ドグラ・マグラ(下) (角川文庫 緑 366-4)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 557
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041366042

感想・レビュー・書評

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  • 面白い。ここにかかれていることは一部事実であると感じる。特に赤ちゃんが母親の中にいる間に、今までの人類進化の課程を追体験するというお話は事実ではないかと思う。

  • 上巻のレビューに「どうも中だるみを覚える」部分があったと書いた私は、何もわかっていなかった。
    この本は、読むのが面倒であることすらもひとつの意味を持つ小説なのだ。主人公呉一郎が自らの記憶を喪っているため、事件の輪郭がぼやけたまま物語が進んでいくのと相似形をなすように、上下巻700ページ弱を手繰って行くうちに、私たち読者の物語の記憶もぼんやりとしてくる。
    ところがそんな「リーダーズ・ハイ」の状態で、結末は突如宙ぶらりんに投げ出される。そして読み終わった後でふと思うのだ。
    結末どころか、私は何もわかっていなかった。

  • なんだか色んなことを盛り込まれて本筋を何度も見失ってしまった。
    筋だけ追えば単純な話しだと思うのだが。

    映画化するなら監督はデビッド・リンチが最適。

    何はともあれ謎が解明されてホッとした。
    ただW氏の目的がイマイチわからないまま。

  • 初出:1935(昭和10)年

    読んだら精神に異常を来たす?日本小説の『三大奇書』とは?

    人間の細胞は30兆個(現代では一般的には「60兆個」、範囲としては60〜100兆個とされている)、人類20億人とされた時代。←これは事実。
    精神障害者(疾患者を含む)に対する虐待の古今東西の歴史。←これも事実。

    主観的時間こそ絶対、記憶は個々の細胞に宿る、精神遺伝説、夢の原理、・・・。
    「奇書」と銘打っているが、文章そのものは読みやすく、筋が通っている。
    そして、描写が詳細で具体的という、「洗脳文章術」に出てきた手法で、説得力のある物語になっている。
    昭和10年の時代背景から、差別的表現が満載されている。そして「血統」が子孫を精神的に支配して行くという考え方。DNAが遺伝子であり、物理的な遺伝に影響するということが証明されていなかった時代、仏教の輪廻転生を全面に押し出している。「犯罪者の血統は遺伝する」という観点からすれば、「黒死館殺人事件」と共通するものがある。

    さて、ネタバレを以下に。

    ・文章構造
    ブーン→「ドグラ・マグラ」(リカーシブ)→ブーン(リピート)
    M博士の資料開始:19%〜終了:66% (全体の47%を占める)

    ・主人公の名
    これが初めて登場するのは、ページ数でいって全体の42%のところである。もっとも、主人公が実際にその名なのかはまだ本人は疑っている。

    ・二転三転する結末
    最終的には、結局自分自身の過去の生活の記憶が描かれなかったわけだから、最後の「胎児の夢」が結論である。事実、「巻頭歌」にも出てくる。そして先祖の行いや記憶がインプットされていく経過であった。これが「心理遺伝」であり、出生後潜在意識に潜り込んでしまう、という理論(ドグマ)。

    ・文章に出てくる「エロ・グロ・ナンセンス」・・・昭和10年にすでにこの言い回しがあったとは。
    グロ・ナンセンスは出てくるのだが、一通り読んでもエロに該当するものが見当たらない。しかし、実はこの物語の冒頭から始まる描写が「エロ」(アナロジー)であったのだ。童貞であることからくる赤面、牛乳、妊娠中の性交と母体のエクスタシーからくる突然の幸福感。赤く太い腕、W博士の長身と小さな籐椅子・・・。

    ・「ブーン」について
    最初のページに「ボンボン時計」とハッキリ書いてある。普通、時刻を知らせるのなら「ボーン、ボーン」だろう。だからこれは「水中で聞こえる音」を意味しているのだろう。そして、この「夢」が1時間の間に見られたものであることを示す。「前よりもこころもち長いような」ブーンとは、主観的な時間経過が現実の(体外の)時間経過に近づいていることを表わしている。

    ・何番目の「夢」か
    主人公が見ている「胎児の夢」は、前の世代かその前の世代の祖先が経験した記憶である。だから、M博士とのやりとりと出来事、その後また何年もたった後の「遺稿」を確認することになる。Kの血統はGに始まり(ラスト)、代々Kとして引き継がれるが、K.Iの父親はM博士でもあるので、その経験は特に詳しく「心理遺伝」し、物語の大部分を占める。ありありとした「フルカラー3D映像」もそれによっている。
    しかし、主人公本人はまだ生まれていないのだから、名前はまだない。だから、自分についての記憶も名前も空白なのである。


    産業革命による「唯物資本主義」の時代を否定して、唯心論を説く著者の父親は九州の大物右翼である。「国体を憂う」という文章も出てくる。戦前の昭和時代は心霊現象の研究が流行り、まじめに議論されていた時期がある。

  • 堂々巡り。読み終わった後には頭がくらくらするような感じ。わかったようなわからないような、奇書というのにふさわしいと思う。びっくりしたのは、こんな古い本にベターハーフという言葉が出てきたこと。

  •  とかく圧倒的な構成・物語と、読み手を泥酔させる文体を兼ね備えた超一級の小説です。「精神に異常をきたす」とか日本三大奇書とか言って、神格化して距離を置いてる場合じゃないですよ!

  • すごくインパクトがあったはずなのに内容を思い出せない不思議。
    まさに悪夢ですね。

  • 「心理遺伝」をテーマに書かれたミステリー小説。最初のほうは、事件がなんなのか、がわからず進んでいき、「脳髄論」なるものや「胎児の夢」といった論文調にストーリーの重大な伏線が張り巡らされていく。順を追ってなんとなく、事件が解決していくかんじだった。すっきりしないことはたしか。また、『ドグラ・マグラ』の意味も全く分からなかった。

     中身で語られたものとしての「脳髄論」だったり「胎児の夢」等といったものは説得力があるものに感じた。その表れの一つが、デジャブと呼ばれるものだったりするのかな、とかんじた。ただ、物語で出てきた呉青秀の芸術・美に対する妄執や正木先生や若林先生の研究に対する執念には恐怖をかんじた。しかし、現実を見てみるとマッドサイエンティストと呼ばれる人々や理系の教授にはこのような人がいるのかな、と思ってしまった。そして、「胎児の夢」は胎児の成長過程をきれいに理論づけているものではないかと思ってしまった。さらに、人間すべてが精神異常者としての資質を持っているという点も肯定せざるを得ないと感じた。

     日本三大奇書と呼ばれているだけあって、結論というよりも本当の犯人や研究の目的、その後のことなどを描いていない事がそういわれる由縁なのではないだろうか。

  • ふと目が覚めると記憶喪失! 隣の部屋には絶世の美少女! 博士が言うには彼女は僕の従姉妹かつ許婚しかも僕にぞっこん☆LOVE! ただし全編を通じて舞台は精神病院だし登場人物は自分を含めて全員気違い!! っていう最高傑作。

  • とても面白かった!すごい面白いんだけど、正直読みにくい。そこが良いんだろうけど。。。
    10年推敲しただけあって内容はとても重厚。そんじょそこらのミステリーよりはよっぽど面白いし、意表をついた展開が読んでて気持ちいい。途中背筋がぞっとするシーンもあり、さすがは三大奇書といった感じ。
    なんか最近面白い小説にであってないなーと思う人に進めたいです。
    あ、表紙、すごくいいですよね。

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著者プロフィール

1889年福岡県に生まれ。1926年、雑誌『新青年』の懸賞小説に入選。九州を根拠に作品を発表する。「押絵の奇跡」が江戸川乱歩に激賞される。代表作「ドグラ・マグラ」「溢死体」「少女地獄」

「2018年 『あの極限の文学作品を美麗漫画で読む。―谷崎潤一郎『刺青』、夢野久作『溢死体』、太宰治『人間失格』』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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