狐罠 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062648547

感想・レビュー・書評

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  • 骨董商の「旗師」宇佐見陶子は、同業者の橘薫堂(きくんどう)の主人・橘から贋作のガラス器をつかまされる。
    プライドを傷つけられた彼女は報復を決意するが、目利きの橘の目をごまかすことは容易ではない。
    そこで彼女は、別れた夫のつてを頼り、贋作の天才・潮見老人に協力を求める。
    一方、橘薫堂に勤める女性が殺され、陶子も殺人事件に巻き込まれてしまう。

    骨董の世界を舞台にした、古美術ミステリ。
    骨董業界という特殊な業界の事情をわかりやすく描いているのでとても読みやすかったです。

    贋作をつかまされるのは見る目が無いから、つまり騙される方が悪いという非情なルールがまかりとおる業界。
    そんな素人の想像を絶する古美術業界を舞台に、人の飽くなき欲望や駆け引きが描かれ、読み手はどんどん作品世界に引き込まれ、読み始めたら止まらないジェットコースターストーリーとなっています。

    陶子がどのようにして復讐を果たすのか、殺人事件の捜査が陶子にどのように絡んでいくのか、一筋縄ではいかぬ手に汗握る展開や途切れのない緊張感に最後まで気が抜けません。

    刑事のでこぼこコンビのしたたかさとか、潮見老人の不気味で迫力のあるキャラクターとか、脇を固める登場人物も個性豊かで魅力的でした。

    ただ、最初の導入部分はちょっとわかりづらかったです。
    まず主人公の陶子が橘に贋作をつかまされ、保険会社の調査員によって騙されたことに気づいた彼女は、その恨みを晴らすべく、復讐(目利き殺し)を決意する・・・という流れになっているのですが、彼女の心情が説明されないので、なぜリスクを冒してまで復讐を決意するのかが読み手には伝わらない。
    一筋縄ではいかない世界で一人で仕事をする女性が並々ならぬ気概を持っていて、そのプロ意識の高さゆえに復讐をするのかな?とも思うのですが、贋作作りに手を染めるというのは、明らかに「犯罪者側」に行ってしまうことなので一度そうなったら絶対に元の立ち位置には戻れないし、職を失う可能性もある。
    序盤の展開が早すぎて事情がのみこめず、陶子にも共感できないので読者が置いてかれる気がしました。

    お話自体は面白かったので続編も読んでみたいです。

  • 2017/5/31

  • 美人旗師宇佐美陶子が、贋作を掴まされ、その相手に「目利き殺し」を仕掛けるが、殺人事件に巻き込まれる話。登場人物が全員個性的。そして過去の因縁話や、真相がとても入り組んでいて最後まで気を抜けない読み応えのある作品です。

  • ラストまでドキドキさせる骨董界ミステリー。
    同じ骨董系のお話だけど、「孔雀狂想曲」とはうってかわってシリアスでシビアな話です。
    丁々発止のやりとりは「孔雀~」でも出てくるけれど。
    それから「花の下にて春死なむ」のビアバー「香菜里屋」が登場したり、別シリーズの主人公蓮丈那智も話の端に出てきたりでニヤリとさせられることしばしば。
    シリーズでこの先も続くので、読むのが楽しみ(※2010年以前の感想。

  • 北森鴻さん初読。
    主人公の陶子が橘薫堂の橘に贋作をつかまされ、プライドのために復讐を企てる。
    古物商のドロドロしたコン・ゲームを描いており専門用語が飛び交うが分かりやすく、ぐいぐい引き込まれていく。

    目利き対決の緊迫感のが濃密な分、殺人事件がやや印象が薄くなっているが最後まで楽しめる。

  • 2010/08/25

  • 蓮杖那智シリーズをずいぶん前に読んで、おもしろかったのを覚えていたので、手に取りました。

    本筋より、古美術の世界の常識というか、考え方の違いのようなものに惹かれました。
    せりがどのように行われるか、とか科学鑑定のしくみとか、鑑定書の不確かさとか・・・
    また、主人公の女性の仕事人としてのかっこよさにも惹かれました。

  • 再読。
    骨董に詳しくないのでどこまでリアリティーがあるのかは判断できませんが、そんなことは関係なく楽しめる緊張感に溢れた描写はさすがです。
    陶子さんの無理して突っ張っているところは無敵の蓮杖那智とは違う魅力がありますが、共通する凛とした雰囲気に最近のキャラ重視のトレンドとは違う北森氏のこだわりを感じます。

  • 20140831 全体の盛り上がりは良かったが最後のまとめ方がどうか。続編もあるので良かったのかもしれないがなんとなく逃げられたような気がする。

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著者プロフィール

1961年山口県生まれ。駒澤大学文学部歴史学科卒業。’95 年『狂乱廿四孝』で第6回鮎川 哲也賞を受賞しデビュー。’99 年『花の下にて春死なむ』(本書)で第 52 回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門を受賞した。他の著書に、本書と『花の下にて春死なむ』『桜宵』『螢坂』の〈香菜里屋〉シリーズ、骨董を舞台にした〈旗師・冬狐堂〉シリーズ 、民俗学をテーマとした〈蓮丈那智フィールドファイル〉シリーズなど多数。2010 年 1月逝去。

「2021年 『香菜里屋を知っていますか 香菜里屋シリーズ4〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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