美しいこと (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 159
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062774826

感想・レビュー・書評

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  • すっごいもやもやした終わり方。煮え切らない感情の堂々巡り。けれど人の恋愛って、こんなもやもやした感じなんだろうなー。松岡と寛末の関係が「美しいこと」?レビューからの期待値高過ぎた。

  • 木原さんの良さに開眼した作品。軽い気持ちで読み始めたのに、先が気になって気になって、読みきるまで眠れなかった。読書にそんな風にのめり込んだのは本当に久しぶり。

    ストレス発散のため、毎週金曜日の夜だけ女装をして街を練り歩く松岡。容姿に恵まれ営業をしている会社にも仕事にも大きな不満はなく、最初は軽い気持ちで始めた遊びだったのに、次第に深みにハマッていく。慣れた頃、調子に乗ったツケで酷い目に遭い、帰宅出来ず途方に暮れていたところで寛末の無償の優しさに触れたところから『美しいこと』は始まる。

    とても丁寧に松岡の視点で進むストーリー。日常が変化するのは些細なキッカケで、それが転がりだしてしまうと自分の手を離れ収拾がつかなくなっていく途中で後悔し初めてもどうにもならない…。頭ではわかっていても止められない事ってたくさんある。むしろ人生はそんなことだらけかも。その最たるが恋愛じゃなかろうか。
    端からみたら、寛末はいろいろヒドイ。一緒に仕事してたらイライラするタイプな気がする。寛末を陥れた福田みたいな真似はせずとも、気に入らない気持ちは良くわかる。 葉山との付き合いだってかなり酷かった。いくら優しくったって、あんなに気が利かない男の何処がそんなに良いのか…。読みながら、そんな寛末を振り回していたのに段々振り回される立場になってしまった松岡を不憫に思った。
    松岡は仕事も出来るし周りにも気を使えるし、自分を抑えてでも周りを優先する事ができる『良い男』だと思う。その性質や振る舞いは明らかに男性なのに、寛末の前だとものすごく『乙女』になってしまう。それは「葉子」として愛されたからかもしれないが、読みながらそのギャップに萌えた。何気なく振る舞うスーツ姿の成人男子が、心の中ではプルプルしながら涙したり…なんて可愛い生き物なんだろう、松岡(泣)
    唯一理解出来なかったのが松岡の恋心だけど、読むうちにスッカリ情が湧いて「あんたが望むなら」と寛末との恋を応援したくなったが、カミングアウト後の寛末の混乱ぷりにも同情の余地はあった。あそこで、読者(というより私)の気持ちと共に松岡の気持ちも冷めてしまえば良かったのに!その後もあんなに振り回されて苦しむ事もなかったのに…。

    何度も寛末を忘れようとして、松岡はとてもとても頑張っていた。それを松岡視点で知っていたから、読みながら寛末が憎くて憎くて仕方なかった。もしかしたら寛末視点でもたくさんの葛藤があったのかもしれない。そう考えても、寛末への憎しみは募るばかりだった。
    ラストまで二人を反対する気持ちで読み続けたのに、松岡の台詞にやっぱり「あんたが望むなら」と応援してしまう気持ちは、多分ずっと見守っていて既に母性に近い。どっちも仕方のない男だ。この先は良い方へ転がるとイイね松岡…(涙)としみじみ読後の感慨に耽っていたら、なんと新書版には続編が収録されてるらしいじゃないか!!
    何故文庫はここで終わらすのか(号泣) 松岡が幸せになる姿を読ませてくれないのかヾ(;゚;Д;゚;)ノ゙ 余韻の残る美しい終わり方だけど、人間はそんな綺麗なもんじゃない。ここまで松岡と一緒に傷付いてきて、もしかして更に傷付くのかもしれないけれど、この恋を見届けたくて新書もポチった。ショーコさんのイラストに惹かれて上下でポチった。

    オマケのオマケで、さらにその後の二人が描かれた全サ小冊子が電子書籍で読めると知り、光の速さでポチった。松岡、幸せになれるのかい…?
    共に泣いたりはしなかったけど、読者としてずっと彼の苦しさの傍らに居た。私は別に、松岡の相手が寛末じゃなくても構わない。でも、松岡が強く強く寛末を求めて「あの男がいい」のだと言うなら、「あんたが望むなら」と許してしまうと思う。私が寛末を許せなくても、松岡が赦すなら仕方ない。
    だけどどうか、これ以上松岡を泣かせないでください。

  • (368P)

  • せつない~。松岡がどんなにひどくされても、それでもやっぱり好きと思ってしまうところは、共感できてしまう。
    この二人に幸せな未来があるといいな。
    続きが気になるので、新書版の購入を決意した。

  • 前作に大興奮してからの作家買い。けれど、個人的には前作が素敵すぎて、ちょっと物足りなさを感じてしまった…。ドライに振舞いつつも、根底の黒い感情を隠しきれない、そんな男性目線の繊細な恋愛描写が大好きでした。

  • BLとして出された新書の文庫化。

    http://www.horizon-t.net/?p=1208

  • さすが木原さん…!
    ことごとく予想と違う展開になっていき、読んでて辛い切ない気持ちになるのに読むのを止められないほどひきずりこまれました。

    いくらきれいでも、抱きしめたりしたら男とバレるよね…なんて思ったりもしたけど、まぁそれはそれとして棚上げして読むのがいいと思います。

    受の松岡は本当にいい男ですね…

  • ノンケが女装した男に惚れることなど絶対にない。『箱の中』が傑作だっただけに残念な設定。

  • モデル並みの美しさ。完璧なモテ服コーディネイトに思わせぶりな態度。絶対的恋愛強者でした。女装だと男だとバラすまでは。
    容姿で誑し込めず、結婚できない子供産めないというハンデ、性的指向の不一致。恋愛弱者に転落したエリートイケメン松岡。
    何事もソツなく生きてきたはずなのに、ヘタレ男寛末のつれない態度に振り回されてはイラつき、届かぬ想いに身悶える。なんて素敵!…いや、すいません。切ない、です。
    人の気持ちの不確実さ、曖昧さをきちんと描いているところが良いです。
    好きってどこらへんが好きなの? と改めて考えてしまいます。

  • 静かで物悲しい恋愛小説だと、思った。
    松岡を女々しいなと思うが、それほどまでに、狂おしいほどに寛末を好きでいるのだと思える。
    後半、葉山に対して嫉妬をしては自己嫌悪に陥る。どうすることもできない思いに悩みひきちぎれそうなほどに苦しんでいる。
    しかし、苦しいという思いだけが一貫していて、その原因は愛である、ということ。そのひたむきさ。

    荒々しい感情であるはずなのに深海のように静かでもあると思えたのは何故だろう?

    最後、転んだフリをした寛末。
    あんなに無神経で無頓着なのにそういうことが出来てしまうずるさはあまりにも卑怯だ。恋をする男に、そんなことをされてしまったらもうなくしかない。涙しか出て来ない。かなしくて苦しい、のに、寛末のなかにほんの少しの希望があることの仄暗い喜びが、美しく、せつない。

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著者プロフィール

高知県生まれ。1995年「眠る兎」でデビュー。不器用でもどかしい恋愛感情を生々しくかつ鮮やかに描き、ボーイズラブ小説界で不動の人気を持つ。『箱の中』と続編『檻の外』は刊行時、「ダ・ヴィンチ」誌上にてボーイズラブ界の芥川賞作品と評され、話題となった。ほかの著書に『秘密』『さようなら、と君は手を振った』『月に笑う』『ラブセメタリー』『罪の名前』など多数。

「2022年 『コゴロシムラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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