ムーンライト・イン

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 91
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041110782

感想・レビュー・書評

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  • 夜逃げ同然で一緒に過ごした仲間たちが、それぞれ新しい道を進んでいく。
    きっと、その先の未来も平穏じゃないと思うけど、一歩踏み出した時のその勇気があれば頑張れそうだね。
    逃げ場所って大事。
    また此処でみんなが再会出来ますように。

  • 年代、性別、国籍の違う男女がなぜ高原のリゾート地に同居しているのか。それぞれの抱える秘密が徐々に解き明かされる。リアリティーの無い設定なのになぜか頭のなかでは登場人物達が生き生きと動き出す。ページを繰る手が止まらない!

  • 非正規雇用の仕事を雇い止めにあい、気分転換に高原のある街へと向かった拓海は、夜に雨に降られてペンションのような外観の家を訪う。
    その家には、老いた男と、三人の年代の異なる女たちが、それぞれ事情を抱えて暮らしていた。

    一風変わった「シェアハウス」の物語で、明るく飄々とした面白みがあるところは中島京子さんらしい味わいだなあ、と思うのだけれど、そのあっけらかんとした明るさや時折刺激のある皮肉の裏側にあるのは、「女だから」こそ虐げられたり、辛い目に遭ってきた、という女たちの苦労であり、悲しみであり、憤りだ。

    女だからこそ辛い、というと、男だからこそ辛いこともある、と言われてしまいそうだけれど、やっぱり、一般的に見て「女だから」という理由で低い立場に追い込まれたり、高圧的な態度を取られたり、性的に嫌な目に遭う、という「女という性別が理由で辛い目に遭う」ことの方が圧倒的に多いだろうと思う。

    物語の中には、「オレは弱者だ」と威張るろくでもない爺さんや、卑怯極まりないやり方で逃げる男が登場するのだけれど、何て野郎だ、と思いつつも、実際いるよな、こういう人、とも思ってしまう。

    シェアハウスの在り方は一風変わっていても、その根底にある女たちの人生は、ああ、ある、全然一風変わってないよくある話じゃないか、と思うと、皮肉や明るさの向こうに、悲しみを振り払って憤り、拳を振り上げようともがいている女たちの横顔が見える気がする。

    ジェンダーとか、MeTooとか、そんな言葉は出てこないし、大上段になんて全然構えていないし、フェミニズムなど関係なく楽しめる小説なのだけれど、これは、そういう物語だ、と思った。

  • 自転車旅行の途中,雨宿りのつもりで立ち寄ったペンションならぬムーンライトイン.持ち主虹さんの他,足の悪いかおるさん,料理担当の塔子さん,父を探すフィリピン人のマリーがいて心地よい空間を作っていた.それぞれの抱える悩み,葛藤が絡まり合い助け合って解けていく,親子問題,介護の実情,海外の子供の認知の問題などさらりと物語の中に盛り込んであり考えさせられるところも多かった.
    そして,それぞれの新しい出発を予感させるラストで良かった.

  • マリー・ジョイがステキ。
    いい未来だといいなぁ。

  • これが読みたかった!ここ数作の中で一番好きだったかも。今までの話の集大成感がある。介護とか逃避行とか不思議な大家族とか。
    この人は本当に「失敗する関係」を描くのがうまい。それでも読後感が明るいのは何故だろう。
    今回食事シーンが多いのも良かった。天ぷらおいしそう。ムーンライト・イン、行ってみたいなあ。

  • 読みやすくて、先がいい意味で読めなくて、一気読みした。
    ここに住む人皆少し寂しくて、優しくて魅力的な人たちだった。皆ここでずっと心地よく住めるのでは、と思ったけど…
    最後はそれぞれきっといい方向に進むんだろうなと思わせるような終わり方だったけど、もう少し先を読んでいたかった。

  • 〇〇ハラスメントという言葉が次々に量産されては、〇〇ハラと略されてなんだかカジュアルに呼ばれていることには違和感があるものの、それだけ世の中のあらゆるいろいろな場面で、社会的身体的経済的その他もろもろ的に弱い立ち位置に身を置かざるを得ないがために、理不尽であってもハラスメントを向けられやすい人たち
    が居る。多くは男性からハラスメントを受けて苦悩している女性で、その姿をリアルに描きつつ、家族という、きれいごとでは済まされないややこしい関係とどう折り合いをつけるていくのか、ということをテーマにした作品だと思いました。もちろん強者対弱者だとか、まして男性対女性というような単純な構図になるような話ではないし、苦悩を抱える女性に寄り添い理解し共に歩こうとする男性たちも出てきます。出てくる人たちがみんな個性が際立っていて、会話が多く、それぞれ「らしい」言葉遣いが読んでいて気持ちが良かったです。

  • 人生は、人それぞれの考え方や感じ方捉え方が縦横に絡み合ってどんな方向にも向かう可能性がある。同じ方向を見ながら歩める人に出会えた人は幸せ。

    軽いタッチの文章のようでいて胸に切なく響く物語でした。

  • 訳ありの人たちが住む家、ムーンライトイン。
    拓海の成長はもちろん、高齢者の生き方とかすごく良かった。親子と言えど別人格があって、それぞれの人生がある。

    で、ここで終わり?
    虹さんとかおるさん、拓海とマリーさん、今後が気になる!

    拓海の兄嫁のサイドストーリーもあれば嬉しい。

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著者プロフィール

1964 年東京都杉並生まれ。小説家、エッセイスト。出版社勤務、フリーライターを経て、2003 年『FUTON』でデビュー。2010 年『小さいおうち』で第143 回直木三十五賞受賞。同作品は山田洋次監督により映画化。『かたづの!』で第3 回河合隼雄物語賞・第4 回歴史時代作家クラブ作品賞・第28 回柴田錬三郎賞を、『長いお別れ』で第10 回中央公論文芸賞・第5 回日本医療小説大賞を、『夢見る帝国図書館』で第30 回紫式部文学賞を受賞。

「2022年 『手塚マンガで学ぶ 憲法・環境・共生 全3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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