村田エフェンディ滞土録 (角川文庫 な 48-1)

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  • / ISBN・EAN: 9784043853014

感想・レビュー・書評

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  • 梨木香歩を読んだのはこれが初めて。読む前は旅行記+青春小説みたいな物を想像して期待してたけど、途中からスピリチュアル要素が入り込んできて正直読むのがつらかった…。そういうの興味ないのよ…。でもそれを乗り越えて読破して良かった。村田くんがイスタンブールを思い出すラストシーンに心を打たれます。

  • 村田が日本に帰る前の夢
    「その夜、変な夢を見た。
    •••私は•••気心が知れるまでの間なのだ、若しくは全く気心が知れぬと諦めるまでの間なのだ、殺戮には及ばぬのだ、亜細亜と希臘世界を繋げたいと思ったのだろうが、もう既に最初から繋がっているのだ、見ろ、と懸命に説いている。」
    多分、ここのアレキサンダー=(諸々の都合で動くという意味での)国、殺戮=WWⅠ、「最初から繋がっている」=イスタンブールで過ごした日々から出した村田の結論・感情
    なんじゃないかなと思いました。

    鸚鵡の口癖は未だに謎です。

  • 梨木さんの本はどれも、最後に心のシーツに重しをストンと落とされたような気持ちになる。

    読み方によっては、青春小説、ファンタジー、色んな捉え方ができる。曖昧なカテゴリーって意味では幻想小説かな?

    村田君の夢の中で争う動物は、それぞれの国の『神』、言いかえれば『文化』がシンボライズされたもので、「滑稽だけどそれが歴史なんだなぁ」って興味深くもある。

    読んだ後、博物館に行きたくなるような作品。

  • 第一次世界大戦がはじまる前の時代、考古学を学びにトルコへ渡った村田氏の見聞録、のようなもの。

    民族とは何か、信仰とは何か。
    文化とは何か、国とは何か。

    からくりからくさでも考えさせられたことを
    この本で再び考えさせられた気がする。

    日本人て何なのだろう。
    日本人の基盤て何なのだろう。
    今の日本人と、村田氏の時代の日本人は同じだろうか。
    輸入してきた概念があまりにも多くて、無理をしているのではないだろうか。

  • 『村田エフェンディ滞土録』すごく好きです。

    エフェンディとは、学問を志す人のことです。
    考古学を専門に学ぶ主人公の村田は、日本語のMURATAという発音が、MURATに似ていたからという理由で留学生に選ばれ、スタンブールにやって来ました。
    時代的には、明治辺りのお話だと思います。

    この話には、英国人でキリスト教徒のディクソン夫人、ドイツ人のオットー、ギリシャ人のディミトリス、回教徒のムハンマド、など信仰の異なる人々が登場するのですが、なんと言っても「鸚鵡(おうむ)」が良いのです!鳥の鸚鵡です。基本肉食ですが、イチジクが大好きです。絶妙なタイミングで一言を発する、賢いのか狡賢いのかわからない憎いやつです。

    日本で無血革命とも呼ばれる明治維新が起こったように、スタンブールでも流血を最小限に防いだ革命を起こそうという活動が水面下で行われていました。
    しかし、そんな努力にも拘わらず、人々は世界大戦に巻き込まれていきます。仲が良かった友達同士もそれぞれの故郷を守るために敵同士となり戦地に赴きます。

    人は、人種や文化や宗教の違いを飛び越えて友達になることもできる。それなのに、そんな彼らの仲を引き裂き、戦争に駆り出してしまう「国家」とは一体何なのか。考えさせられる一冊です。

  • 1899年、時は明治のお話。舞台はトルコ。
    主人公村田は考古学の研究のため、彼の地に留学をしている。
    同じ下宿先で出会った友人たちとの日常が、
    一章一章のテーマに沿って、ゆるく区切られながら、書き留められている。
    (しっかり分かれている印象はない。読点を打つ感じ。)

    出てくる人たちがみな魅力的で、好きだ。
    大家のディクソン夫人から、世話をやいてくれるトルコ人のムハンマドまで、
    国籍も、宗教も、バラエティ豊かだ。
    考え方の違いや、どうしても相容れないところも度々出てくるのだが、
    すっと無理なく折り合っていて、その様もなんとも素敵だなと思う。

    時代こそ、現代からは遠いが、
    古い感じは全くしないし、村田が悩んだり考えたりしていることは、
    今、自分が同じように考えなければいけないことだ。と思う。
    逆に不思議なほど、そこは変わらない。
     

  • 素晴らしかった。としか言い様がありません。 バラバラな歴史と、文化と、宗教を持つ人間同士でも確かに絆を作るのは出来るのだと。 ディミィトリスと村田が一緒に出かける「馬」と、みんなで仲良く雪玉をぶつけ合う「雪の日」が好きでした。 最後の「日本」ではディクソン夫人の手紙と鸚鵡の言葉に泣きました。 「家守綺譚」の高堂、綿貫、ゴローが出てきて懐かしくなりました。

  • 歴史や文化について、考えさせられました。テーマがハッキリしていて、よかった。キャラクターもみんな魅力的で、好きです。
    とても面白かったけど、読了後の感覚が、淋しかったです。

    それは彼らの辿った道のせいでもあるけど、それに加えて親しみを持ったキャラクター達が、物語の終盤で、どんどんどんどん、遠いものに感じられていったからというのも大きいと思う。
    まるで、この時代にタイムスリップしていたのに、一気に現代に引き戻されたみたいだった。ホームドラマみたいに身近だった人物が、いきなり歴史の中の一人になるのが切なかった。
    視点を彼らのとても生活感のあるところから、ぐんと遠いところに持ってくることで、歴史もあたしたちみたいな普通の多くの人の生活からできたものなんだなあと感じられた。
    そして、そのことが作品全体のテーマになっているように見えた。

  • 心に刺さる話だった。歴史というものに対してどうやって向き合っていくか、もう一度考えたい。もっと早くよむべきだったな。この人の作品に出てくる「ちょっとした不思議」はすごく品があって、すてき。

  • 美しきノスタルジア。
    欧米世界が第一次世界大戦に向かう頃、
    日本は明治の黎明期を経て、列強への脱皮を図っていた。
    産業はもちろん、欧米型の学問分野と研究手法を取り入れ、
    机上の空論ではなく実測・実験を基本とする合理主義的なアプローチを
    体系化するため、人材の輸出入を積極的に行っていた頃。

    東西の文化が交流し、混流する地、トルコ・スタンブールに派遣された
    考古学者の卵、村田は、彼の地で「エフェンディ」と呼ばれる。
    それはトルコでいうところの「先生」という意味だった。
    尊称なのだろうが、珍しい東洋人へのとりあえずの建前、と取れなくもない。
    純粋な好意でもなく、かといって失礼ではない。
    村田が身を寄せる下宿の中で唯一のトルコ人にしてイスラム教徒、ムハンマドの、
    独特のバランス感覚がそこには現れていた・・・・・・

    古代遺跡から発掘された屑石材を積み上げ、いわば墓石でできた壁に
    囲まれた下宿に住むのは、
    敬虔なクリスチャンでハウスキーパーのイギリス婦人、
    失われた文化への深いノスタルジーを抱えたギリシア人、
    発掘調査を通して文明の興亡を合理的に分析しようとするドイツ人、
    土着のイスラム教徒としての戒律と文化を守る「奴隷階級」のトルコ人、
    そしてやたらと自己主張の強いオウムと、墓石の中に住む古代の神々の残滓。

    異文化に触れ、改めて日本と己について考え至る村田エフェンディを中心に、
    国籍も宗教もばらばらの人間たちがどうにかこうにか都合をつけてやっていく様を
    時代がかった話し言葉で活写した物語。
    異文化体験に戸惑い、感心し、受容し、ひるがえって
    自分の立ち位置に悩んだりする意気込んだりする村田の「あわあわ感」が
    親近感を呼ぶのか、自分も同じ下宿にいるような気持ちになってくる。
    そして梨木さんならではの、日常的にそこにある神様や幽霊の気配。
    キャラクターに託して複眼的に語られる
    文化人類学的な宗教や文明のルーツへの視点も面白い。

    戦争の暗い影、近代社会へと変貌していく欧米諸国の軋みを
    大きな背景にしながら、その時代に生きた人たちの息遣いを感じるほど
    ディテールにこだわっているから、この共感があるんだろうなあと。
    読後は、自分が知らない時代、前近代へのノスタルジーに浸ってしまいます。

  • いいね、この本
    この著者の作品では一番世界感に入りこめた。なんでかわからないけど、埃っぽい感じがする。砂埃か。

  • 梨木香歩さんの作品の中でも私は特にこの作品が好きだ。
    この本を読むと、穏やかに喝を入れられたような気分になって、自分というものを振り返って考えてみたくなる。
    自分という人間とは?自分を取り巻く環境は?国とは?
    そういうことを考えること、自分なりの答えを持っていることの大切さを梨木さんは伝えようとしているのでは?

    この作品と登場人物が少しリンクしている『家守綺譚』も雰囲気は異なるが、好きな作品。

  • たなぞうの書評を読んで、入手。
    スタンブール全景として鳥瞰図があり、ムハンマドが鸚鵡を拾った、と物語が始まる。文体だけで明治の頃の話だな、と納得させられる。
    主人公の村田は土耳古に留学した考古学者。下宿先のイギリス人、ディクソン夫人、同僚のドイツ人オットー、同じくギリシャ人ディミトリス、使用人のムハンマド。国も信仰も異なる人たちが互いに尊重しあい交流する。不可思議なことも起こるが、淡々と受け止めている。
    帰国の辺りから急に話が早くなる。その後の世俗と生活に追われる日々。そして二度と帰ってこない、かの地とかの人々を追憶する。
    読み終えてため息が出ました。

  • 1899年トルコが舞台。まるで自分もそこにいるみたいな感覚を味わえ異国の匂いを感じれる『家守綺譚』に通ずる不思議なお話。
    やっぱり梨木香歩さんの本好きだなぁ。

  • 2度目、でしょうか?
    それでも、クライマックスには涙がにじんでしまいます。
    人種も文化も宗教も違う人々の間の絆。
    「国とは、一体何なのだろう…」その問いかけが心に響きます。

    梨木さんはエッセイ『春になったら苺を摘みに』の中に「分かり合えないというのは案外大事なことかもしれない」ということを書かれていました。
    『村田エフェンディ〜』を読みながら、その言葉を反芻しておりました。

    近いうちに『家守綺譚』も読みたいと思います。
    綿貫さん、高堂さん、ゴローがちょびっと顔を出しているところが、梨木ファンには嬉しいです。

    …それにしても、本当に鸚鵡がいい味を出してます。

  • 私は名を村田という。土耳古(トルコ)皇帝からの招きでこの地の歴史文化研究に来た日本人留学生だ。
    英国人のディクソン夫人が使用人・土耳古人のムハンマドと共に営む下宿に身を寄せるのは、私のほかに、学者であり遺跡発掘に従事する独逸人のオットー、同じく希臘人のディミィトリスがおり、下宿人は皆エフェンディ(学者)と呼ばれていた。

    そこは1899年、土耳古、スタンブール。
    生き別れになった兄弟でも抱くように接してくれるパシャ。
    朝に夕に響き渡るエザン(祈り)の声。
    軽羅をなびかせながら町を行く美しい婦人の群れ。
    何かの加減で染みのように現れるビザンティンの衛兵の亡霊。
    今は廃墟となった古代羅馬、希臘への憧憬。
    夜半に幻燈の如くに揺らめき見えるのは、遥か古代のオリエントの神と日本から連れられてきた稲荷神との勢力争い。
    大きな革命を乗り越えた国とこれからそれを迎えようとする国の過去と未来を語り合う人々。

    しかし、私のスタンブールでの日々は日本政府からの命令により突然の終焉を告げる。
    私は彼の地を去り、やがて、共に過ごした友の、国と国とが戦いを始めた……。

    私たちは全ての主義主張を越え、民族をも越え、なお遥かにかけがえの無い友垣であった。
    これは私の青春の日々。私の芯なる物語。
    歴史に残ることもなく、誰も知るもののない、大戦の彼方に忘れ去られた悲喜こもごもである。


    『世界が愛した日本』でも紹介された、1890年に起こったトルコの軍艦エルトゥールル号の難破と近隣村民の救出劇が縁で土耳古皇帝に招聘された日本人留学生・村田エフェンディが過ごしたトルコ。スタンブールでの日々を玲瓏な筆致で描く青春小説。

  • 本当にせつない小説でした。ちょっと泣いた

  • 時は1,900年前後、トルコの首都イスタンブールに留学した村田は、下宿の仲間と議論したり、拾ったオウムに翻弄されたりといった日々を送っていた。
    やがて、トルコは革命へ、世界の政情は第一次世界大戦へと向け動き出していき、それぞれも違った道へと進んでいく、といったお話です。

    本屋で何気なく手に取ったこの本。
    「滞土録」、トルコかぁ、何かちょっと珍しいな、と思い手にとってあらすじを見ると「・・・爽やかな笑いと真摯な祈りに満ちた、永遠の名作青春文学」とある。
    はあ、フィクションか、と思いもとの棚に戻すことに。
    で、他の本を物色しレジに向かう途中、やっぱりな~んか気になる。500円だし買っとこう、と思い購入しました。

    といわけで、著者の梨木香歩さんを知っているわけではなく、直感から買ったこの本。
    その意外性もあってからか、ひさしぶりヒットしました。
    イギリス人の大家さんを中心として、使用人のトルコ人、考古学者の日本人、ギリシャ人、ドイツ人が集まった下宿の日常の生活が描かれています。
    遺跡から出た石の話や、色々な神様の話、食べ物の話などがこれらの人々を中心として繰り広げられるのですが、これに味付けをしているのが、最初に拾われてくる「オウム」です。
    しゃべられる言葉は限られているのですが、これが絶妙にコトバを会話に挟んで、物語を締めていきます。シェイクスピアの道化のような役割でしょうか。
    この物語の最初を「オウム」で始め、終わりも「オウム」で締めるという構成からも、役割の重要性が伺えますね。
    フィクションであり、女性の作家さんからか、文章が軟らかで、あまり土臭いところを感じないところが、逆に失点という見方もできるでしょうが、これはこれでとても読みやすく自分はOKですね。
    また、主人公の性格と「録」ということを意識してか、文章的装飾を削ったような素朴な感じの文章で綴られているところは、読みやすいという効果に加えて、主人公の感情を想像させる効果を生んでいるのではないと思います。
    最後はありがちかもしれませんが、思ったより、感動してしまいました。

    この本は、昔、高校の指定図書みたいになっていたみたいですが、むしろ学生より一度社会に出た方の方が、最後の方のお話は思うところがあるのではないかと思います。
    関係はありませんが、読んだ後に何となく「高丘親王航海記」を思いだしました。
    それから、引出しの中に転がしてあった「石」を机の上に置いてみました。
    「梨木香歩」さんの別の本も読んでみる可能性大!!

  • なんかゆっくりしたテンポのものが読みたくなって、再読です。明治時代、考古学の研究のために土耳古(トルコ、この古風な表記、いいなぁ)に来ている村田のお話です。政府から紹介された下宿屋には、やはり勉強のために来土した、独逸(ドイツ)人のオットー、希臘(ギリシア)人のディミトリス、女主人のイギリス人であるディクソン夫人、彼らの世話をするムハンマンドがいて、宗教も国籍もバラバラながら、お互いを尊重しあい、また、行き違いも時にはあり、と過ごしています。村田の目を通して、当時の土耳古の国情・国民性が語られるのも興味深いし、現地での日本人との交流もいいものなのですが、何より面白いのは、味付けのように出てくる異界の描写。部屋に突然出現する8000年も前の蜃気楼とか、ふわっと浮かぶ衛兵とか、日本のお稲荷さんのお札を部屋に持ち込んだ途端に起こる騒動とか。村田が、過剰に怖がるでもなく、でも平静でもいられず、といった間合いの取り方がとてもしっくりときて、不思議な感覚で読むことができました。何かを言いたくて出現するものあり、ただ、「習慣として」出てくるものあり、というのもよかったなぁ。「家守綺譚」がとても好きなので、そのテイストに近いのが嬉しいところです。ネタばれあり後半、日本に帰った村田が 「家守綺譚」の二人に会うところが、またとてもよかった。しばらく話した後、あぁ、彼はボート事故で死んでいたんだった・・と気がつく村田。「なに、大丈夫だ。あれはよく来るのだ」となだめる綿貫。訳知り顔の犬も健在で(#^.^#) 短い小説ながら、懐石料理のように味わい深い、大事にしていきたい、と思わせられる作品だと改めて感じました。革命や第一次世界大戦など、学問以外のことにも翻弄され、辛いことも多々描かれているのですが、折々に登場するオウムの叫びが時に悲しく、時に滑稽で、物語に奥行きを感じさせてくれるのも、梨木さん、上手いなぁ・・・と。ネタばれ終わり今度は、「家守綺譚」をまたまたゆっくりと読み直したくなりました。(#^.^#)

  • これぞ文学と言いたくなるようなまっとりとして切ないそれでいて大きなテーマをさりげなく扱っているすばらしさ。主人公の村田と同じ体験を自らがしているようなみずみずしさが読み進むにつれて立ち上ってくる。

  • 梨木香歩初読。ちょっとネタバレ有り。最近の長野まゆみ作品(『箪笥のなか』等)はこの人の作品に近いとまず思った。当たり前に怪異があって、それを受け止める人々が自然でユーモラス。曖昧なものと付き合っていく素地がある、素敵な人々。人種も性格も違う人と鸚鵡が下宿していた、思えばかけがえのないあの日々がカッコのない会話文で回想録のようにワンクッション置いて伝わってくる。遺跡に行ったり、おかしな神さまを招き入れたり、鸚鵡に翻弄されたり。あんなにも豊かな場所を、戦争は簡単に奪っていく。手紙越しのそのあっけなさがやるせない。しかし最後の鸚鵡がイイ!なくなっていないものもあるのだと、こみあげた。読み終わってまたあらすじを読み、そうかこれも青春小説なのかと思った。燦めくような日々が、青春なのだ。

  • 「西の魔女が死んだ」で有名な梨木香歩さんの本です。この作者の本はどれも好きですが、「村田エフェンディ滞土録」は、バックグラウンドに戦争があり、衝撃的なものでした・・・。
    実際の戦争についての部分より、登場人物たちの、くすっと笑えるような日々が、戦争によって過去の戻らない思い出になってしまう・・・悲しみが描かれている気がしました。
    国家とはなんなのか、という訴えが、胸に響きました。
    また、オウム(鳥)が、戦場で死んでしまった飼い主の亡骸にとまり、「もうたくさんだ!!」と叫ぶシーンも印象的。
    悲惨さだけを訴える物語ではなかったです。でも、戦争の喪失感が伝わってきます。
    戦争について、違う視点から見られた気がしました。絶対読む価値ありです。
    私の文章力では、この本のすばらしさは伝えられない。
    とにかく、読み終えたときに、感動しました。でも「悲しい感動」でした。

  • こういうの好きなんです。
    鳥サイコー

    他のユーザーのコメ読んで知ったけど
    家守のも読まなくちゃ!

    ちなみに梨木さんはこれしか読んでません。

  • ―楽しむことを学べ―
    まず、"エフェンディ"というのは学問を修めた人に対しての敬称なんだそうで。はじめタイトル見て、なんだろう?って思いました。
    100年ほど前の時代、スタンブールに留学した村田さんの現地での生活が書かれている。異文化にふれるということ、きなくさい政治陰謀の影、そして―かけがえのない「友」との思い出―。
    静かに余韻を感じる秀逸作です。
    学校の推薦図書にもなっていたようなので、特に中高生に読んでもらいたいですね。
    別書『家守奇譚』ともリンクしていて、綿貫や高堂も出てきます。

  • すごくよかったです。わたしこの本に出会うために生まれてきたんだ、って思うくらいよかったです(大げさですけど、読後すぐは本当にそう思ったんですよ!)
    19世紀、村田学士がトルコに留学して、人々や神様やいろんなものと触れ合って過ごした日々のお話。いま世界ではテロやらなんやらあるけど、いろんな価値観があって、理解できなかったとしても、まあいいやっていい意味での諦めというか。みんな変に肩張っちゃってるけど、共存することは案外容易いことなんじゃないかって、そんなふうに思わせてくれる作品です。作中で登場人物が好んで引用した台詞が、心に残ります。「私は人間だ。およそ人間に関わることで私に無縁なことは一つもない」

  • PPを見送った後、成田空港で買った本。帰りの電車で読もうと思って。結局こんなに長くかかっちゃったよ。感想はまぁまぁ。トルコだからか、出てくる人種について知識が少ないからか、なーんか深く入り込むことができなくて、最後の章の感動もいまいち響いてこなかった。家守綺譚の綿貫さんが出てきたところは嬉しかったし、なんだかほっとしたけど。

  • キャラ立ちしてるとか、何かが起こるとかそういうんじゃないのに、ほんの些細な日常が心に響くと感じられる、いつまでもそばにおいておきたい一冊です。

  • 「家守綺譚」で名前だけが出てくる「土耳古に留学中の村田」を主人公に据えた連作短編。
    往時のトルコが、その熱や匂いもそのまま感じられそうなほどリアルに描き出されている。読み終わった途端にまた最初からページをめくりたくなった。
    日本とは温度も空気も全く違う国で、村田は異国の友に囲まれながら日々を送る。彼自身は決して能動的な人物ではないが、周囲の人々との交流の中で、国の文化や価値観などについて考えることとなる。
    その日々は色彩豊かでとても魅力的だが、その分、終盤の展開がとても悲しい。最後の村田の血を吐くような叫びに胸が痛んだ。いい本だ。これも手元に置いておきたい。

  • 「西の魔女が死んだ」関連で。エキゾチック童話

  • 題名通りトルコの話なので家守綺譚と繋がっていて驚いた。
    最後に畳み掛けるように悲しい出来事の報告が来るので現実味がなかった。
    島国で暮らしていると、作中のような感覚は決して味わえないだろう。

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著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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