- Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062175272
感想・レビュー・書評
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あらすじだけを読むと切ないホラーもしくはファンタジー要素を含んだミステリーだろうかと思ったが、解き明かされていく謎は切なさを通り越して、形容しがたい重さを運んできた。相利共生あるいは片利共生とも受け取れる人間と動物の関係は、しかしそんな四文字では片付けられないほどに深さを増すことがある。異種であるゆえに出会い触れ合えることを幸運とするならば、異種であるゆえに招く不運もまた当然のごとく存在し、通じ合えるのに越えられない壁が見えたときの絶望ははかりしれない。それでも、肉体の先に魂の溶けあう余地がきっとあると信じたくなるような四話(プラス一話)だった。
それはそうと、キーパーソンの能力に関することが不明のままということは、続編を期待してよいということなのだろうか?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
やはり筆者は当代最高のストーリーテラーだと思う。大傑作。
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死にゆく動物とことばが交わせたら。そこに語られるべきものは愛情や献身や感謝を思い浮かべる。けれどこの本は人間の傲慢を書いた物語だった。
初野晴の作風としてはスタンダードでむしろハルチカがイレギュラーだとは思うけれど、根底にあるものは変わらないとも思う。
痛いほどの現実を露わにする、その手法としてのミステリ。 -
初期のころを髣髴とさせるダークなファンタジ。
最初の一章目でまずその真実にうおっ!とのけぞり、二章目で人間の傲慢さに胸が芯から凍え、三章目でその崇高な想いに瞑目し、四章目で無私の誇りに心が洗われ、そして最期の章の奇跡へと私の心も昇華されていく。
人間と動物、その二つを分け隔てているのはいったいなんだろう。
私たちと彼ら、お互いに求め合い与え合い、分かり合うことはできないのか。
私たちは、どこかで進むべき道を大きく踏み外してしまっているのではないのか。
いろんな想いが胸に浮かんだ。
私もいつか大切な「誰か」を抱えてこの遊園地を目指すかもしれない。
そのとき、代わりに何を差し出すのだろうか -
〈内容〉廃墟となった遊園地、ここは秘密の動物霊園。奇妙な名前の丘にいわくつきのペットが眠る。弔いのためには、依頼者は墓守の青年と交渉し、一番大切なものを差し出さなければならない。ゴールデンレトリーバー、天才インコ、そして……。彼らの“物語”から、青年が解き明かす真実とは。“ハルチカ”シリーズで人気の著者が描く、せつなすぎるミステリー!