- Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062177993
感想・レビュー・書評
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短編集。著作、ほとんどよんでますが今回のものが一番好き。図書館で借りたけど、手元に置いておきたい。本作は「愛についてのさまざまな短編」という認識でいますが、なんというか、彼女が描く愛は痛いほど真っ直ぐなのにどこか歪んでいる。静かで淡々としているのに、急に熱くなったり鋭くなったり、そのまま淡々でも悲しみや虚無感を隠しきれなかったり。
マカロンのこの描写がすごく好きだ。
「マカロンを買うときのあの気分っていったい何だろうといつも思う。自分が掛け値なしの馬鹿になったみたいな気持ちになっていっそ清々しいような気持ちになるあの感じ。ただ甘いだけで蓋みたいなのも上顎にべったりくっついてうっとうしいし、そもそも名前がすごく間抜けだし、中身がないのにそれっぽいってだけで重宝されてみんなほいほい買っていくから値段が高いのもむかつくし、第一おいしいと思ったことなんてこれまでただの一度もないことを思い出させるあの感じ」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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あのとき、ふたりが世界のすべてになった。なにげない日常がゆらいで光を放つ瞬間をとらえた、心ゆさぶる7ストーリーズ。
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表題作のほか、「アイスクリーム熱」 「いちご畑が永遠につづいてゆくのだから」 「日曜日はどこへ」 「三月の毛糸」 「お花畑自身」 「十三月怪談」
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決してわかりやすい物語ではないのだが、前の読書がわかりにく過ぎたので、どことなく同じ匂いを感じないではないが、何となくほっとした気分で読めた。少なくとも同じ地平に立っていると思える物語たちである。誰かにとって大切なもの、自分にとっての譲れないもの、そしてそれらとのかかわり方、すれ違い方。そんなことごとが、さまざまな場面で描かれているように思う。同じ地平に立っているとは言え、ほんの5ミリくらい浮いた場所から眺めるような一冊である。 -
丹精込めて作った庭を奪われた女の暴走を描く『お花畑自身』が特に印象的だった。
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『monkey business』誌に発表された表題作を始め、『群像』、『小説新潮』などの各種メディアに発表された短編7編を収録。
どことなく東日本大震災の影響がひそやかに感じ取れるような作品群。
表題作よりもタイトルのイメージが似合うのは最後に収録されている作品「十三月怪談」のような気がする。若くして亡くなった妻が残してきた夫を思いやりながら、霊のごとき状態で夫の日常に寄り添う姿、そして一方で亡くした妻を忘れ難く、一途にその後の人生を送る夫。
食い違う二人の未来の記憶の奥底に「愛の夢」が封じ込まれているような気がした。
他に印象的だったのは、「日曜日はどこへ」。これはまさに川上さんの男前な気質が表れているような作品。
よく恋愛の記憶は女性が「上書き保存」、男性は「別名保存」というけれど、これはある女性の別名保存していた記憶が、一人の著名な作家の死で浮かび上がるというお話。
もっとも強烈だったのは、「お花畑自身」かな。饒舌でいてかなり恐い物語。家を守り、ガーデニングに精を出していた家庭の主婦のこだわりと思い入れが強烈なインパクト。
いつもの独特な言葉遣いの川上節も時おり炸裂。玉石混交なれど、ここに挙げた良いテイストの三作で救われている。 -
どこか孤独なひとたちが登場する短編が集められている。
読了後、もどかしいような、やるせないような気持ちが少しだけする。心地よくはない。けれど、不快でもないのだ。
独特の文体と世界観はこの人にしか書けないものだと本当に思う。官能的なようでいてそっけないというか、抽象的な風を装いながら決してそうではない、なんとも言語化できない作風。
最後に収められた十三月怪談は究極の純愛なような気がして、もし本当にこんなカップルがいたら、あるいは川上未映子がこんな愛を信じているんだとしたらものすごく切ないな。 -
率直な語りに惹きつけられる。表紙は自筆かと思ったらデザインだった。
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純文学にたびたび震災の影響が出てくるようになった。川上未映子という作家は生きることをユーモラスに描く人だったが、この本には死のにおいが溢れてる。特に最後の短編は、すごい。読み終えた途端、何もできなくなるくらいの衝撃を受けた。
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「十三月怪談」、泣いた。えぐってくるわ。
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短編集。
文章から押し寄せる静かだったり激しかったりする波に圧倒されました。
震災やご本人の出産の経験を思わずにはいられない作品集ですが、身を削って書くってこういうことなのかしらと思ったり。
「お花畑自身」、「十三月階段」が特に好きでした。 -
いつ読んでも、川上未映子さんの書く文章、匂いは素敵ですね。そして装丁も。今回は短編小説集であって、その中で十三月怪談は特にお気にいりで、読み終えた時にほろりとした感情になれます。グッときた