世界の果てのこどもたち

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062195393

感想・レビュー・書評

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  • 泣けた。けど、つらいつらいと呟きながらじゃないと読めなかった。戦争はつらい、生き残ってもなおつらい。なんでこんな目に遭わなきゃなんないんだって、何度も思った。大切な人々を思うこと、その温もりが何度も伝わってきて、涙して、読み終わった後も余韻が続く。


    2015.12.9

  • 憎しみは連鎖する
    戦争はその最たるもの
    消えない消えない深い憎しみや偏見、差別

    でも
    優しさも連鎖する
    それは、国を超える事ができる
    暴力では、誰かを虐げる事では、乗り越えられない事が、
    ほんの一握りの優しさで乗り越えられる事もあるんじゃないだろうか。

    戦争の悲しさは、
    ー幸せになるつもりだった。みんな。戦争をして幸せになるつもりでいた。
    自分のためだけじゃない。
    誰かを幸せにするために、戦地へ行って、他の誰かを殺した。
    誰かを幸せにするために、みんなで工場で武器を作り、みんなで食べ物を我慢した。
    だれも、決してだれかに不幸せになってほしくはなかったのに。それなのに、誰かの幸せのために、たくさんの人が不幸せになった。
    この茉莉の言葉に集約されるのかもしれない。

    2015年6月15日 講談社
    装幀:鈴木成一デザイン室  装画:イオクサツキ

  • 息を詰めるように、恥じ入るようにして読んだ。戦時中の満州でほんのいっときを共に過ごした3人の少女のその後が描かれる。家族と生き別れ残留孤児として中国で育った後に帰国する珠子、在日朝鮮人として日本で生きる美子、そして裕福な家に育つも家族を失い戦災孤児となりその後も独り身を貫く茉莉。貧しく無知で非力な者が戦争の犠牲にされる。子供であろうがそれはもう容赦なく。先日読んだ『波止場にて』(野中柊)とオーバーラップする部分もあり、この時代に生きた人々に思いを馳せた。
    著者にとっては新境地というのではないでしょうか?

  • 戦時中の満洲で出会った、歴史に翻弄された3人の女性の人生を描いた物語です。戦争によって各々の国でまともな生活を送ることができずに苦労した3人の女性の苦しみが切々と伝わってきました。まともな食事をすることすら贅沢だった時代を生き抜いた人たちの苦労を知ることのできるので、若い人たちに読んでほしい一冊です。

  • 世界中のこどもたちがみんな笑顔で手をつなぎ一緒に歌を歌えるような、そんな日が来ることを祈らずにはいられない。
    満州開拓団の人たちのいわゆる戦後の苦労については、ある程度知っているつもりだった。
    けれど、それはあくまで「知っているつもり」というだけで、どこまでいってもそのときの苦しみも悲しみも、分かることはできない。分かることができない私たちは、そういう苦しみと悲しみのない世界を手放さないように必死に「平和」にしがみつかなきゃならないはず。
    全く別の環境で育った三人の少女が満州の地で出会い、とある出来事を通してつかの間の友情で結ばれた。その一瞬の友情がこんなにも大きく深く長く三人の手をつなぎとめる絆となるなんて。
    幼いながらも彼女たちの中にあった「思いやり」という気持ち。その小さな思いやりの大切さをしみじみと思う。
    多くの命を奪い、たくさんの幸せを壊し、人々を地獄へと突き落とす戦争という愚かな行為を、なぜ私たちはやめる事が出来ないのだろう。
    一つしかないおにぎりを分け合い、自分がその一番小さなかけらを食べる。そんな優しさが世界中に溢れれば、みんなが笑顔で幸せに生きていけるはずなのに。
    「いくらみじめで不幸な目に遭ってもね、享けた優しさがあれば、それをおぼえていれば、その優しさを頼りに生きていけるのね。それでその優しさを人に贈ることもできる」
    今も世界中のあちらこちらに三人の少女がいる。彼女たちが血の涙を流さないように、今、できることを考える。

  • 若い頃はもっとこの頃の情報が溢れていたけれど、目を逸らしていた。怖いというか受け入れたくないというか。けれども、絶対に忘れてはいけないこと。

    考えることをやめていた事柄をたくさん思い出させられた。

  • 幼いころ満州で出会った3人の女の子の、戦中・戦後の物語。
    一人は貧しい高知の村から開拓団として満州に行かされた珠子。一人は生活のためにどちらかと言えば親日の考えを持っていた両親のもと(ただし母親は学校にも行っておらず読み書きができなくても、朝鮮人としての誇りは失わなかった)、満州で仕事をしていた朝鮮国籍の美子、もう一人は横浜で事業をしている父親が満州に視察(?)に来た時に連れてこられた、お金持ちのお嬢様の茉莉。
    3人は短い期間だが満州で友情を育み、国籍や立場が違っても、お互いを思いやってかけがえのない思い出を作る。その時には、そのささいな思い出が、どんなに大切なものなのか気づかない。
    終戦を迎え、満州の奥地で少ない田畑を耕していただけの貧しい珠子たち開拓団は何の情報もなく見捨てられ、筆舌に尽くしがたい悲惨な目に遭う。珠子は人身売買?で誘拐され、中国残留孤児に。貧しいが温かい養父母に育てられながら、だんだんと日本人としてのアイデンティティを失っていく描写が悲しくて悲しくてたまらない。
    朝鮮人の美子たち家族は、日本の敗戦により、これまで日本に協力してきたことが糾弾されることを恐れ、日本に渡ることを決断する。その後の成長では、日本で生きる朝鮮人としてのアイデンティティが問われる。しかし自分の意思で何か決められるわけでもなかった、美子たちのような終戦時子どもだった世代は、日本人とか、朝鮮人とか関係なく、ただそこで、一生懸命生きているだけだ。
    一番恵まれていたはずの茉莉は、空襲で家も家族もすべて失い孤児になる。このときの淡々とした描写も涙なくして読むことはできない。
    立場も置かれた状況もまったく異なる3人だが、共通しているのは、「幼いころ自分は可愛がられ、愛されて育った」という記憶だ。そして「満州で友達に優しくされた」という記憶も心の鍵となって、何か重大なことに直面したとき、正しく誇りを持って生きるための役割を果たす。

    戦争の悲惨さがもちろん伝わってくる作品だ。子どもにとって、幼少期に愛され、大切にされることがいかに重要かも伝わってくる。自分以外の誰かに思いやりを持つことの素晴らしさ(自分が大切にされてきていれば、困難な局面にあってもそれができる)。
    どんな状況でも、正しく生きたい、と強く思わされる。(もし自分が同じ状況に置かれたら正しい行いができるかはなはだ疑問だ、人は弱いものだ、とも思わされる)。
    在日朝鮮人にもさまざまな立場の人たちがいることもわかる。日本に来た経緯にもいろいろあるし、終戦時に朝鮮半島に帰るかどうかの判断もいろいろだ。
    中学校で教える強制連行の歴史なんて、間違いではないにしても、本当になんて薄っぺらいのだろう(ジレンマ)。

    ここに描かれた3人くらいの世代の人たちの記憶は、もう失われつつある。本書は「一番売りたい本!」という本屋大賞ノミネート作品だが、本当に、こんな物語がずっとたくさんの人に読みつがれてほしいと思った。

  • 国ってなんだろう。人ってなんだろう、と思った。

  • 2016年本屋大賞3位。映画のペイ・フォワードを思い出す。人々の憎悪は増幅され人々の優しさは連鎖する。良いつながりを大事にして何気ない毎日を過ごしたいなあ。3人の女性たちは皆優しくて強い。戦争は誰も幸せにしないと改めて感じた。

  • 戦時中の満洲で出会った3人の女の子達が、戦中戦後それぞれの過酷な人生を逞しく生きる物語。
    改めて実感したのは人を判断する時に国籍は関係ないと言うこと。どこの国にも優しい人も無情な人もいる。
    読んでいて辛い部分も沢山ありましたが、多くの人の優しさに何度も感動しました。
    この物語は小説だけれど実際3人のような子供達は沢山いて、世界に目を向けるとそれは現在進行形なんだと思うと考えさせられます。

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著者プロフィール

徳島県に生まれ高知県で育つ。高校在学中に坊っちゃん文学賞を受賞。筑波大学で民俗学を学ぶ。創作、昔話を再話し語る。昔話集に『女の子の昔話 日本につたわるとっておきのおはなし』『ちゃあちゃんのむかしばなし』(産経児童出版文化賞JR賞)、絵本に「女の子の昔話えほん」シリーズ、『つるかめつるかめ』など。小説に『きみはいい子』(坪田譲治文学賞)『わたしをみつけて』『世界の果てのこどもたち』『神の島のこどもたち』などがある。

「2023年 『世界の女の子の昔話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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