動物化するポストモダン オタクから見た日本社会 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061495753

感想・レビュー・書評

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  • 本当なら学術的な専門用語で説明することをオタク文化の言葉や実情をもって説明する。アカデミックな人とサブカルな人との逆転現象が面白い。その辺に詳しいサブカルな人がアカデミックな内容についてピンとくるような説明になっている。サブカルチャーを分け隔てなく分析していて面白い。同世代の人にとっては自分の通ってきた感覚を理解するのに役立つのではないだろうか。サブカルを知らなくても読めるように書かれてあり親切だと思う。これからの文化を考える上で羅針盤になる一冊だと思う。

  • 素直に首肯できない気持ちも含め、考えさせられた一冊なので星四つ。

    神や父、国家と言った、忠実に従えば幸福にさせてくれる「大きな物語」を喪った近代以後。
    ポストモダンの考え方では、記号や象徴の消費が、個人の欲望のままに激しくなっていく。

    日本が代表するサブカルチャーであるオタク文化は、まさにこのポストモダンの考えと一致する。
    ストーリーそのものより、「属性」化されたキャラクター達にスポットが当たるようになり、現実的ではない性的象徴を持たされ、消費される。
    また、オリジナルを基にしたシミュラークルが公的にも私的にも活発化する。
    メディアミックスや派生本、同人誌が市場に出回り、大きなビジネスとなっている。

    その結果、世界は即物化し、人間が動物化することで人間性の意味を失ってしまうという、非常にシビアな結論が出されている。

    確かに。そうかもしれない。だけど。
    そこで終わってしまうのは、あまりに淋しい。

    人が物語を求め、物語を生み出すことの根源には何があるんだろう。
    アニメも漫画も、代理経験の一つである。
    私はガンダムやヤマト世代ではないので、ひとまずエヴァを思い浮かべるのだけど。
    アンノウンな世界で、ただ役割を果たすだけの生を受容するレイと、拒否するシンジに、違和感を感じたことを思い出す。

    まどマギの、まどかとほむらにしても。
    まどかを、ハッピーエンドであるはずの偉大なる存在から、秩序を無視してまでも一介の女の子に戻してしまおうとするほむらに惹かれてしまう。

    大量に消費され続ける「物語」の中には、美しさや感動といったかけがえなさを感じるものもあるはずだ。
    それすら欲望の残滓と言ってしまって良いのか。

    答えにまで行き着けなかったけれど、考えさせられる。

  • 戦後から現代にいたるまでの日本社会の動向について、オタク文化と並列して述べられている。人文的な議論の組み立て方が勉強になるし、哲学と実生活が交差する様子は読んでいて楽しい。「科学オタク」とか「理系バカ」とかのレッテルを、(真偽はともかくとして)張られがちな東工大生に読んでみてほしい。
    (情報工学系知能情報コース M2)

  • いま読んでも古びていない議論もあることに驚く。

    4年ぶりくらいの再読。

  • 2017/04/04
    1950〜1970前、世界は大きな物語が再生産されていた。ただ、70年代以降はポストモダンが強くなるので、大きな物語の再生産と欲望は止まる。その時代に成熟した人々のために、代わりとして、1980年代末のオタク系作品には、ひとつの世界観や歴史観を見出すことが一般的だった(ガンダムなど)。この世界観は現実の大きな物語(政治的イデオロギー)の代わりとしての役割を果たすことも。そしてその見かけの大きな物語を商品としては売れないのでその断片を小さな物語として売っていた。

    でもさらに時代がくだると、大きな物語の捏造自体が不要に。そうしてデータベース(イラスト・設定・萌えるパーツなど)から消費者がおのおの勝手に消費をする世界へ。

    だいたいこんな中身だったと思う。
    なるほど、そのように変化したのか、と思えた。そしてただのオタク文化論ではなくポストモダン論に落ちていたのも、面白かった。

  • 分かりやすく鋭い、オタク論。
    近代とポストモダンに興味が湧いた。

  • ポストモダンでは大きな物語ではなく、背景にあるデータベースから要素をピックアップして作り出された類似した小さな物語で満足しちゃってるっていうのが、ゲームアプリが氾濫してるいまの時代でもそのまま説明できるなーと思いながら読んでました。古い本だけど、いまもその延長にある感じだから、なるほどなーと思いながら読んだ。専門用語が多い。

  • 東浩紀の代表作です。「オタクから見た日本社会」というサブタイトルを文字通りに取れば、日本のオタク文化の検討を通して、ポストモダンの消費のあり方について考察した本と捉えるべきなのかもしれませんが、現在に至るまでのサブカルチャー批評の枠組みを築いた本と言ってよいように思います。

    著者は、大塚英志の「物語消費論」を踏まえつつも、「データベース消費」という新しい概念を提出し、これによって「大きな物語」を失ったポストモダン状況を適切に捉えることができると考えています。一方、消費をおこなう主体についても、従来の「欲望」に突き動かされる主体ではなく、コジェーヴの言う「動物的」という形容に当てはまるような、解離的な人間が消費行動の主体になりつつあると論じています。

    最初に読んだときは、「動物化」という概念がポストモダン状況を反映していることは理解したものの、その射程が見えておらず、なぜこの概念をタイトルに持ってきたのか不可解な思いがしていました。その後、『民主主義2.0』などの著者の仕事などを通して、「動物化」の発想がその後どのように発展していったのかを知ることになり、改めて本書が秘めていた可能性について気づかされることになりました。

  • なるほどなぁ、と感心させられる現代のオタクについての鋭い考察が書かれている本。こんな風にオタクについて論じた本は少ないんじゃないだろうか?

  • 読み始めるとなぜか寝てしまう本。オタク系文化、ポストモダン、大阪万博以降、大きな物語、シミュラークル、データベースモデル、キャラ萌え、ノベルゲーム、動物の時代、欲望と欲求。

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著者プロフィール

1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院博士課程修了。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。著書に『存在論的、郵便的』(第21回サントリー学芸賞)、『動物化するポストモダン』、『クォンタム・ファミリーズ』(第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』、『弱いつながり』(紀伊國屋じんぶん大賞2015)、『観光客の哲学』(第71回毎日出版文化賞)、『ゲンロン戦記』、『訂正可能性の哲学』など。

「2023年 『ゲンロン15』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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