二重生活

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041102336

作品紹介・あらすじ

大学院生の白石珠は、ある日ふと、近所に住む既婚男性、石坂史郎を尾行してしまう。大学の講義で知ったアーティスト、ソフィ・カルによる「文学的・哲学的尾行」が心に残っていたからだ。そして珠は、石坂の不倫現場を目撃する。他人の秘密を知ることに、ぞくぞくとした興奮を覚えた珠は、石坂の観察を繰り返す。だが徐々に、秘密は珠と恋人との関係にも影響を及ぼしてゆく-。大学教授への想い、今は亡き恋人への追慕。スリリングな展開、乱れ合う感情。ページを繰る手が止まらない、傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • はじめましての小池真理子さん、
    一気読み。
    仏文学の解釈以外は読みやすかったけど
    心情描写がちょっとしつこかったかな。
    結局、珠はなにがしたかったのか良くんからんけど
    人間ってそんな感じなのかなー

  • ジャン・ボードリヤール、ソフィ・カル、カミュを参照、引用している。

    「本当の話」ソフィ カルは、 ヴェネツィア組曲、尾行、本当の話、の3篇を含み、ボードリヤールの解説がある。

    主人公が仏文学の大学院生という設定で、
    カリギュラ、誤解の話題が出てくる。

    この手があったのだ。ある作品に敬意を表して、後を辿る。

    人が人を追跡することは、追跡している人自身を追跡することにもなるという。
    主人公が、登場人物を追跡することは、主人公が主人公自身を追跡するという記述になっている。

    追跡された人の二重生活だけでなく、追跡者の二重性を描写することによって、二重構造を多層的に展開する。

    著者が、作家、作品を追跡する際に、この手法は有効だろう。
    予め、追跡する対象を表明し、単なる模倣ではないという言い訳になる。

    仏文に拘ったのは、同居者が、仏文が専門だった直木賞作家、藤田 宜永のよい影響なのだろうか。

  • このミステリアスなカンジが小池真理子らしい。
    尾行、そのものではなく、背中がゾッとするようなカンジ。

    それは、
    しのぶにみつかったときであり、
    石坂にみつかったときであり、
    卓也に石坂と一緒だったタクシーを降りたことがみつかったときであり、
    篠原に話し始めたときであり、
    そして、最後に新しい対象者をみつけたときであり、、。

    妄想をすることは、自分の生活の中でもしょっちゅう。
    これだけは歳を重ねても変わらない。

    「育ち(がいい)」ということは「幼い頃に受けた愛情の問題」
    というフレーズはなるほどなあ、と。

    石坂に自分のことを話しだす珠には、ちょっと共感した。
    全く自分の生活と接点がない人に、自分のこの思いを吐き出したいことが時々ある。
    そんな対象者がいる珠が、うらやましかったりして。
    まして、美味しいワインと料理がご馳走になれるんだもんね。
    新しい対象者の話も、石坂にするんじゃないかな。

  • 面白かった!

    今まで読んだことのない話だったし、まったく先が読めなかったし
    尾行する側とされる側があんなふうに繋がったのも意外でとても面白かったです。
    小池真理子の本は数々読んできたがいろんな意味で裏切られた気分。

    結局すべてが元のさやにおさまったようで、きっと全然違うんだろうなあ。
    読み終えた後も主人公がどうなっていくのか想像せずにはいられない結末もとても良い。

  • 大学院生の白石珠は近所にすむ石坂史郎を尾行してしまう。
    大学の講義で知った「文学的哲学的尾行」が心に残っていたからだ。
    石坂の不倫を目撃し石坂の尾行を繰り返す…が同棲している卓也との関係がギクシャクしてきた。卓也がアルバイトで運転手をしている女優との仲を疑ってきている自分がいて、その気持ちが分かるような気がする。石坂に何故尾行をしたのか聞かれ本当の事を話した。石坂との会話も面白かった。

  • 初小池真理子。

  • WOWOWで門脇麦主演の同名の映画を見て、いやに官能的な映画であったので原作も読んで見たくなった。しかし原作はそれ程でもなくかえって微笑ましくなるような男女の痴話話になり、この小説の主体となる文学的・哲学的尾行は最後は人生に刺激を求めるための手段と成り果ててしまったようである。映画は門脇麦をキャスティングした時点でエロ路線を選んだのだと思うが、どちらかというと映画の方が面白かったかな。

  • 途中で読むのやめた。

    説明がくどいのは苦手。

    哲学的尾行。

  • 2016/09/26
    卓也にもうちょっといろいろエピソードがあるのかと思ってたけど、そこはあっさりしていてちょっと物足りなかった。
    映画も見たいなぁ。門脇麦はぴったりだと思う。

  • 映画化されているとはつゆ知らず、うっかり読んでしまった。
    猜疑心や嫉妬心て、ああ、面倒くさい。自分にそういうものが全くないなどときれいごとを言うつもりはないが、面倒くささのほうがはるかに大きいので、ここまで猜疑や嫉妬(それに情熱)に囚われることが不思議で、どの人物にもあまり入り込めなかった。
    そもそも恋愛小説は面倒くさい。どうしても浮わつくし。

  • 尾行するって結構大変なことだと思うんですよね。私ならすぐばれると思う。だからそれをする珠はやっぱり変わっているのか、文学的・哲学的尾行に向いているんだと思う。おもしろい小説だった。

  • たまたま図書館の返却棚から選んだ3冊のうちの1冊。全部で15冊もなかった中から。

    この本のように、楽に読める本ももっと間に入れたい。

  • 大学での授業がきっかけで、何気なく近所の住人を尾行してみた主人公、
    (なんとまぁ、悪趣味な・・・)
    思いがけず他人の不倫の秘密を知ってしまったことから、
    他人の生活を覗き見ることに目覚めてしまうというお話(笑)

    ずばり、テーマは
    『愛情』と『嫉妬心』、そして『秘密』という恋愛とは切っても切れないものばかり。

    SNSなんかを見るにつけ思うのだけれど、
    こんなに相手の私生活をこっそり見ちゃえるような面白いもの、
    私くらいの年齢になっていればまだしも
    バリバリ恋愛真っ最中な現役世代の若者たちは
    大丈夫なのだろうかと。。。

    知らなければ、嫉妬も疑いも持たなくて済んだのに
    なまじ知ってしまうから苦しくなる。
    まぁ、それも恋愛の醍醐味のひとつなのだろうけれど
    真っ最中の恋人たちにしたら、そんなこと言ってられないだろうし(笑)

    この主人公も、恋人が浮気をしてるのでは?との疑惑に囚われ
    深い深い嫉妬の沼に足を取られてしまいます。
    愛すればこその嫉妬心、
    きっと永遠のテーマなんでしょうね。

  • アタシも妄想したら止まらず(悪い方の・・・苦笑)、卓也は絶対浮気してるものと思ってドキドキしながら読んでました 笑

    ストーリーと関係ないけど
    疑う妄想より、信じる妄想をできるようになりたい 笑

  • タイトルから言ったら、家庭の主婦が、婚外恋愛と思ったら、全然違った。いい意味で裏切られた作品。
    ストーカーが社会問題になっている現代、こんなことやっていたら警察沙汰だろう。主人公は大学院卒業したら興信所とか、探偵なんかやったらええと思う。

  •  大学院でフランス文学を学ぶ白石珠は、教授の授業で聞いた「文学的・哲学的尾行」について興味をもち、通りをはさんで向かいに住む幸せそうな家族の旦那・石坂史郎を軽い気持ちで尾行してみる。するとすぐ、、石坂が奥さんではない女性と会っている姿に遭遇してしまう。

     ちょっとした出来心から始めた“文学的尾行”。次第にそれにのめりこんでいくものの、決してストーカーに成り果てるホラー話ではない。他人の生活を覗き、対象者やその周りの人物を見ているうちに、いつのまにか自分の境遇と重ね合わせてしまい、自分の感情まで揺さぶられ、心乱されてしまう主人公。心理描写がうまいんだろうなぁ。特に大きな事件があるわけでもないのに、次々読み進む不思議な魅力のある話だった。しかし、対象者にバレてその展開は驚き。

  • 文学的哲学的な尾行から 向かいのご主人の不倫をしってしまった珠だけど、どんどん俗っぽい好奇心で尾行を続けてしまっているような感じだった。小池真理子が書くから、なんとなく一つのストーリーになってる。でも、普通の話

  • 何の目的を持たず、ただ記録する行為って…ようわからん。
    他者の秘密を知ることにより、猜疑心にとらわれる主人公やそれぞれの男女のエピソードもあるあると思った。
    【2015.03】

  • こういう題材でも、小池真理子の手にかかると一つの世界ができあがる作者の才能と技量に脱帽する。現実にはあり得ない話しが上質な表現で、現実間直に昇華されてた。

  • 「文学・哲学的な尾行」を実践。
    そういう観点の尾行は疚しさや仄暗さがなく斬新に感じたのだけど、ヒマじゃなきゃできない。
    ラストまで読むとやはりこれは病だと思う。

  • 白石珠が実践した文学的・哲学的尾行。
    それは或る人物の実存を記録する行為に他ならないはずだったのだが。
    珠の思惑を外れて物語は転がり始める。

    珠が力説するようにその尾行に意味はなかったのか。
    たまたま後を追った男の秘密を追っているようで
    実は自分の心の奥深くに眠る物を追い求めているように思えた。
    父親との確執・同棲する恋人への疑い…etc
    人の心の闇は深い。

    単なる恋愛小説に留まらない展開に途中で読みやめることができずに一気読み。
    極めて興味深い1冊でした。

  • 好きでした。タイトルの意味をどう受け取ったらいいのかがちょっともやもやしたままですが、これは私の問題で。フランス文学専攻の大学院生、珠は、ゼミのテキストで知った文学的・哲学的尾行をしてみようと近所の石坂(夫)さんの後を付ける。すると石坂は不倫をしていた。そのことが同棲中の自分の彼、卓也の浮気への妄想を駆り立てる。石坂は珠のした尾行の意味が理解しがたかったけど、私にはよく理解できました。ただ、珠は結局ばれてしまって文学的・哲学的尾行とは言えなくなったけど。私もやってみたいと思ったり。珠の心の動きが手に取るようにわかり、ちょっと官能的で、良かったです。

  • ★4に近い ★3.7
    感受性が強くて頭の良い女性ならあり得るかもしれないと思った。
    珠(たま)は家庭の団欒を知らなかったからこそ、尾行のターゲットを彼にしたんだと思う。
    珠の『本気で恋がれる相手ではなく、心が安定してて一緒に過ごして落ち着く相手』をキープしたがるという自覚。そして、相手のそうだと知っている。

    内容(「BOOK」データベースより)
    大学院生の白石珠は、ある日ふと、近所に住む既婚男性、石坂史郎を尾行してしまう。大学の講義で知ったアーティスト、ソフィ・カルによる「文学的・哲学的尾行」が心に残っていたからだ。そして珠は、石坂の不倫現場を目撃する。他人の秘密を知ることに、ぞくぞくとした興奮を覚えた珠は、石坂の観察を繰り返す。だが徐々に、秘密は珠と恋人との関係にも影響を及ぼしてゆく―。大学教授への想い、今は亡き恋人への追慕。スリリングな展開、乱れ合う感情。ページを繰る手が止まらない、傑作長編。

  • 大学院の授業で強く興味を惹かれたのが、
    「文学的・哲学的尾行」であった。

    私も、知の快楽とか高尚な目的でなく
    単純に好奇心をそそられた他人を尾行したくなった。

    ただ、根気と勇気と、時間が要りそうなので
    実際行動にはうつせそうにない。

    元々人間観察は好きな方で
    カフェで隣にカップルなんかが居合わせたら
    会話に全神経を集中させてしまう。


    主人公珠の男性感に大きく共感するところがあった。
    いつも同じトーンで話し、決して感情をむき出して怒ったりしない、
    大海原の様な、常におだやかな人。
    私が大好きな人も、ざっというとこういった性格だ。
    そして、とてつもなく賢い。
    私はその人を心の友と思っている。
    心穏やかな毎日、それが私の望む生活だ。

  • 変わった切り口で面白い!と思ったのだけど、厳しめのレビューが多いのが意外。ちょっと癖があるから、好みは分かれるかな?設定は非現実的?なのに、対象者と自分を重ね合わせて勝手にあれこれ心配してしまうあたりは結構リアルな感じがしたけど。尾行がバレた後の展開は、現実にはそうはならないだろうけど、割と好きだった。男性よりは女性が好きそうな本。

  • 大学院生の主人公が講義を受けて感銘したという文学的・哲学的尾行を偶然出会った近所の男性に行う。その行為は意味ある尾行であると感じながら、知らず知らずのうちに自らの生活に影響を及ぼし疑心暗儀にとらわれてしまう。尾行に崇高な意味を感じ取らせ不倫小説で終わらせないところに小池真理子ならではの筆力を感じた。 

  • 妻子ある中年男性を尾行する大学院生の女性の話。
    ・・・となると、不倫?恋愛関係のもつれ?ストーカー?などとパッと思ってしまうけど、これはそのどれでもない。
    彼女の尾行には目的がない。
    称して、文学的・哲学的尾行。
    ある小説を題材にとった大学の講義でその言葉を知った彼女はある日見かけた男性の尾行を始める。
    彼は彼女が住むマンションの向かいの家に住む男性。
    出版社勤務で妻と一人の子供がいる。
    どこにでもいるような人物を尾行していく中で見えてくる男性の秘密。
    それはますます彼女を尾行にのめり込ませて-。

    まるで得にならない事に時間と労力を使う主人公。
    こんな話がちゃんと小説として成り立っているというのがすごい。
    文章がちゃんとしてなかったら、忽ち陳腐なストーリーに成り下がっていたと思う。

    この本に流れているのは、哲学的、そして文学的、かつ上品で静かな雰囲気。
    尾行という一歩間違えると犯罪・・・下世話な行為となるものから全くそういうものを感じさせない。
    それは主人公の女性の性格や雰囲気による所も大きいと思う。

    「他者の後をつける」という行為により「自分を他者と置き換える」。
    主人公の女性には同年代の恋人がいるが、尾行をする事によりそれまでは疑問に思わなかったような事が見えてくる。
    彼女は尾行という行為を通して第3者の目を得たのではないかと思う。
    人の日常を客観的に見ること、それは即ち自分を客観的に見る事にもつながっていく。
    彼女はその目でもって、現在の自分だけでなく、家庭環境、過去の恋人なども思い起こしてゆく。
    いつもながらさすがな文章力だと思いました。

  • この内容でこのページ数は、長過ぎ
    間延びしている

    それにしても、妄想できるって
    これも一種の才能だな

  • もっとぐちゃぐちゃした話かなと思ってたのになんかさっぱりしていた。
    もっと好きな作者だったと思うんだけどな。

  • フランスの女性アーティスト、ソフィ・カルの「文学的・哲学的尾行」を試みる主人公の珠。「生きていくために人は思索する」「厭世的」

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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