- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062774826
感想・レビュー・書評
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本作『美しいこと』は、BL界で不動の人気を持つ木原音瀬(このはらなりせ)氏の代表作である。
正直に言おう、BLは苦手だ。
ヘテロセクシュアルの女性達が、ホモセクシュアル(バイセクシュアル)同士の営みを描いた漫画や小説を好む心理に違和感を感じている。
その昔、とある「腐女子」に当時の彼氏を餌食にされ(笑)、そのデリカシーの無さが一層BLを撥ね付けさせた。
しかしBL界の芥川賞とも謳われた第二の代表作『箱の中』はその設定に惹かれ(平たく言えば獄中BL)、猛烈に読み進め、違和感無く読了した。
疑心暗鬼の心を解いたのは、その文章力だった。
続編の『檻の外』にも全く期待を裏切られず、寧ろとても良い読書体験となったのだ。
本作は、主人公が交際していた女性の洋服やメイク道具を拝借し、ストレス解消として始めた女装が、ひょんな事から出逢った男性と愛し合う切っ掛けとなる。
元々二人も、ヘテロセクシュアルだ。
紆余曲折を経た物語は結末を見せずに幕を閉じる。
「その後」は、読者の中に生きる二人に委ねられた。
最後までBLと言う要素が主張してこないにも関わらず、その分野の愛好家にも愛されるのが『箱の中』読了時と同様、不思議な点として残った。
多くのBL作品に漂う性的な危うさを排除しても、文芸として広い層に受容される。
大手の版元から文庫として出版されている事からも、彼女がBL界の風雲児である事が読み取れる。
本作も、紛う方なき文芸作品であるからこそ、BL界から反旗を翻してデビューする事が叶ったのだろう。
最新作『Love Cemetery』は、幼児性愛を取り扱う。
文芸界でも、もっと評価されるべきだろう。
<Impressive Sentences>
「お願いだから……」
声が震えた。
「俺が寛末さんを好きだってことを、逆手に取らないで……」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
恋をした方が弱くもなり強くもなる。
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心底惚れた女が実は女装男子だと明かされて、距離を置こうとしたら逆に付きまとわれて…と中盤まではこれホラーかな…と若干寛末に同情しながら読んでいた。しかし、寛末への気持ちを忘れようと苦しむ松岡が切なくて、もどかしくて、最後にはちょっと泣いた。反対に、最後まで煮え切らない寛末にはモヤモヤさせられたけど、ある意味リアルなのかも。ただ、葉山さんへの態度などを見ていると、優しいというよりただの優柔不断のだめ男のような気がして、この2人の幸せな未来のビジョンが見えてこなかった。タイトルの「美しいこと」ってなんだろう?寛末は果たして松岡の外面の美しさだけではなく、内面の美しさに目を向けてくれる男だろうか。
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性別を超えるくらい好きになってくれればいいのに、と望む松岡。
どんな姿であっても愛せる、という寛末の言葉を聞き、真実を打ち明ける。
裏切られたと苛立ちを隠せない松岡だが、寛末の反応は自然かと。性別を偽られていたら、やっぱり騙されていたと思ってしまう。
それでも、真実の愛の前に性別って枷にしかならないのかもしれない、など考えさせられる一冊。叶わぬ愛の苦しみも伝わってくる。
不器用で鈍感で…純粋な寛末がたどり着く答えとは。 -
いやー、全然知らずに手に取ったら初のBL小説。色々勉強になりました。
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女装した自分を好きになった彼に男と告白し愛されていた女装の自分と愛されない男の自分という構造に苦しめられる松岡。
嫌われても尚愛してしまっている松岡、、切ない。 -
ううん最後がとてもモヤっとしましたがとても丁寧で素敵な関係の築き方が書かれていました。
初めて商業BL小説を読みましたが、とても読みやすくて内容も好きでした。
ノーマルな2人がどのようにして惹かれ合うのかが丁寧に書かれてました。ただ、果たしてこの2人が今後どのようにして幸せになるのかがわからない終わりかただったので物足りなさがなくもないです。
でも、主人公の松岡がとにかく素敵。男としての魅力も多く持っているのに、これが男に惚れて苦しむ様子はたまりません。性格も容姿もとても素敵な人物なんだと思います。こんなに素敵な人なら惚れても仕方ないな〜とか思ったりしました。 -
前に読んだ作品は興味深かったが、今回はちょっと期待外れだった。主人公の心の内の描き方は上手いが、作品の進め方にどこと無く違和感や無理な所を感じた。
でも「俺が寛末さんを好きだってことを、逆手に取らないで...... 」のフレーズは切なくて綺麗だと思った。 -
BLで有名な作家さんとは知らずに購入。
途中、煮え切らなさにイラつきましたが思いの外、面白かったです。
そっち系に目覚めることはないと思うけれど、この作家さんの他の本も読んでみたいなぁ。