあるだけ、現実よりもちょっとマシなのかもしれない。

    かいがは古今東西で描かれ、それを題材にした物語も数多く作られてきた。絵とはそれだけ強い心が宿るもので、強く心を動かされるものだったからだ。
    その心の揺れが、嬉しい、楽しい気持ちだけであるならどんなに世界は美しかっただろう。
    しかし、そうではないから、人は怒りや悲しみ、苦しみを押し込め、それによって誰かが救われてきたのではないか。

    残念ながら世界は決して美しいものばかりではなく、綺麗事だけでは回らない。
    ただ、そんな世界に生きているからこそ、小さな救いが大きな救いに変わることもあると私は信じていたいし、その一端でありたいと切に願うのだ。

  • 吸い込まれそうな絵ってありますけど、これから精緻なタッチの静かな絵は怖くなってしまうかも。

  • 3.0 宮部さんのファンタジー。まずまず。

  • 久しぶりのイッキ読み!

  • 拾った?訳ありで持ってきてしまった?絵を眺めていたら、絵の中に入れちゃった!っていうファンタジーなのですが、この絵の秘密は?この絵を描いた人は誰?なんの為に?と色々な謎があるので、読んでてすごく楽しい!
    ただ、主人公の協力者のイジメ問題だったりが絡んできて、平凡な主人公がグルグルしちゃいます。

    ラストのスッキリ感はなんだろう?って思ってたけど、例えて言うなら、本を読み終わって現実に戻ってきた的?な感じに似てるのかなぁと、これを書きながらひとりごちてしまいましたw

  • ファンタジーの世界に引き込まれるのかと思っていたが、SFなのか、ドラえもんのドアのように、絵の中へ入り込んでいく姿は、興味深々であった。

    2人男女の中学生と、中年男性。
    しかし、読み進むと、そこには、自分の居場所がない子供が居ることに気付かされる。
    ネグレクト、いじめ、孤独、閉塞感、そんな弱い立場にいる人を、助けられるのか?

    過去の後悔にさいなまれないように、いい方向へスイッチをオンに入れて、二人は高校生活ヘと、踏み出す最後で、ホッとした。

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過ぎ去りし王国の城の作品紹介

早々に進学先も決まった中学三年の二月、ひょんなことからヨーロッパの古城のデッサンを拾った尾垣真。やがて絵の中にアバター(分身)を描きこむことで、自分もその世界に入りこめることを突き止める。友だちの少ない真は、同じくハブられ女子で美術部員の珠美にアバターを依頼、ともに冒険するうち、パクさんという大人と出会い、塔の中にひとりの少女が閉じこめられていることを発見する。それが十年前のとある失踪事件に関連していることを知った三人は、ある計画を立てる…。「今」を引き受けて必死に生きるすべての人へ-心にしみこむ祈りの物語。

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