望み (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.90
  • (238)
  • (449)
  • (243)
  • (37)
  • (6)
本棚登録 : 3856
感想 : 318
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041082096

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 久しぶりに、心を揺さぶられた。。

    息子が2人居るからか?
    いや、雫井さんの文章に引き込まれた部分も大きい。

    子供を信じたい気持ちと、生きていてこそ!の気持ちと、揺れ動く感情。

    息子さんは本当に優しく、良い子だった。夫婦の育て方は間違ってなかった。でも、不幸は突然にやってくる。事故だと言って片付けられない、なんともやるせない感情が湧いてきて、涙が止まらなかった。

    何か、子供を持つ親として、色んな意味で覚悟ができたと言うか、貴重な擬似体験をさせてもらった。

    子供を叱るのではなく、信じてあげようと思う。

  • 行方不明になった息子は、「加害者」なのか「被害者」なのか、待ち、望むことしか出来ない家族の葛藤を描いた作品。

    殺人事件が世間に大きく報道され、マスコミに執拗に迫られること、ネット上では少ない情報から個人を集中的に攻撃すること、親戚や周囲が加害者側の目線に立っていること等、リアルな描写に惹きこまれた。

    上記のような「社会からの攻撃」が、何も分からない家族を追い詰めていく。家族は、悩み、葛藤し続けるも、息子を信じて望む。望んだ先の結末に衝撃を受けた。

  • ✨あらすじ✨
    一登は建築デザイナーで、モデルルームとして自らの家を顧客に見せる作品としても活用している、自信とキャリアに満ちた父親だ。
    校正者をしている妻の貴代美と高校1年になる規士、中学3年生になる雅と4人で暮らしており、この普遍的な日々が未来永劫続くものだと思っていたのだが、規士がある事件に関与しているという疑いが浮上した。
    殺されたのは2人、その内1人は身元が判明。
    逃亡しているのは2人。
    でも行方不明者は3人。
    自分の息子が加害者なら、仕事の取引先も顧客も、何より自分が積み上げてきたキャリアも何もかも失ってしまうと危惧し、被害者であって欲しいと望む一登と、家族が殺人犯となれば高校受験に響くと悩む雅。
    それとは反対に、例え凶悪犯罪者としても生きていて欲しいと望む貴代美。
    それぞれの思いが交差する、少年犯罪とその家族の物語。
    *
    *
    ✨感想✨
    読後、なんとも言えない虚脱感に襲われました。
    体に力が入らない。
    自分の気持ちを上手く表現出来るか分かりませんが、今の気持ちを綴りたいと思います。
    *
    どちらに転んでも事態は最悪であり、被害者と加害者では180度も違います。
    一登と雅の気持ちも分からなくはないです。
    自宅には卵が投げられ、鳴り止まない報道陣のインターホンに耐え、職場や学校では白い目で見られる。
    まだ、被害者とも加害者とも決まっていないのに、ネットの嘘か本当かも分からない書き込み
    により、既に規士が加害者であると世間が思い込む。
    マスメディアも怖いですが、今の時代1番怖いのは、SNSだと思いました。
    *
    でも、わたしは貴代美の気持ちに寄り添いたいと思いました。
    自分の子どもは殺人なんてやっていないと母親である自分が分かっている。
    でも、そうなると自分の息子は殺されたことになってしまう。
    だから無理矢理自分の息子が凶悪犯罪者であって欲しいと望み、夫が失職した時のことを考え、自分が家計を支えると腹を括り仕事に集中する貴代美の姿に心打たれました。
    社会的地位を失うのも、志望校に行けないのももちろん辛いです。
    でも、家族を失うことの方がその何十倍、何百倍、何千倍も辛いことだと思います。
    死んでしまっては、もう何も出来ないんです。
    やり直すも何もないんです。
    *
    久しぶりの雫井脩介さん。
    『検察側の罪人』が名刺代わりの10作品に入るくらい自分の好きな作品ですが、本作もまた重く、考えさせられ、出口がなく、果てもなく泳ぎ疲れ、救いようのない作品でした。
    どちらに転んでも最悪な話を思いつくなんて凄いとしか言いようがありません。
    しかもその立場は天と地の差。
    揺れ動く家族のそれぞれの「望み」が行き着く先は…もし気になる方は読んでみて下さい。

  • 家族の本性が露わになったような作品。
    共感できる部分とできない部分とが入り混じるため、逆にリアリティがあった。
    親の干渉や兄妹での差……私も諸事情で直面している部分もあったので、読んでいて苦しい場面もありました。
    スラスラ読める文面ではあるものの、いきなり視点が変わるので混乱しながら読んだのが残念な部分。
    加害者か被害者……どちらが良いのかは選べないなと感じました。

  • 救いようがなく心苦しかった。息子が加害者が被害者か分からない中、どちらを望むかという難解な問に焦点を当てているのは新鮮だった。父、母、娘のそれぞれの思いは理解できるものの、答えが一つにまとまるものでなく、結末が明らかになってもやりきれない思いが残った。

  • 自分の子供が必ず「被害者か、犯罪者」ならどちらが良いですか?
    私は答えを出せません。この本を読んで、被害者の場合の苦しさも、犯罪者の場合の苦しさもどっちも見てしまった。とても胸が苦しくなりました。

  • 生きているけれど殺人犯、人を殺していないが死んでいるという、行方不明の息子への二つの可能性の間で苦しむ家族の様子は、大きな転換や衝撃はなかったけれど、全く退屈せずに読めた。
    ミステリー好きだからか、最初は早く事件の真相を知りたいと思っていたが、徐々に明らかになり、息子がどちらなのか迫るにつれて、どちらであっても救いがないその結末を知りたくないという気持ちにさせられた。
    生きていることを望む母親の気持ちも、人を殺すような息子ではないと信じたい父親の気持ちも、どちらも理解できるように丁寧に描写されていて、両親ともに救われるような結末を、気づけば望んでいた。
    両親が警察に真実を告げられるシーンは、まさに息が詰まる。
    タイトルの「望み」という言葉は、読後一層重く感じられた。

  • 心象描写や夫婦の似たような言葉のぶつけ合いが冗長過ぎて、途中いくらか流し読みした感は否めない…、し、テーマは何だろう?と最後まで本質を掴みにくい印象。行方不明の息子に抱く両親の「性差」なのか、加害者家族への世間のバッシングに対する疑問提示なのか、マスコミによる印象操作と思い込みの脅威なのか…。
    映画の原作という情報から入ったから(予告編で知ったので本編は観ていないけど)、自然と登場人物をキャスティングされた俳優・女優さんイメージで読んでいた。冒頭以降殆ど登場しない息子は、映画内でどのように描かれているのだろうか?夫婦の予想を映像化する形でちょこちょこ出てくるのかな、と読後は余計なことを考えた。重い話だったけどまとめはスッキリ。

  • 自分だったらどちらを望むか。子どもがいるわけでもないため、全てに共感できるわけではないけど、だからこそ自分が親だったらどう思うか考えさせられる。単純じゃない人間の感情がひしひし伝わる。映画も良かったです

  • 子ども2人と校正の仕事をする妻のいる建築家。息子が帰ってこなかった日、近くで殺人事件が起きた。息子の同級生が殺されたという。息子の行方がわからないまま、家族が壊れていく。
    息子は殺人犯なのか?それとも犠牲者なのか?

    読み進めていて苦しくて辛くて。父親と妹は、犠牲者であって欲しい、母親は罪を犯していてもいいから生きていて欲しい。どちらの気持ちもわかってしまう。もし自分がと思うと。もしも犯人だったら、もう自分たち家族は完全に崩壊してしまう。

    ラストは結局、息子は犠牲者で殺されていたんだけど。。。

全318件中 31 - 40件を表示

著者プロフィール

1968年愛知県生まれ。専修大学文学部卒。2000年、第4回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作『栄光一途』で小説家デビュー。04年に刊行した『犯人に告ぐ』で第7回大藪春彦賞を受賞。他の作品に、『火の粉』『クローズド・ノート』『ビター・ブラッド』『殺気!』『つばさものがたり』『銀色の絆』『途中の一歩』『仮面同窓会』『検察側の罪人』『引き抜き屋1 鹿子小穂の冒険』『引き抜き屋2 鹿子小穂の帰還』『犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼』『犯人に告ぐ3 紅の影』『望み』などがある。

「2021年 『霧をはらう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

雫井脩介の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×