下流志向 学ばない子どもたち 働かない若者たち (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062763998

感想・レビュー・書評

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  • 学習放棄、労働放棄が「消費主体」として正しいあり方という指摘を読んで、消費者としてのみの社会への関与は不毛だとの旨を書かれたのは誰だったか?と考えるが、忘れた。

    また、

    生徒「先生、こんなことやって将来何の役に立つんですか?」
    先生「こんなことも出来ない君達は将来何の役に立つんですか?」

    というコピペも思い出す。この本の内容自体はこのコピペに集約される。

    不快が貨幣として流通するからこそ、最近のビジネス本で”廻りを幸せにする”とかの文言が跋扈するんだなと認識する。

    現状を憂う意味で非常に有用な本であると同時に、ゲーミフィケーションの応用による労働環境の改善(二極化)を考える立場からも非常に有用であろう本。

  • 再読。
    「労働主体」ではなく「消費主体」となった子ども達が勉強しなくなったのは
    「買い手」として「不快という貨幣」と支払っている、という事。
    学び始める前にはその価値や意味や有用性が言えない、というのが
    学びの本質である、ということ。

    私自身、学びから大脱走していたので、おああ、、そうかも、、、
    と恥じ入りました。

    安易な自己責任論って、いかがなものか。
    傍からみると、自己責任社会になったら、
    何かのはずみで不利益を得てしまいそうな階層の人間も、積極的に「自己責任」を受け入れる。
    ホリエモンとは真逆の「搾取される層」が喜んで彼を支持する。
    これはどういうことなのだ?
    と数年前から考えていたので、かなりのヒントを貰いました。

    リスクヘッジは一人ではできない、ということ。

    努力が必ずしも報われないリスク社会において有利な位置を占めているのは、
    依然として努力している人々であるという逆説的事実。
    「君達ニートを扶養する社会的コストは引き受けない」といえば
    当のニートは激増する(「自己決定したことについては自己責任がある」という
    ロジックがニートを作りだしたと考えるので)というこれまた逆説的な事態。
    う~ん、あれか?義父が言ってた「現状維持を目指すと下降していく」
    というのに似てるのか?ちがう?

    長い鎖の一つの環で、その一つ一つの環の大きさよりも繋いでゆくこと、それこそが大事なのかな。

    それにしてもいつも内田樹(いつき)って読んじゃう。(たつる)さんね。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「その価値や意味や有用性が言えない」
      学びだけでなく、生きるコトも、人間関係も全て金に換算する世の中ですから、、、
      「その価値や意味や有用性が言えない」
      学びだけでなく、生きるコトも、人間関係も全て金に換算する世の中ですから、、、
      2014/04/04
  • 同書の文庫版。

    わざわざ紹介するのは、「文庫版のためのあとがき」が秀逸なので。

    たった二文で『下流志向』の内容を要約している。

    教育と労働の現場での子どもたち若者たちのふるまいに見られる理解しがたい趨向性を「下流志向」というふうにまとめてみました。

    彼らはそのような意思を持つようにイデオロギー的に誘導されているのです。

    あらら、やっぱり読んでみないと、内容は納得できないか・・

    お財布にも持ち歩くのにも優しい文庫版
    ぜひ一読をおすすめします!

  • 教育がサービスと化してしまったことの原因と弊害を描いた良著。この手の本の多くは「最近の若者は・・・」という自己責任論になってしまうが、きちんと構造的原因から解明している。

    子供は大人と対等に接したいために不快状態を取引のカードとする、という理論はハッとさせられる気づきを得た。自分も子供の頃「授業を聞いてやってるんだから面白くするのが先生の義務だろう」とよく口にしていた。そう、子供は大人と対等の取引をしたいのだ。子供はお金を介して取引行為は等価交換を学び、お金が無い場合は別の取引媒介を探す。その1つが不快状態。これはもともと等価交換を前提にした仕事の商談では当然のこと、恋愛の駆け引きでも当てはまる。「私は興味が無いですよ」という態度を取ることで相手より競争優位に立てるのだ。

    「取引で得をする」ことに快感を学んでしまうと、本来の意思を失うことにはならないだろうか。他人との関係性の中で自分を偽っていることは無いだろうか。競争優位に立とうとするばかりに興味のあることも興味の無いそぶりをしてしまうことはないだろうか。

    勉強しない子供やニートを自己責任論においてただ「けしからん」と言うのではなく、それを生み出した構造を明快に説明し、助け合いとコミュニティの再生の必要性までを示した気づきの多い作品だ。

  • 当座の報酬の期待値の低さ・不確定性に対し、経済合理性の下、消費者マインドで「こんなん何になるんだよ」と突っぱねちゃうのがニートと不登校、つまり労働や学びの拒否の始まり。

    その曖昧さや不確定性に対して「きっとなにかになるはず」と、気長かつ楽観的・期待的に身を投じて、労苦を負って行くこと。そして自己の不確定な変化という性質を認め、受け入れ、期待し、勘定に入れた上で学びに向かうこと。それらの勇気ある殊勝な態度が知性。

    また「自身の存立」時点で社会や周囲の人間から受けてきた恩義、つまりは贈与に負い目を認められ、その反対給付義務意識に駆られて積極的に労働という(返報)贈与を社会に行っていくこと。それこそ伝統的人間らしさ・文化人類学的知見に合致する労働者マインドであり、労働の倫理・哲学・美学である。

    ※ただこの倫理に関しては(薄給なだけならともかく)ハラスメントや長時間労働強制、肉体的・心理的安全性侵害が横行するような、日本に跋扈するブラック職場では成立しないと思うけど(2005年の本だししゃーなし?)。

    含蓄が多い本だと感じました。
    勇気と忍耐のある、道徳的な内発的動機づけに強く意志付けられた人間になりてぇ。

    • ゆうさん
      確かにリスクヘッジ全然できてへんなぁ。ぶっちゃけ絶望しか無いから、さらにリスクのこと、それに立ち向かうことを考えるだけでもしんどいわ。
      確かにリスクヘッジ全然できてへんなぁ。ぶっちゃけ絶望しか無いから、さらにリスクのこと、それに立ち向かうことを考えるだけでもしんどいわ。
      2024/02/12
  • 自分も含めてですが、コスパよく結果がでることや収入が得れるというのが一般的な時代になっています。そんな時だからこそ本書で述べられている
    教育という本質的な部分は忘れてはならないと感じました。親と子で学ぶ。なぜ勉強するか?そこは問わずに楽しいよね?学ぶって出来るってという変化をしっかりとみてあげること。子どもも含めて感謝をする。人間として大事な教育という土台をもう一回作り直して現行にも活かせる一冊だと感じました。

  • 冒頭の事例は「事実の一部」、「メディアで変に強調されているところだけ」を基にしているように思われたけど、「消費主体」という視点にはかなり納得。そしてリスクヘッジの意味を再認識させられた。

  • 「どうして勉強しなくちゃいけないの?」
    こういった子供の問いに、大人として最適なふるまいとは『絶句』してそのような問いは「ありえない」と斥けることだと著者は主張しています。

    なぜなら、その答えを教師から引き出すという体験によって、子どもがあるゆることにおいて自分に有益そうならやるし、気に入らなければやらないという採否の基準を身体化した『等価交換する子ども』になってしまうからだと言います。

    それは子どもたちが「家で労働する」という体験から自己形成をする機会がなくなり、その代わり早い時期から消費活動への参加を促されていることに原因があるとのことで、その説明は納得するところもあるのですが、平和で豊かな生活を送る日本の子どもが、勉強の意義を考えることがそんなに悪なのでしょうか?とも考えてしまいます。私もなんとなく考えたことあったと思うし。

    そんな質問に教師として「答えがない問いに答える必要はない」と斥けるのは、「つべこべ言わずにやれ」という昭和の感覚をよっぽど引きずっているのではとも思ってしまいます。
    「君は歴史で習った、戦時中の子どもの話を聞いてどう思った?これがその質問の答えになると思うから、一度自分で考えて、あとで先生に教えて」
    みたいな子どもに気付きや考える力をサポートするのが最適なのでは。

    ちょっと自分と意見が違うけど、子供をとりまく教育、家庭の構造がわかって面白かったし、色々考えるきっかけになりました。また読みたいです。
    ちなみにこのあと『ドラゴン桜2』を読むと、なかなか味わい深くなります。「考えるな!動け!」

  • 再読はしないけど、一度は読んで良かったと思う本。特に転職を繰り返す人の件は、自分自身がそうなので納得感があった。

  • 著者の的確な視点から見つめる現代の教育、改善点、問題は山積みであるが、やるべきことが明確になった。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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