狐罠 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062648547

作品紹介・あらすじ

店舗を持たず、自分の鑑定眼だけを頼りに骨董を商う「旗師」宇佐見陶子。彼女が同業の橘董堂から仕入れた唐様切子紺碧碗は、贋作だった。プロを騙す「目利き殺し」に陶子も意趣返しの罠を仕掛けようとするが、橘董堂の外商・田倉俊子が殺されて、殺人事件に巻き込まれてしまう。古美術ミステリーの傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • 店舗を持たず、自分の鑑定眼だけを頼りに骨董を商う「旗師」宇佐見陶子。彼女が同業の橘薫堂(きくんどう)から仕入れた唐様切子紺碧碗は、贋作だった。プロを騙す「目利き殺し」に陶子も意趣返しの罠を仕掛けようとするが、橘薫堂の外商・田倉俊子が殺されて、殺人事件に巻き込まれてしまう。古美術ミステリーの傑作長編。
    (1997年)

  • 古美術の贋作をテーマにしたミステリ。
    残念ながら著者は早逝しているよう。
    存外面白いので残念。他も美術や民俗学などあるようなので良んでみよう。

  • 旗師(店舗を持たない骨董商)である主人公・宇佐見陶子が、同業の橘薫堂から贋作を売りつけられたことで意趣返しの罠を張るが、橘薫堂の外商の女性が殺されたことで殺人事件に巻き込まれてしまう長編の古美術ミステリーです。
    陶子が意趣返しの罠を仕掛ける過程で登場する贋作家やその贋作家を紹介した元夫(芸術大学の教授を務める英国人)、殺人事件を調べる二人の刑事等々、登場人物たちがそれぞれ行動していく中で、陶子の作戦や殺人事件事件の真相が解き明かされていく過程にワクワクしましたが、意趣返しの決着に関してはアッサリと片付いてしまった印象がありました。とはいえ、巻末にある参考資料一覧の量からもわかるように古美術商や骨董商の話や陶器や漆器の制作について詳しく書かれており臨場感がありました。

  • 今は亡き作家の復刻版を大絶賛されてた方で読んだ。面白いけど長すぎるかな。

  • 旗師の女性を主人公とした古美術ミステリー。旗師・冬狐堂シリーズ第1作。
    だれが味方でだれが敵か。二転三転する騙し合いと駆け引きに、ぐいぐい惹きこまれる。

    登場する美術品や贋作技が詳細で、どこから創作なのかわからない。この作者のディテールには毎回感服する。浮世絵も蒔絵もやきものも(見るのは)好きで、年をとったらそういう趣味もいいかななんて軽く思ったこともあるけれど、とんでもない。甘く見てはいけない沼だな。
    それにしても、大英博物館にいってみたくなった。

  •  旗師の女性が活躍する、美術ミステリー小説。
     同業者に贋作を掴まされた主人公は、矜持を懸けて、元凶に意趣返しの罠を仕掛ける。
     さなかに巻き込まれた殺人事件の謎解きと、骨董業界に蠢く、曰くありげな者たちの思惑がひしめくコンゲーム小説でもある。
     美を扱い、鑑定する業界の奥深さ。
     醜悪なまでの泥臭さと、その先にある奇妙な高尚さ。
     美と醜さが共存、というよりも、表裏一体としてそこに在る。
     そして、時間の織り成す功罪。
     人間の業と、プロ同士の化かし合いが入り乱れる複雑な世界観の中、誇りを持って挑み続ける、ヒロインの凛とした涼やかさが際立つ。

  • 骨董業界の 騙しあい、ミステリー作品。
    最初から 最後まで、 面白い。
    骨董好きには、おすすめ。

  • 骨董商の「旗師」宇佐見陶子は、同業者の橘薫堂(きくんどう)の主人・橘から贋作のガラス器をつかまされる。
    プライドを傷つけられた彼女は報復を決意するが、目利きの橘の目をごまかすことは容易ではない。
    そこで彼女は、別れた夫のつてを頼り、贋作の天才・潮見老人に協力を求める。
    一方、橘薫堂に勤める女性が殺され、陶子も殺人事件に巻き込まれてしまう。

    骨董の世界を舞台にした、古美術ミステリ。
    骨董業界という特殊な業界の事情をわかりやすく描いているのでとても読みやすかったです。

    贋作をつかまされるのは見る目が無いから、つまり騙される方が悪いという非情なルールがまかりとおる業界。
    そんな素人の想像を絶する古美術業界を舞台に、人の飽くなき欲望や駆け引きが描かれ、読み手はどんどん作品世界に引き込まれ、読み始めたら止まらないジェットコースターストーリーとなっています。

    陶子がどのようにして復讐を果たすのか、殺人事件の捜査が陶子にどのように絡んでいくのか、一筋縄ではいかぬ手に汗握る展開や途切れのない緊張感に最後まで気が抜けません。

    刑事のでこぼこコンビのしたたかさとか、潮見老人の不気味で迫力のあるキャラクターとか、脇を固める登場人物も個性豊かで魅力的でした。

    ただ、最初の導入部分はちょっとわかりづらかったです。
    まず主人公の陶子が橘に贋作をつかまされ、保険会社の調査員によって騙されたことに気づいた彼女は、その恨みを晴らすべく、復讐(目利き殺し)を決意する・・・という流れになっているのですが、彼女の心情が説明されないので、なぜリスクを冒してまで復讐を決意するのかが読み手には伝わらない。
    一筋縄ではいかない世界で一人で仕事をする女性が並々ならぬ気概を持っていて、そのプロ意識の高さゆえに復讐をするのかな?とも思うのですが、贋作作りに手を染めるというのは、明らかに「犯罪者側」に行ってしまうことなので一度そうなったら絶対に元の立ち位置には戻れないし、職を失う可能性もある。
    序盤の展開が早すぎて事情がのみこめず、陶子にも共感できないので読者が置いてかれる気がしました。

    お話自体は面白かったので続編も読んでみたいです。

  • 2017/5/31

  • 蓮丈那智フィールドファイルで出て来た狐のねえさん「旗師」宇佐見陶子が主役の古美術ミステリ。殺人事件のほうがなんとなくぬるめでとってつけた感あり、差し迫らない感じはする。ちょっと話のとっかかりの陶子が贋作をつかまされてリベンジというモチベーションが無理矢理じみていて臭いが、陶子のキャラが存外下世話なので、ま、いっかと最後のほうは慣れて読めた。贋作師もかっこいいしねぇ、全体的にやたらとリベンジ色が強いのが非常にネガティブな印象。おもろいことはおもろかった。

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著者プロフィール

1961年山口県生まれ。駒澤大学文学部歴史学科卒業。’95 年『狂乱廿四孝』で第6回鮎川 哲也賞を受賞しデビュー。’99 年『花の下にて春死なむ』(本書)で第 52 回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門を受賞した。他の著書に、本書と『花の下にて春死なむ』『桜宵』『螢坂』の〈香菜里屋〉シリーズ、骨董を舞台にした〈旗師・冬狐堂〉シリーズ 、民俗学をテーマとした〈蓮丈那智フィールドファイル〉シリーズなど多数。2010 年 1月逝去。

「2021年 『香菜里屋を知っていますか 香菜里屋シリーズ4〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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