美しいこと (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062774826

感想・レビュー・書評

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  • 男が男を愛する。
    それは世の中では少数派なのだろうが、完全に否定してしまうほど嫌悪感を抱くものではない。
    たぶん身近にそういった例がないせいだろうけれど。
    愛するという感情はとても不安定で身勝手で傲慢なものだ。
    気持ちが高ぶっているときにはどんな言葉を口にしてもその時点では真実なのだろう。
    あくまでそのときの、そのときだけの真実なのだけれど。
    最初は軽い気持ちで寛末と付き合っていた松岡の変化が切ない。
    より多く好きになったほうが恋愛の駆け引きではどうしても分が悪くなる。
    松岡の「好きだってことを、逆手に取らないで…」という言葉は寛末に本当に届いただろうか。
    恋愛に限らず、何かを決断するときに誰かに委ねたほうが楽にきまっている。
    失敗したときに誰かのせいに出来るからだ。
    それがわかっているからこそ、松岡は寛末自身に決断してほしかったのだろう。
    二人の未来に何が待っているのかはわからない。
    でも、松岡の気持ちがどんな形であれきちんとした形で決着できればいいと思う。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    別れた女の服を着て、夜の町を歩き男の視線を浴びる快感にはまった松岡。ある夜、行きずりの男に乱暴された松岡を救ったのは、会社の冴えない先輩・寛末だった。寛末の純粋な愛に惹かれた松岡は「女装」のまま逢瀬を重ね、告白を受ける。叶わぬ愛の苦しさと美しさを描き、舞台化もされた、木原音瀬の最高傑作。

    いわゆるBLに属する小説のようですが、前回の箱の中がかなりよかったのでもう一冊読んでみました。露骨な性的描写はほとんど無くでプラトニックな恋愛です。自分に男色要素が無い為、主人公が女装を辞めた時点で自分としてのときめきは無くなりましたが、話はそれから先が本番。報われない思いに胸を焦がす姿は、昔制約の濃い時代の恋愛のもどかしさを現代に表現するにはBLが一番しっくり来るのかもしれないですね。

  • 松岡が一途で気が遣えて素敵すぎた。

    女装姿の江藤葉子として寛末と出逢って、恋に落ちてってところは凄く好きでした。

    寛末さんが余りにも甲斐性無しで、なんだか読んでてモヤっとしてしまい、他にも良い人いるよ!って思いながら読んでました。

    同性だからって理由で松岡を遠ざけた寛末は、結局は女性のフリをしてた松岡の姿に惹かれた。でも松岡を振った後で知り合って付き合い出した松岡の同期である葉山に松岡の評価を聞いて、松岡の事が気になり出したって事は、結局はそこに寛末の気持ちはないような気がして。

    その決断を、今後しっかり寛末が決めてくれる事を信じて☆は4つ。

  • 最初にはっきり申し上げておきますが 私は腐女子ではありません!!で、これ?BLです。前回、BLとは知らずに同作家の「箱の中」を読んでなかなか面白かったのでこちらも購入。変ないやらしさがまったくなくて むしろせつないお話でした。一気読み。BL毛嫌いして読まないのは勿体無いと思える作品です。音楽も小説もジャンルで選んじゃダメだね←

  • 恋愛対象の判別を行うとき、 多くの人が最初にみるのが性別。
    いいえ、大多数の人はきっと性別なんか気にしないでしょう。

    なぜなら私たちの世界は(生物学的な)男と女が惹かれあうのは「当たり前」の社会だから。

    でも、出会ってしまった。 好きになってしまった。
    そして、一度は思いが通じてしまった。

    一度一番近くまで許されてしまったからこそ、その後の拒絶が切なくてやるせない。
    姿はいくらでも変えられるけれど、心は一人一つ。
    使い分けるような器用な真似なんて出来るはずもありません。

  • 本当に面白くて、でも切なくて、もどかしくて、、
    同性愛の葛藤がここまでしっかり描かれてるものはなかなか出会えないかも…。途中から最後までずっとずっと切なかった。どんな終わり方なんだろって気になって仕方なかったけど、最高によかったです。(2023.8.)

  • とてもとても、好き。
    同性愛なのだけれど、それに至るまでのふたりの(主に主人公の)葛藤がとても好き。

  •  女だと思ってたときの押し押し加減と、男だと知った後の絶望感が、当たり前なことかもしれませんが滑稽で笑えました。
    主人公かわいそうだった!あんなに求めてるのに疲弊していって。
    最後に自分が攻めを好きだって気持ちを逆手にとらないでって言ってるのがきゅんとしました。
    可愛すぎた。

     新書版にしか収録されていない「愛しい人」を早く読みたい全部読めてないと思うと心が煮え切らない!
    文庫化は素敵なことだけど、全部読みたいBLクラスタは買うとき考えて買わないと結局新書版を買い直す羽目になるので二度手間ナウです。

  • 男と女のあいだにある、「存在」としての途方もない距離。
    「男であること」と「女でないこと」は等価ではない。

    松岡と寛末との間の倒錯した行為の陰で、『旧約聖書』の『創世記』の、神が人の男女を造り出すくだりが思い浮かんだ。
    神は土から男を造り、そのあばら骨から女を造った。
    つまり神は、人を男と女としてしか造らなかったのである。

    男でありながら、男性性を保ったまま男である寛末を愛してしまい、結ばれることさえ願ってしまった松岡は、その瞬間、男でも女でもなくなって、もはや人であることすら放棄していたのかも知れない。
    けれど耐え難い痛みを感じて、肉体感覚を取り戻して、彼は人間に戻ってしまった。
    ずるくて、優柔不断で、嫉妬深くて、欲深くて、自分のこころさえ儘ならない、ただの人間に。

  • 以前、新書版を読んだときは、痛々しい話にしか思えなかった。BL小説初心者に、木原さんのハードルは高い。そのハードルを越えた人が信者になっていくわけだが。今回は、後半部分がカットされたせいか、けっこう印象が変わった気がする。恋のどうしようもなさも、男同士に悩む姿も、どっちもリアルだ。

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著者プロフィール

高知県生まれ。1995年「眠る兎」でデビュー。不器用でもどかしい恋愛感情を生々しくかつ鮮やかに描き、ボーイズラブ小説界で不動の人気を持つ。『箱の中』と続編『檻の外』は刊行時、「ダ・ヴィンチ」誌上にてボーイズラブ界の芥川賞作品と評され、話題となった。ほかの著書に『秘密』『さようなら、と君は手を振った』『月に笑う』『ラブセメタリー』『罪の名前』など多数。

「2022年 『コゴロシムラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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