山魔の如き嗤うもの (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.87
  • (67)
  • (145)
  • (94)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 925
感想 : 99
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062769181

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ■忌み山に隠れ住む一家の正体が意外中の意外。
    ■真犯人の正体とその犯行理由が盲点中の盲点。
    ■終盤目まぐるしく展開される多重推理は今回も健在。
    ■『首無』と甲乙つけがたい三津田ワールド全開の傑作!

  • 鉄板の面白さ!

    確かにシリーズ中、ある程度のパターンはあるものの全く飽きを感じさせない物語の魅力に感心至極!

    また作中の些細なくだりの中に、ミスリードも含めた重要な伏線がいくつも隠されていて、あとあと「なるほど〜」とひとりごちること頻り。
    兎に角、ホラー好きの私の興が最後まで削がれることなく、尚且つ推理小説としての質の高さも十二分に併せ持つ今作が今のところ私にはシリーズの頂点です!

    でも、我らの小説家探偵の見立て通りなら、かの家の子供の性別って? その辺の言及はなかったけれど、逆に意図的な感じが…いつか彼(彼女?)が戻ってくるとか…。

  • 20190805読了 言耶シリーズ④
    3.9評価で☆4つ

    覚書
    「忌み山の一夜」郷木靖美(ごうきのぶよし)
    原稿 奥戸(くまど) 乎山(かなやま) 
    しろじぞうさま、のーぼる 山魔が来る! 捜査会議
    くろじぞうさま、さーぐる 山魔は何をする? 六墓の穴
    あかじぞうさま、こーもる 見立て殺人の分類
    大惨事 たった一つの光明を導く謎 山魔、現る

    鍛取(かじとり)家の人々~力枚(りきひら)・将夫・月子
    鍛炭(かすみ)家の人々~立志・志摩子・広治・春菊・立春
       団伍郎・立一・セリ・平人・ユリ・タツ・立造
    郷木(ごうき)家の人々~虎男・猛・剛・豪・靖美
    吉良内立志(きらうちりっし)山師
    胆武(たんぶ)御籠り堂の修験者

    東城言耶シリーズ。もう少しホラー要素が強かったら
    いいなと思うけれど、最後の方で色々唸らせられる。
    そこが面白い。
    今回は、ちょっと盲点を突かれた感じでしたw

  • 三津田信三さんの、刀城言耶シリーズ。奥戸(くまど)と呼ばれる地域に伝わる忌み山、乎山(かなやま)。この山には山魔(やまんま)と呼ばれる山神様がいるとされていた。ある時、この土地に伝わる成人参りの儀式をしていた郷木靖美(ごうぎのぶよし)は、山の中で様々な怪異に逢い、忌み山に入ってしまう。そこで一軒の家を見つけ、奇妙な家族に一晩お世話になるが、翌朝目を覚ますと、密室状態の家から、つい先程まで食べていた朝食を残し、一家全員が消えていたー。

    山の中の集落、連続殺人、わらべ歌の見立て殺人、と、金田一のようなベタな設定ですが、最後の最後まで犯人が分からないのがさすが。
    そして最後の最後にゾッとさせるのも見事なんですが、まじもののごとき〜がインパクトありすぎて、ラストに期待しすぎてしまいがち。

  • ホラー映画がつまらなくなったとかなんとか、言われてたり言われてなかったりだけど、やっぱりホラーと言えばこの日本の山とか田舎にある忌まわしきもの系に敵うものなしやね。この漠然とした恐怖というか畏怖というか、そういうのはやっぱり幾つになっても怖い。いや、別に読んでてぶるっちゃうわけでもないけど、怖いもの見たさについつい止められなくなってしまうのね。
    こんなものを読んでしまった後には、ハリウッドとか最近のちょこざいなホラー映画でも観て、むはへー、とか言いたくなる。そうしないと夜に思いだしてドキドキしておしっこ漏らしちゃうしね。

  • 前の作品より読みやすかった。

  • ホラーシーンは、久々にゾゾーっと怖かったです。
    こういう田舎物のホラーミステリーって、横溝正史っぽくって好きです。

    でも、最後の種明かし、「これでもかーーー!!」ってほどに、真犯人説ツイストして引っ張る引っ張るぅー。
    最初から、ズバっと指摘出来ないものかなー。って思うけど、これが彼のスタイルだからしょーがないんだけど。。。

    でも楽しく読めましたー。

  • 『首無の〜』に続き、三津田作品四作目。やっぱ好きだなぁ、この世界観。今作はホラー対ミステリィの割合は3:7くらいでしょうか。編集者の祖父江偲が好きだw なんか可愛らしくて。前からいましたっけ?今後刀城言耶にどう絡んで来るのか、来ないのか楽しみ。大変満足でした!

  • 冒頭の手記の恐怖感がピーク。決して悪くはないにもかかわらず、いまいちハマリきれなかったのは、前作があまりにも凄すぎたからでしょうか。

  • 〇 概要
     郷木靖美という人物が忌み山で遭遇した数々の怪奇現象。最後には一家が家から消失してしまう。その謎を解くために,刀城言耶が奥戸という土地を訪れる。奥戸で起こる連続殺人事件。六地蔵の童謡の見立てにより起こる連続殺人。その謎を刀城言耶が解明する。多段的に解明される謎解き。最後の最後で明かされるその驚愕の真相は…?

    〇 総合評価
     時代設定は,1954年。戦後すぐの時代設定で書かれた本格ミステリには,独特の味がある。怪奇的というか,猟奇的というか…。この作品も,その例にもれず,怪奇風味を味付けにした古き良き時代風のミステリとなっている。長所としては,どこかで見たような雰囲気の作品なので,安心して読めるという点があげられる。短所としては,既視感=マンネリ感があり,オリジナリティに欠けるように思えてしまうところがあげられる。京極夏彦の百鬼夜行シリーズにも雰囲気が似ていると言えなくもない。 
     とはいえ,冒頭に郷木靖美の手記を置き,そこで郷木靖美が体験した怪奇現象を描き,本編のラストで合理的な解釈を付けるという展開はなかなか面白い。本編の殺人も,六地蔵の童謡の見立てにより,派手な殺人が6つも起こる。
     解決編で,いくつもの推理を上げていくが,一つの推理を披露している途中で,その推理を否定するという形で推理が進むので,ややインパクトが薄れる。一つの解決を示す→矛盾を指摘→次の解決を示す→…真相という感じではなく,一つの解決を示す→その途中で別の解決の可能性を示唆→別の解決の方が正しそうな雰囲気→いつのまにか別の解決にすり替わる…という感じ。
     最後には,ちょくちょく目撃者として証言していた胆武という僧侶が犯人と推理し,その胆武が鍛炭立造の息子というこれまで登場しなかった人物と推理。そして,それをなし崩し的に否定して最後は胆武が郷木靖美だったという推理で終わる。
     この解決が好きか嫌いかで評価が別れそう。考えながら推理するというか,真相が畳みかけられる解決が好みなら傑作と感じるだろう。これに対し,いまいち驚きに欠ける。もう少し綺麗に解決,矛盾,解決と示してほしかったと思う人には物足りないだろう。私は後者
     そういう意味でラストが惜しい。トータルの評価としては…★3で。

    〇 サプライズ ★★★★☆
     真犯人が,郷木靖美だったという点は素直に驚くことができた。「はじめに」で,「郷木靖美の原稿の登場人物には被害者も犯人も含まれていない」と書かれていた点も見事なミスディレクションになっていた。郷木靖美が忌み山で遭遇した怪奇現象は,ほとんど獣の仕業だったのはご愛敬。一家消失も,郷木靖美に対する立一一家の嫌がらせだったというのはちょっとしょぼい。とはいえ,その嫌がらせの仕返しに一家虐殺を行い,とばっちりで揖取力牧まで殺されてしまったという展開も,まぁ驚けた。

    〇 熱中度 ★★★★☆
     最初の郷木靖美の原稿がやや長かった。殺人が起こってからは割とテンポよく進み,この話をどう収束させるつもりだ…?と熱中して読むことができた。熱中度は高い。

    〇 インパクト ★★★★☆
     六地蔵の童謡に見立てて6人の人間が殺されるので,ストーリーのインパクトはある。冒頭の郷木靖美の手記にあるいくつもの怪奇現象もなかなか。全体的に漂う,古き良き時代の本格ミステリっぽい怪奇的な雰囲気もいい。総じてそれなりにインパクトはある。ラストの畳みかけるような真相も,ちょっとやり過ぎ感はあるが,インパクトがあるといえる。★4で。
     
    〇 読後感 ★★★☆☆
     郷木靖美が犯人で,行方知れずになるだけでなく,郷木高志まで行方不明になるというラストは,やや不気味。読後感はよくないのだが,物語全体が明るめな雰囲気なのと,登場人物やストーリーにリアリティがなく,それほど心に残らない。総合的に見ると,読後感はよくも悪くもない感じ。

    〇 キャラクター ★★★☆☆
     探偵役の刀城言耶,編集者の祖父江偲,警察の鬼無瀬など,少し昔の,古き良き時代のミステリに登場してきたような登場人物が目白押し。容疑者の鍛炭家も,いかにもという人物ばかり。これは狙ってやっているのだろう。この作品ならではの個性というものは薄いが,これはこれで,キャラクターは立っているともいえそう。★3で。

    〇 希少価値 ★☆☆☆☆
     人気シリーズの刀城言耶シリーズの第4作。各種ミステリ・ランキングで上位にランクインしている。人気作であり,希少価値はほとんどない。

    〇 メモ
    〇 「はじめに」で,「郷木靖美」の原稿の登場人物の中には被害者も犯人も含まれていないことをあらかじめ申し添えておきたいとあるが,これはミスディレクション。確かに,原稿の登場人物には被害者も犯人もいなかったが,原稿を書いた郷木靖美が犯人だった。
    〇 冒頭から131ページまでは,郷木靖美が書いた原稿という設定。全体の5分の1。ここで郷木靖美が体験した怪奇について,刀城言耶が一応,論理的な説明を付ける。
    〇 郷木靖美の原稿の中の謎
    〇 不気味な赤ん坊の声
    →野狐の鳴き声か,青鳩の囀り
    〇 賽の河原
    →三山と乎山の境目の河原だった。
    〇 正体不明の空中の絶叫
    →発情期の野狐が互いに呼び交わしていた。
    〇 おぞましい視線
    →狐や貂などの野生動物
    〇 山女郎
    →世間から虐げられていた老婆が人知れず獣道を通っていた。
    〇 火の玉のようなもの
    →ムササビ
    〇 山魔の呼び声
    →靖美を探しに来た兄たちの呼び声
    〇 姿なき山女郎
    →ユリという子どもの変装(靖美を脅すため)
    〇 山荘から家族が失踪(密室)
    →ユリという子どもだけが残り,密室にした。ユリは靖美がいた部屋に隠れた。
    〇 嘲笑った山魔
    →ユリという子ども(靖美を脅すため)
    〇 ダミーの解決
    →立一一家は,太平一座の役者達だった。
    〇 真相
    →立一一家が立治一家と同一人物だった。
    〇 ダミーの犯人=揖取将夫
    →犯人足り得る条件はあるが,犯人ではない。
    〇 ダミーの犯人=鍛炭立造の息子
    →鍛炭立造の息子=胆武という僧侶
    〇 真犯人
    →郷木靖美
    →郷木靖美が,胆武として犯罪をしていた。

全99件中 31 - 40件を表示

著者プロフィール

三津田信三
奈良県出身。編集者をへて、二〇〇一年『ホラー作家の棲む家』でデビュー。ホラーとミステリを融合させた独特の作風で人気を得る。『水魑の如き沈むもの』で第十回本格ミステリ大賞を受賞。主な作品に『厭魅の如き憑くもの』にはじまる「刀城言耶」シリーズ、『十三の呪』にはじまる「死相学探偵」シリーズ、映画化された『のぞきめ』、戦後まもない北九州の炭鉱を舞台にした『黒面の狐』、これまでにない幽霊屋敷怪談を描く『どこの家にも怖いものはいる』『わざと忌み家を建てて棲む』がある。

「2023年 『そこに無い家に呼ばれる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三津田信三の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
米澤 穂信
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×