地球から来た男 (角川文庫 ほ 3-7)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041303221

作品紹介・あらすじ

おれは産業スパイとして研究所にもぐりこんだものの、捕らえられる。相手は秘密を守るために独断で処罰するという。それはテレポーテーション装置を使った地球外への追放だった。傑作ショートショート集!

感想・レビュー・書評

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  • これが星新一とは。
    孤独で寂しくて、しかも読み手の心の繊細な部分にじんわりと侵食して居場所を占めてしまうような普遍性を潜ませた物語たちで構成された作品集。
    知ってるつもりだった長年の知人の新たな一面を垣間見てひどく驚かされた感覚に近い。

    星さんっていえば、近未来が舞台のSF調で、ニヒルでドライでシャープでスタイリッシュで…という私の中の固定概念が覆されてしまった。

    たった数ページでハッとする結末をもたらす、いかにも星さんなショート・ショートの形式はそのままなのに。

    この短編集に収められた作品たちは、表題作「地球から来た男」や「夜の迷路」を始めとして、世界の片隅で生きる登場人物たちが誰にも明かせない心理を、ドライどころか、少し感傷的に、時に悶々と、でも、緻密なのに過不足ない絶妙なバランスで描写している。

    やっぱり星新一ほど、「稀代の作家」という言葉が似合う人はいないと、改めて思わされる。
    この短さで、着眼点、構成力、斬新さがあり、それをオチでまとめ上げるだけでなく、丁寧な心理描写まで盛り込むことができる力量があったなんて。

    刊行されている星さんの各作品集、全て読んでみたくなった一冊。

  • 10代に読んだ時は ただただ面白い読みやすい
    でした。 最近 地下鉄の中で読むとちょうど
    ひとつのストーリーを読み終わることがわかり
    片手に文庫を持ち 星新一タイムを楽しみました。
    ただ 楽しいだけじゃない いやそれよりも
    こんなに毒があったり 哀しさみたいなものがあったんだ!と以前とは全く違った感想。再読して 星新一の魅力を知ることができたような気がしてます。

  • 星新一氏が面白くないわけはない。
    初めて読んでから既に半世紀ほどたっているけど、全く古く感じない。

    ただ、改めて読んでみて、SFという衣をを被った「心理学 哲学」教本だったんだと思い立った。
    星新一特有の人を斜めから観察して、軽快に皮肉ってサラッと終わる。
    特別なことが起こってるとと思っているのは本人だけで、周りから見たら「よくあること」の一つと思うかも……。

    カバーイラストと挿入画は、片山若子氏。
    贅沢な文庫本でした。

  • よく読書をしない人におすすめする本として星新一の短編があがるけど、実際どんなものだったっけ?と思って読んだ。
    読みすすめやすくてオチもわかりやすくて、確かにこれはピッタリだなぁと思った。

    私は「包み」が好きだった。
    始まり方も、そこからオチまでの感じも、オチも、わかりやすくてすっきりしてる。

    ハラハラドキドキします!とか感動します!とかそういうことじゃなく、なるほどなぁとかへぇとかうんうんとかそういう小さな気持ちを感じるための本だと思う。
    ページをめくりやすい本というのが一番しっくりくる。

  • 中学、高校生の頃に触れ、そのスマートな文章と世界に引き込まれた。当時はブラックユーモアと風刺に面白みを感じていたが、歳を取りあらためて読みなおし、別の面白さを知った。孤独感やさまざまな淋しさを読後体感した。内容も現在と違和感がない。時代を超えて通じる作品。

  • 星さんの本は、はじめてでした。
    ついついふふっとなってしまったり、ほぉ〜っと唸ってしまうようなそんな話ばかりでした。
    幼少の頃にみた週間ストーリーランドを思い出しました。
    星さんはお亡くなりになってますが、ついさっきこの話を書いたの?ってぐらい私たちの今ある身近に感じる生活感が書かれてました。
    自分がもしこうだったらどうなるだろう…という
    日々の生活の中でたまにする妄想は、はっと我にかえる間も無くいつのまにか終わってるもので、つきつめたらこんな感じの1話の終わりになるのだろうとおもいました。きっと次私が妄想してしまうときは、星さんの力をかりちゃいそうな気がしました笑

  • 昭和の時代に書かれたSFショートショートなのにまったく古さを感じさせない。星新一さんが今の時代に生きて今の時代に書いたSFみたいな錯覚を感じた。この方はひょっとしたらほんとうにタイムスリップをしたりテレポートしたりする能力を持っていたのではないのですか!?いや絶対そうに違いない!
    私が好きなのは「包み」。ある青年が置いていったある包みにイマジネーションを誘発されて、次々と傑作を生み出していく画家のストーリー。この包みは画家にとっては結果としてはギフトととなるのだけど、置いていった青年本人にどうってことない品だったという。人生にはそういうことが結構あったりするのかもしれないですよね?
    「向上」はひょっとしたら…なんですが、デスノートの原作の方が星新一さんのこれを読んでヒントを得た、なんてこと、ないですかね?なんか、雰囲気が似てますよね。
    まぁたぶん、いうまでもなく、星新一さんのショートショートはたくさんの人達に影響を与えまくったんでしょうね。そして、これからも。
    凄く面白かったです。

  • 笑うセールスマンみたいな、皮肉めいたブラックジョークが面白かった。

  • 秀逸な作品ぞろいの書籍。

  • カドフェスの「かまわぬ」カバーが欲しくて購入(^^;)しかし星新一さんの作品はいつ読んでも違和感なく、色褪せないな~(*^▽^*)それとも自分が作品と共に古くなっているから、違和感ないのかな~(--;)

  • 初の星新一作品。
    初版が昭和58年というからビックリ。
    全く古さを感じませんでした。

    表題作の地球から来た男、ブラックユーモアがきいていて、のっけから引き込まれました。

    しかしどうもショートストーリーと言うものが苦手で。(苦手というか慣れていない)
    ペース配分が今一掴めず、勿体無い読み方をしたかも。
    でもとても楽しめたので他の作品を読んでみよう。

    表紙のイラストが好き。

  • 星新一さんの小説を読むのは数冊目だけど、最後に一抹の哀しさみたいなものが残るお話が多いのだな、と改めて。
    SFとか、超常現象とか、そういうものを扱ってるお話でも、人間的な部分がきちんと大事に描かれている。
    そしてSFでも難しくないからとっつきやすい。
    ホラーとは違う意味でぞくっとする感覚があったり。
    「包み」「密会」「あと五十日」がとくに好きです。

  • 星新一2冊目。初版は昭和58年なのに古さをほとんど感じない。普遍的な面白さがある。短い話の中で落ちがしっかりあるのがやっぱり凄い。特に好きなのが「包み」。巻末解説の桜庭一樹さんも同じだった。包みの中を想像して色々な絵を描いて有名になっていくという変わったサクセスストーリー。他にも各話ごとにSFのアイディアがあり読んでいて楽しい。

  • さすが、という他ない話の最後のどんでん返し。
    おもしろい作品ばかりだった

  • 「包み」が唯一誰も傷つかない話で好きだった。

    わりと似たような雰囲気、オチの話が多かった。
    最近流行りの作風の刺激的なオチをマイルドにした感じ。
    ディストピアに分類されそうなのもいくつかあった。

  • おれは産業スパイとして、ある研究所にもぐりこんだ。だが内部の警戒は厳重で、たちまちパトロールの守衛につかまってしまった。保安部門の責任者は秘密を守るために独断で処罰するという。それは、開発途上で放置されたテレポーテーション装置を使った、地球外への追放だった。気づくと、おれは野原に横たわっていたーー。奇妙な運命に翻弄される男達を描いた傑作ショートショート集。
    (1981年)
    — 目次 —
    地球から来た男
    夜の迷路
    改善
    もてなし
    ある種の刺激
    あと五十日
    包み
    密会
    住む人
    はやる店
    ゲーム
    戦士
    来客たち
    疑問
    向上
    ある日を境に
    能力

  • 短い文体、数ページに込められたプロット、最後に枠組みそのものをひっくり返す展開など、子供時代に楽しんだ星新一さんはやっぱり素晴らしいです。

  • 星新一の作品をまともに読むのはこれが初めてかもしれない。
    もっとSFっぽいものを想像していたのだが、ちょっと趣が違ったのが意外だった。
    表題作等を読んで、その毒気というかブラックユーモアに、変な喩えかもしれないが『笑ゥせぇるすまん』の喪黒福造を想起した。
    ある種社会を風刺したそのアイロニーには小気味よく、古さを感じさせない洗練されたセンスにはさすがとしか言いようがない。

  • 初めて読んだ星新一作品。

    読んでいる間は、ほんの一瞬、今いる自分の世界とは違う、別の世界へ意識が飛び、不可思議な出来事を垣間見ているような気分になりました。

    さも当たり前のように行われている会話や動作には、読者の視点では何とも奇妙で不可解なことばかりなのに、実際には、こんなことが日本の何処かで本当に行われているんじゃないか?と思うほど現実味を帯びていてこわい…!
    淡々と語られているのがさらに拍車をかけていて…
    怖いもの見たさなのかも…?
    いつの間にか、星新一ワールドに
    どんどん惹き込まれていました。

  • 定期的に読みたくなる星新一ショートショートシリーズ。気楽に読めるし、感心するというか納得させられるような面白さがある。好きな本の作者は?と聞かれたら間違いなく星新一と即答で答えると思う。星新一の著書をいろいろ読んで、悪魔や宇宙人のたぐいや近代化が進んだ未来の話などよく出てくるテーマに気付くようになってきたけれど、それを飽きだと感じさせないのもすごい。個人的には「あと50日」「包み」「戦士」が印象的だった。

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著者プロフィール

1926 - 1997。SF作家。生涯にわたり膨大な量の質の高い掌編小説を書き続けたことから「ショートショートの神様」とも称された。日本SFの草創期から執筆活動を行っており、日本SF作家クラブの初代会長を務めた。1968年に『妄想銀行』で日本推理作家協会賞を受賞。また、1998年には日本SF大賞特別賞を受賞している。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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