法月綸太郎の新冒険 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062734875

感想・レビュー・書評

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  •  中編が5本。以下は、ぎりぎりネタバレにならないように書くつもり。

     物理トリックの裏をかかれたような2本目、(当時の)世相と小道具を生かしたアリバイトリックの3本目、意外な犯人の4本目は、それぞれおもしろかったけど、プロットに少し無理があるような気がしてもう一つ感心しなかった。ただ、ささいな手がかりから犯人の考えた筋書きを読み取っていく感じは興味深い。ただ、まあ「解釈」の問題にとどまっていくような印象はある。

     うーんとうなったのは1本目と5本目。どちらも図書館が絡む(1本目は微妙だけど)、作者のいわゆる「図書館もの」である。トリックがどうしたというより、犯罪の裏にある人間心理の謎のようなものが前面に出てきている感じで、それが新鮮だったしおもしろかった。

     1本目は、電車の中での毒を使った死をあつかったもの。名探偵法月倫太郎が見つけ出す真相(=解釈)は、それだけでなかなかうまいものだけど、その先がよかった。事件が、まったく別の歩行から見えてくるような感じで、ある意味とても後味が悪いんだけど、人の心というものの不思議な動きと、いわば神の裁きとでも言うようなものについて考えさせられる。

     5本目は、「交換殺人」をテーマにしている。2人の犯人が相手を取り替えて殺すことで完全犯罪を企むのが「交換殺人」だけど、この古典的な内容を、実に見事にひねりを加えている。特に秀逸なのは「動機」に関わる部分で、はっきりいって救いようのない身勝手な殺人の話なのに、なんだか純愛物語のように感じてしまうから不思議だ。

     全体として、人間を駒のように使った単純なパズルではない感じがする。むしろ、駒であることからはみ出してしまう人間の心が、事件を複雑にする大要素であるという感覚でかかれているように思う。すべての中編で、それが成功しているとは言わないけれど。
    2009/4/6

  • 探偵法月綸太郎の短編集。
    どの作品もテンポが良くて読みやすく、面白かった。
    息子の出てくる(作者同名の主人公)モノはどれも好き。

  • 『背信の交点』
    けっこう好きかも。微妙ーに凝ってて微妙ーに劇的だわね、死に方が。これ一本で純文書けそう(笑)
    『身投げ女のブルース』
    仲代刑事はいったいどう思っただろう?と、そればかり考えてしまうなあ。「ちらりとも見なかった」って、見れなかったんだと思うよ…。

    『背信の交点』と『リターン・ザ・ギフト』がよかった。奇しくも両方沢田穂波嬢がでているなあ。

    これは個人の好みだと思うんだけど、探偵には糾弾してほしくないなあ。探偵は謎を解くもの。糾弾する人は、ほかにいると思うんだよね。探偵って、もちろん違うときもあるけど、大概の場合第三者でしょう。第三者になにがわかる!っていうのもあると思うのよね。だからといって罪を犯して良いわけじゃないんだけどさ。
    綸太郎の場合、そこまでやらんでも、というところまでつめよるので…お前何様?とか思ってしまうのだな、私は。そういう点では火村助教授のほうが好感が持てる。
    綸太郎は、北村薫の『秋の花』の彼女にも、「キミは逃げたじゃないか」とか言ってつめよりそうでコワイ。

    法月氏の作品は昔のほうが好みって言うか…良かったなあ。

  • せっかく虚構の世界を楽しんでいるところに、オウムや酒鬼薔薇事件など、現実にあった事件を思わせる文章があるのがイヤだ。作品世界が虚構であることを思い知らされてしまう。とくに時事性の強いものは、何年か経って読むとそこだけ浮いた感じになる。たとえ本筋とは関係なくとも、抜きがたい違和感がある。これだから日本の現代作家のミステリは読む気がしないのだ。が、これはタイトルに興味を惹かれて読んでみた。設定にも驚く。この人、ほんとにクイーンが好きなんだなあ…。これほどの敬意を前にほろりとせずにいられようか。(反語)

  • 11月9日読了。「このミステリーがすごい!」2000年度の第11位の作品。犯人によって・あるいは偶然に発生してしまうアリバイなどのトリックを探偵役、法月綸太郎が解決していくという短編集。相当な本格推理マニアらしい著者の趣味が遺憾なく発揮されている好編、というべきか?文体にも過剰な文学趣味などがなくある意味簡素で読みやすく、結構面白い。

  • 迷探偵法月綸太郎の短編集(全6話)。短編というより中編と言った方がいいボリューム。著者に珍しい鉄道もの「背信の交点」、法月警視が息子の推理で不可解な事件を解き明かす「身投げ女のブルース」などが印象的。

  • 2004年5月23日読了

  • 登録漏れしてた。 
    2010/12/3〜12/7

    少なくとも4年ぶりくらいの法月作品。
    法月親子の活躍する5作品+アルファが収められた中・短編集。
    「イントロダクション」、「背信の交点」、「世界の神秘を解く男」、「身投げ女のブルース」、「現場から生中継」、「リターン・ザ・ギフト」を収録。
     法月さん自身があとがきに書いているように、本格的なパズラー作品が並ぶ。ミステリ好きにはたまらない作品群。自分の好みとしては最後の「リターン・ザ・ギフト」か。
     穂波が図書館員の守秘義務のようなものを主張しているが、それを言うなら、法月警視はどう考えても捜査上の秘密を子供である綸太郎にばらしてるよなぁ。

  • 友達からいただいた本でする。少しエンジンがかかるまで時間がかかりました。短編なのですが、無理をしないで長編にしてもいいのに、と思いながら読んでいた。頭に来た?のは 「身投げ女のブルース」で一瞬「都筑的な」風味があり、心中(もしかして 意識している?!都筑風なアジェクティブを使っている!?)と不本意でござりましたがあとがきをみたらやっぱり彼を意識して書いていたやうでする。黄色の部屋はいかにして改造、、の時の彼とのインタヴュウを読みながら非常にはがゆかったのを再び思い出してしまいました。一ファンとしてのインタヴュウを望んでいたわけではなかったので、都筑を無上に愛するアタクシとしては許せるわけがありませぬ。以来法月さんは余り好きではない人としてカテゴライズされているのを再確認したわけでする。

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著者プロフィール

1964年島根県松江市生まれ。京都大学法学部卒業。88年『密閉教室』でデビュー。02年「都市伝説パズル」で第55回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。05年『生首に聞いてみろ』が第5回本格ミステリ大賞を受賞し、「このミステリーがすごい! 2005年版」で国内編第1位に選ばれる。2013年『ノックス・マシン』が「このミステリーがすごい! 2014年版」「ミステリが読みたい! 2014年版」で国内編第1位に選ばれる。

「2023年 『赤い部屋異聞』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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