- Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061854017
感想・レビュー・書評
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細かに構成されてた物語が結末へと急速に進んでいく様は、読んでいて気持ちよかった。
頼子のために。
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法月綸太郎シリーズ3作目。
本作はトリックよりも人物描写に重きを置いた作品です。
そうかなぁとは思っていたけど、最後の最後に
おぉ!となりました。
非常に楽しめました。 -
この作者、新本格で名前はよく出てくるけれど実はよく知らない。たぶんこれが2冊目。で、なんだかなあ。タイトルはキャッチーでいいと思う。それでぼくもだまされて買った。内容は...。
高校生の娘が公園で縊死体で発見される。続発していた一連の通り魔事件関連かと思いきや、その子が妊娠四ヶ月だったことから一転して、名門高校の教師との関係とその事件への関与の疑惑が。なんともはやありがちで反吐が出そうな設定だ。それでまた見当違いの捜査をしている警察と事件もみ消し工作をはかる学校に業を煮やした父親が単身復讐に立ち向かうという構図。そこまでが導入部。
その後、厭味ったらしい著者と同名の探偵が捜査に乗りだして、お定まりの驚愕の真相というやつが明らかになる。ひっくり返すにはこれくらいのことをやらなきゃならないんだろうかね。最低の筋書きだと思うけど。人間描写がなってない。現実味がないというか登場人物の心理が全然理解できない。最後の幕引きの偽善者っぽさもいやみだし。名探偵だけが悦に入っていて誰も救われない暗澹たる結末。 -
20120625読了。
◆評価
なんというロスマク(1作しか読んでいないけど)
ある一家の娘が殺された事件にかかわる名探偵のりりん。
調べていくにつれ、その殺人事件の様相は、はじめに提示されていたものから大きく変貌していく。1つの「手記」を中心にして、関係者の過去の因縁、人間関係、隠された感情…そんなものが名探偵の視点での捜査からあらわになっていくさまに、つい最近読んだロスマクの某作品の類型を見た(似てるなと思ったら、あとがきで分かったことだが、本人もロスマクの大ファンとのこと。確信犯だ)
人物や動作の描写、心理描写の書きぶりまでも、なんとなく海外ハードボイルドの翻訳文ふうに見えた(これは、わたしの思いこみだと思うが…。)
わたしが読んだロスマクはまだ1作だけ。
超有名なあの作品を読んだ後まもなく、この作品に触れることができよかった。
そのおかげで、最後の1文にニヤニヤできた。
(そういう意味では、ひとを選ぶものの、「ラスト一文」ミステリにカテゴライズできると思う)
この作品で、最終的には、名探偵のりりんは事件の真相を導きだし、すべてを(読者の前に)明らかにすることには成功しているものの、幕引きまで登場人物たちの抑圧や罪悪感までも、その「真相」をもってして救済することはできなかった。
それのみならず、「真犯人」とも呼べる某存在を前にして完全に沈黙してしまう。
(事件の様相は、むしろ全ての謎を解き明かす前の状態(手記に述べられた状態)の方が、みんなが幸福のままでいられたかもしれない)
「事件解決を導いても、人間をそれで救う事が出来るとは限らず、ときにその真実の酷薄さそのものに、名探偵が沈黙しなければならないことすらある」という、名探偵小説の抱える「哀しみ」や「無力感」が漂うラストは美しく、またかすかにほろ苦い。
◆感想
のりりんは、最初に思っていたような感じの、のほほんとした名探偵じゃなかったのが意外だった。なんとなくご本人に似た、ひょうひょうとした、とぼけた味のあるひとだと思ってたのは先入観だったようだ。
実際にはハードボイルド小説の私立探偵みたいなかんじ!
(今回が、初長編のりりんだったのだ)
作中に出てくるバンドの曲や、原宿のようす等にものすごく時代を感じた。
文庫初出を見ると、今からまるまる20年前。
書かれたのはこれよりも数年前だと思うので、ひょっとするとわたしと同い年くらいの小説かもしれない。
(ジョイ・ディヴィジョンというバンドは、本当にいたバンドだったのだろうか。作中で出てきた曲を聴いてみたいが、…ちょっと怖い気もする。夜中に読んだ箇所だったので、ぞっとした)
しかも、書いたのが、のりりん25歳のときだったと知り、びっくり。
わたしとほぼ同い年!
同じ年ころの人間が、こういうものをものすることができたことに、あらためて驚かされた。
読みさしのまま置いておくことに耐えられず、寝る時間を惜しんで読んでしまった。
スピード感を最後まで崩さない、よいページターナー作品である。 -
凄い後味が悪い。
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面白かった!
結論は…女は恐いってことかな。
『who-誰が』については予想が当たったけど、結末は完全に予想外。
後味の悪さ、私は好きだけど嫌いな人もいるでしょう。
小さい謎の散りばめ方・消し方や複線の張り方が肌にあっているのかこの作者の本は飽きません。
大好きです。 -
十七歳になったばかりの娘を殺された父親は、
通り魔の犯行として捜査を進める警察の方針に疑念を抱き、
自分なりの推理を元にひそかに犯人を突き止め、
相手を殺害、そして自らは命を絶つ、という内容の
手記を残して、本当に自殺を図った。
とある事情によりこの事件の再捜査を依頼された綸太郎は
手記を読み、関係者に話を聞いて回るうちに、
やがて驚くべき真相へと到達する――。
上記のようなあらすじが裏表紙に書いてあるので、
冒頭の「手記」の内容が覆されるような「真相」が
最後に提示されるのだろうと思いながら読んだ。
たぶんそういう先入観がなければもっと驚けただろうから、
やっぱり裏表紙や帯の煽り文句は重大なネタバレなのだ。
それはともかく、最後に明らかになる真相は確かに衝撃的で、
非常に悲劇的なものであり、結末はさらに悲劇的なもの。
とにかく悲しく、やるせなくて居たたまれない結末だが、
深い余韻を残すラストシーンは秀逸だった。
もちろん推理部分もしっかりしていて面白い。
「誰彼」のような複雑さと狂気を孕んだパワーは
この作品にはないが、個人的には本作のような、
物語としての筋がちゃんとあって、
推理を楽しむだけのパズル的作品でないもののほうが好み。
これは久々に面白い本格ミステリだった。
余談だが、この作品では、作者のあとがきと、
池上冬樹氏の解説が不要だと強く感じる。
作者がこれを書いたときどんな心境で、
今現在作者がどんな悩みを抱えているのかなど
本編が終了した直後に読みたくもないし、
池上氏に到っては、確かに本作を含む法月作品について
鋭い意見を述べてはいるのだが、最終的には
「法月くんは本格じゃなくてハードボイルドを書くべきだよ」
ということだけ言いたかったような印象すら受け、
なんだかなぁという感じがしたのである。
じゃああとがきも解説も読まなければいいと言われれば
確かにそのとおりなので、これくらいにしておくことにする。