- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041437179
感想・レビュー・書評
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多喜二まじいいやつ
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名著「蟹工船」を残し、昭和8年に警察によって取り調べ中に虐殺された小林多喜二の母、セキ。
秋田の貧しい農村で生まれ育ち、13歳で結婚したセキが育てた子供たちはそれぞれが明るくやさしかったが、中でも多喜二の母や兄弟たちへのやさしさは特別なものがあった。
正直、冒頭の辺りでは、秋田なまりの方言の語りが全編続くのか、読みづらいなぁ…と思ったが、すぐに気にならなくなった。セキや多喜二をはじめとした登場人物たちの朴訥としていながらも力強い生き方がよく伝わってきた。特にセキと多喜二がお互いに寄せる信頼が清々しい。
「蟹工船」、実は読んだことがないのだが、その題名と時代の持つ暗澹とした雰囲気からはかけ離れた明るい家庭で多喜二が育ったことが意外であった。 -
死因・心臓まひ。実は特高警察による過剰な暴行が原因で、小林多
喜二は築地署で命を落とした。
その多喜二の母が本書の主役である小林キセ。88歳のキセが自分の生い
立ちから息子・多喜二の死、その死後の生活を読み手に語る。
生まれは秋田県角館。貧農であった生家から嫁いだ先も、貧困にあえぐ
一家だった。
明治のこの時代、東北地方の貧しさは今とは比べものにならない。家族の
生活を支える為に娘たちは人買いの手に渡される。
そう、あの頃は普通にそんなことが行われていたんだよね。女性が学校に
行くことすら叶わなかった時代だ。
貧しいながらも温かい嫁ぎ先、優しく思いやりのある夫。そして子供たちに
囲まれた幸せな頃もあった。
それなのに、親思い・兄弟思いの優しい孝行息子は小説を書いたことが
原因で無残な死を迎える。
「そうそう、多喜二がよく言っていた話があったけ。
昔々、仁徳天皇っていう情け深い天皇さんがいたんだと。お城の上から
眺めたら、かまどの煙が、細々と数えるほどしか上がっていなかったんだと。
それで天皇さんは、国民はみな貧乏だと可哀想に思って、税金ば取らん
ようになったんだと。したらば、何年か経って見たらば、どこの家からも
白い煙が盛んに立ち昇っていたんだと。天皇さんは大喜びで、国民が
豊かになったのは、わしが豊かになったのと同じことだって、喜んだ
んだと。
この天皇さんと、多喜二の気持ちと、わだしにはおんなじ気持ちに思え
るどもね。天皇さんとおなんなじことを、多喜二も考えたっちゅうことにな
らんべか。ねえ、そういう理屈にならんべか。天皇さんば喜ばすことをして、
なんで多喜二は殺されてしまったんか、そこんところがわだしには、どうし
てもよくわかんない。学問のある人にはわかることだべか。」
小説を書いただけで殺される時代だった。しかも、死因さえも誤魔化され、
特高を恐れて司法解剖を引き受ける病院も医師もいない時代があった。
日本の暗黒の時代は、決して癒えることない哀しみを抱えた母を生み
出した。
セキは文盲であった。それでも獄に繋がれた多喜二に手紙を書きたくて、
ひらがなを覚えた。同じように文盲だった野口英世の母・シカが、息子に
金釘流で書いた手紙のことを思い出した。
貧しい家に生まれ、学校へも行けず、子守りで駄賃を稼ぎ、年端も行か
ないうちに嫁ぐ。
きっとセキの時代には多くあった女性の生き方だろう。ただ違ったのは、
セキの息子が小林多喜二だったことなのだろう。 -
貧困の東北の農村から豊かさを求めて北海道に渡った家族。口減らしに身売りされ体でお金を稼ぐ娘たち。出稼ぎに出たきり戻ってこない父親。入ったらそれきり出て来れないタコ部屋の過酷な労働に耐えきれず死を覚悟で脱出しようとする人たち。小林多喜二の文学を読むにあたって参考になればと読み始めた本だったが、それ以上に日本の歴史の裏側を見せつけられて衝撃的だった。人権がゴミのように扱われていた。その人権を守ろうとした人が事もあろうに「国」によって弾圧されていた。その歴史的事実は隠蔽されてはならない。幼い頃のセキが親切にしてもらった駐在さんの記憶と彼女の息子を拷問で死に至らしめた特高警察の対比がすごく印象的だった。
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共産党弾圧のむごさ、キリスト教、母の愛と異なるテーマがまとまっていて、最後の結末は引き込まれて一気に読んでしまった。
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小林多喜二の母の語り調に記述されています。多喜二の優しい人柄や清潔感にも感動しますが、なにより近い過去に日本にも今の北朝鮮のような人身売買や貧困が現実的な問題としてあったことに気付かされて驚きます。
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多喜二の時代では、政府の意にそぐわない考え方は排除されていた。本書を通し、現在、言論の自由が保障されていることを本当によかったと実感した。
しかし、現在でも自分の意見を自由に言えない国もあるんだろうなと思うと、少し恐ろしい気持ちになった。
<あらすじ>
小林多喜二の母、小林セキが多喜二について語る。多喜二が生まれてから拷問にかけられて殺されるまで、その死後。 -
相当ベタな本ですが…(何
と言いながら好きな本です(更何
小林多喜二の母親である小林セキの半生(と言っても多喜二が死ぬまでの)を、セキの語り口調で書いた作品。
三浦綾子なので「貧しい者、弱い立場にある者に共感を寄せる」宗教色は強いです。
ですが、三浦綾子ならではな文体。子供をひたすら信じて想う母親の姿は涙なしには読めないでしょう。
小樽市文学館も北海道を嫌っていた石川啄木色を強めるのはやめて、収蔵庫に幽閉した多喜二のデスマスクをもう一度展示室に置いて、もっと小樽に深く関わった作家を大事にしてくれよー…。
とか思いつつ…。 -
読み助2011年1月26日(水)を参照のこと。
http://yomisuke.tea-nifty.com/yomisuke/2011/01/post-933a.html -
110102購入。110109読了