人生ベストテン

著者 :
  • 講談社
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感想 : 86
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062128100

感想・レビュー・書評

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  • 『床下の日常』
    マンションの水漏れ修理にきた男に、近頃は夫と食事してないと話す女。

    『観光旅行』
    イタリアで出会った女を母娘喧嘩に巻き込み、自分の都合を話す女。

    『飛行機と水族館』
    飛行機で隣り合った女から、十年付き合った男にフラれた話を聞いた後、なんとなくその女に付きまとう男。

    『テラスでお茶を』
    恋人とこじれて中古マンションの購入を考える女は、不動産屋に嘘の身の上話をする。

    『人生ベストテン』
    40歳目前の女の人生において、一番の出来事は中学2年のすこしのあいだだけ岸田くんと付き合って、自然消滅したこと。女は同窓会で再会した岸田くんに嘘の身の上話をして、高額な料理器具を買わされる。後々、岸田くんが偽物だったと知る。

    『貸し出しデート』
    離婚を控えた女は男慣れするため、金を払って太ったホストみたいな男とデートする。過去の自慢話を続ける太った男、妊娠をしている女。

    ---------------------------------------

    打ち明け話や身の上話をされた人たちのリアクションは様々。
    時間が経ってから気になってしまってストーカーみたいになる男もいれば、旅先でそんな話を聞かせるんじゃないよと苛立つ女もいた。隙を見つけて、高額な料理器具を売りつける男もいた。

    打ち明け話のあとでは距離感が変わる。よくもわるくも。親しみを持ってしまう人もいれば、自分が話したことが恥ずかしくなってしまう人もいる。

    身の上話をするとき、嘘が混じってしまうことはよくあると思う。自分に都合の良い内容に変化させる以外にも、相手に伝わりやすいよう、すこし内容を変えたりもするだろう。あるいは話してる内容全部が嘘だってこともあるかもしれない。
    たとえ嘘でも本当だとしても、個人的な話は距離感を変える。

  • 40前後の男女が主人公の短編集。

    充実した日々を送っている風ではない人達ばかりで、あまり明るい話ではないのですが、面白かったです。

    不倫相手の奥様にできないことをしてやる、とマンションを買うことにした安藤の話「テラスでお茶を」が好きでした。

    漂う空気感は似ていますが、違ったお話を読める短編集はお得感があります。
    角田さんの作品は長編の方が好きですが、短編にも魅力満載で、楽しい読書タイムでした。

  • 7年ほど前に読んだのだが、ちょっと前の角田節を味わいたく再読。
    久々に読むと、読後感も変化するものねとしみじみ。
    人生の道に迷った男女の日常の一瞬を切り取った、滑稽なエピソード6編。みっともなさとユーモアの入り混じった、躓きに戸惑う30代女性の行き止まり感が手に取るようにわかる。
    見たくない現実から目をそらしても、煮詰まった日々に降ってわいた「非日常」な出来事により、結局その現実は更に輪郭を際立たせる。そこでかっこ悪くあがく登場人物らの姿は正直、キツい。そう感じてしまうのは他人事だからではなく、どこか自分のようだと思ってしまうからだろうか。キッツいながらも読み終わるとフフフと笑いたくなるんだよね。「しょうがないな~」みたいな、かっこ悪いながらも何かが吹っ切れたような。
    表題作の「人生ベストテン」の主人公は40歳の誕生日目前だが、偶然にも私も来月に40歳となる。実は自分自身も軽い挫折感を感じて再読したのだが、このタイミングで!と、なんだか運命のようなものを感じたよ。
    曲がり角の主人公らに、エールを贈りたくなる。そして、自分自身にも。

  • さして幸せでない女たちが出てくる短編集。
    「人生ベストテン」というタイトルだけで借りたので、もっと爽快な話かと勝手に思っていたので、ちょっと肩すかしだったが、よくまあこのように様々な人生の話が思いつくものだなぁと関心した。作家はすごいな。

  • いいですよね。そう幸せそうではない普通の人を、ディテイルに目が行き届いた観察と描写で綴る。いくらでも読んでいられそう。
    「床下の日常」
    クロス屋見習いが水漏れの修理に行った、マンションの一室に住む女性にランチをごちそうになる。不意に涙する女性。

    『ぼくらの暮らしの下で、ひそやかにゆるやかに、あるものは一部分腐りはじめ、あるものは連結部でひび割れし、あるものはヘドロを詰まらせていく。その隙間、過去の記憶のように廃材が埋めこまれていたりする。 』

    「観光旅行」
    同棲しているハシヅメ君と別れの踏ん切りをつけるためイタリア旅行する。そこでケンカばかりしている旅先で出会ったヨシザキ母子に出会う。ここでも不意に涙する。

    「飛行機と水族館」
    飛行機の中で隣り合った、ひたすら泣き続ける「泣き女」の名刺をたどって会いに行き、ストーカー扱いされてしまう。これも涙。これはちょっと趣旨の分からない話。

    「テラスでお茶を」
    心機一転しようと中古マンションを探す話。裏に潜む行き詰まりの生活。不動産屋との会話が楽しい。好きな話でした。

    「人生ベストテン」
    同窓会で昔好きだった人と会い、ホテルまで行ってしまうが、人違いで、50万円するナベを売りつけられてしまう。

    「貸し出しデート」
    貸出デートってサービスがあるんですね。登場した彼はどうみてもいけてないのに自信過剰の男というのが面白い。

  • 軽くて読みやすくて、ちょっとお疲れ気味の時にはぴったりだった。人生”ベスト”テンなのに失恋とかおばあちゃんが死んだこととか入ってるのはいいのか?と思いつつもついつい自分のベストテンも考えてしまった。全然順位つけられなかったけれど。

  • 角田さんの短編集は引き算の魅力に溢れる。読んで私の心の何処かが薄っすらと動く。でも何に反応しているのかが、自分でもよくわからない。普段自分でもあまり気づけていない、あるいは日々の営みのために、無意識にやり過ごしている本当に僅かな不満や寂しさ、気後れやらを筆には表さず、角田さんは行間に書き込んでいる気がする。初出誌が15年以上前の作品なのに、古くない。自分の露わを見たくない、見せたくない。自らの感情の栓をきつく絞って、本当のところでは寂しい人たちの短編集。生きることは本当にみっともないが、それがいい。

  • 30代女性を主人公にした短編集。人生を振り返って、よかった時をリストアップする「人生ベストテン」が、おもしろかった。

  • ザ・ベストテンをなぜか思い出してしまいました。こんなにたくさんのお話を考えられるのって、作家さんはやっぱりスゴイ。

  • 20160618
    p30まで
    逗子図書館

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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