遠野物語―付・遠野物語拾遺 (角川ソフィア文庫)

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  • 角川学芸出版
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本棚登録 : 1984
感想 : 120
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043083206

感想・レビュー・書評

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  • ・遠野の人々は、動物も人間のような感情を持つ畏敬すべき存在、だと考えていました。

    雌狼が子供を殺され復習にやってきた時、素手で応じる猟師の話があります。
    子供への愛情から襲ってくる狼に対し、武器を持って戦うのは卑怯だと考えて、猟師は自分のワッポロを脱いで腕に巻き狼と対峙しました。その後、狼も猟師も深い傷を負ってまもなく死んでしまいます。
    文明の利器である鉄砲で野生動物と向き合うのは、ある意味では卑怯で、
    狼も人間も野生動物で、只の動物だとなった時には、素手と素手で戦うのが、最も敬虔な勝負というふうになるのだろうと思いました。
    一方で、猟師であるならばより効率よく狩ればよく、鉄砲を使わず命まで落としてしまうのはナンセンスだと考える人もいると思います。

    けれどもこれは現代人にとっては最も見えにくい(理解しがたい)、「狩猟民の精神」が垣間見えます。文明の利器によって人間はある程度、自然に勝ち、その効率の良さに甘んじてしまいがちですが、たとえば自然の猛威に触れ自然にはまるで敵わないことを思い知った時、人々のこれまでの生き方、在り方さえを問われると思うのです。
    その時、「遠野物語」は非常に大きい意味のあるものだといえて、人間が人間だけしかいないというそういう世界ではなくて、動物とも自然界ともバランスを取りながら慎ましく生きていく、現代の中では無意味に思われがちな事でも全体として大きく見据えたとき、遠野の人々の考えから学ぶことは一杯あるのだということを知りました。

  • おしらさま、座敷わらし、さむとの婆・・・大好きな遠野。曲がりやの主人の囲炉裏を囲んだ夏がよみがえります。学生時代、何回も遠野を訪れ、物話の場所をひとつひとつたずねました。やさしい暖かい方言・・。柳田さんの、この本は民俗学だけでなく、不思議な世界や、自然への畏敬がぎっしりつまっています。いつ読んでも、どのページをみても、感慨深い!日本の良さがここにあります。

  • 昔話が好きなので、面白く読めました。
    読む前は怪談系のお話が多いのかと思っていましたが、こどもの遊びや、地名の由来、初めて飛行機がこの地方の上を飛んだ日の話などもあって、思っていたよりも内容が多彩でした。
    昔はこういったいろんなお話が親から子へ、子から孫へと口伝されていたんだなぁ。
    将来自分にこどもができたら、こういった昔話をたくさん読んで聞かせてあげたいな、と思いました。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「思っていたよりも内容が多彩」
      どうしても今の私達が読むと怪異譚の方がインパクトが強いですからね、、、纏めてなかったら日常の話は消え去ってい...
      「思っていたよりも内容が多彩」
      どうしても今の私達が読むと怪異譚の方がインパクトが強いですからね、、、纏めてなかったら日常の話は消え去っていたでしょうね。
      2013/03/04
  • 柳田国男の民俗学書として、非常に有名な本。前半の「遠野物語」は文語で書かれてますが、この版に追加されてる「遠野物語拾遺」は口語です。なんか、解説本とかもちょこちょこ出てるみたいですが、基本的な日本語力があれば解説なんぞ読まなくても難なく読破できます。

    遠野に伝わる民間伝承や物の怪、神様、山で起きる不思議などについて、数行からなる章の中で簡潔に、でも分かりやすく「伝承」しています。解説にもある通り、民俗学者である柳田国男が、自説を容れたり勝手な解釈を施すことなく、伝承を口述した方の話した内容をそのまま記していることで、読み物としても面白いし、民族学上の記録としても貴重なものになっているのだと思います。

    一つの教養として、触れておくに越したことはないと思います。
    作品としては前後するけど、この内容を読んでおけば、きっと『うしおととら』がもっと面白かっただろうなー。

  • 土俗・風俗を詳細に集められた遠野の物語

    民俗学の原点…?

    わずか数行の話を集めて、編纂されているが
    郷土史とか歴史に興味が薄い私だが
    読みたくて、ずっと探していた。

    夏休み期間で、中高生の参考にされるのか
    文庫の新版を書店で見つけた。
    暫く手元に置いて、じっくり読み返したい本です。

    各地で、パワースポットとか霊感スポットが
    人気の季節でもあるが、オシラサマ、座敷わらし、管キツネ…
    最近映画の題名になったデンデラ等の、妖かしや、ものの化、
    人々の暮らしが伺われて、200数頁に満ち溢れている。

    昔人が、自然や暮らしの中で語りつたえた話には
    合理性を超えた、奥の深さを感じる。
    関連がないが、京極夏彦作品を連想した。

  • 単なる奇譚集ではない、民俗学の最初の一歩なのでしょう。とはいえ、不可思議な話ばかりで、引き込まれてしまう。

  • 明治はまだ人の寿命が短く(とはいえ兵役や戦災で死ぬことはまれで)生と死が近かった時代。山道に馬の屍体があり「これの皮が欲しいが、取ると狼が付け狙って殺されることになるだろう」と伯父が言うなど狼·熊、化かす狐が身近。殺人の祟りで児が皆ある年限で死ぬといった怨念話も。活字で読んだら怖いが、聞き取り調査で読み書きできない語り手から採取する時は普通の話題(当時録音は困難)。文語記述が簡潔で内容にマッチし、グリム童話や、著者の指摘・対比する今昔物語と訣別して「これは現代の話である」と序文で断定される。民話や民謡は作ろうとして作れるものでなく、個人でない集団の無意識が自ずと形をなしていくのかも知れない

  • それぞれの逸話が独立している上に数が物凄いので、暇つぶしにめちゃくちゃいい〜〜…と思ってたら
    予想以上に一個一個面白くて時間溶けました

    もっとはよ読めばよかった

  • 慣れなくて、読むのに時間がかかったが話が色々入ってた面白かった。
    人は呆気なく死んでしまうのねと感じる。

  • 記録に残してくれたことが功績

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著者プロフィール

1875年生。民俗学者。『遠野物語』『海上の道』などの著作により民俗学の確立に尽力した。1962年没。

「2022年 『沖縄文化論集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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