美しいこと (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.97
  • (158)
  • (175)
  • (86)
  • (32)
  • (8)
本棚登録 : 1676
感想 : 160
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062774826

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み

  • 女装する男と彼を女性として好きになってしまった男の人間像が生々しくて…女装を解いた瞬間からが本番だった。恋の醜さも人間のずるさも強さも全部ひっくるめて愛おしかった。

    もともと恋愛対象が女性だった男が同性を好きになる過程について、こんな残酷に、こんな赤裸々に丁寧に書くことってある?女装を解いた瞬間、一度は拒絶した相手を、第三者からの又聞きの像でまた興味を復活させる過程も「俺の言葉は信じなかったのに第三者は信じるんだ?」っていう人間の妙。


    好きになって、一度拒絶されてから、相手のダメなところもどんどん見えてくるのに、それでも好きをやめられないとか……特別見た目が良いわけではない、人柄や能力が優れているわけではない、そんな人を好きになる理由なき引力にこんな説得力を持たせられる残酷…

    最後の切々とした文章がまた後を引きます。

  • 続きが気になって急いで読んでしまいました。
    心の中で報われてほしいって祈りながらページを捲る手が止まりませんでした。

    ギリギリ両思いに着地しないBLっていいね、、

    優しかった人が一変して冷たくなる怖さ身に覚えがある
    セックスのとこ泣きそうになった

    これからも主人公がこの男に縛られるのだと思うと希望にも絶望にも感じてしまう

    相手のこと好きな感情が大きいほど、幸せになれない矛盾


    続編があると知り喉から手が出るほど欲しい

  • 同性である故の苦しみや、嘘をついて後に引けなくなる葛藤っぷりは文章からよく伝わってきた。けれど、松岡の寛末に対する要求(どんな姿でも好きと言ってくれたのだから男であっても愛して欲しい)は、些か呆れるものがある。
    一方的に変わってほしい、愛して欲しいという松岡の気持ちに感情移入したり共感するというよりも、傲慢さが目に付き苛々しながら読んでしまった。
    高評価である理由がよくわからなった作品。未収録の「愛しいこと」を読めれば評価は変わるかも…。

  • 女装しつつ寛末と付き合っているとき、作品の前半部分のドキドキ
    甘酸っぱーい通り越してプラトニックなのになんでこんなにエロいんだろう、、、
    そして後半、好きになった人が男性でって衝撃と戸惑いと寛末さんのキャラクターで
    戸惑い、悩み、迷っているのがよくよくわかって
    リアルな感情ではないのだろうけど
    それでも惹かれている様を読むことができて
    すっきりしました
    好きです

  • 端的に言うと、女装をして出会った男女ならぬ男男の結末は…!ってお話。
    ストレス発散に週末女装をすて街に出た松岡。酷い目に遭って、街でうずくまる彼に声をかけるものはなかった。しかし寛末だけが親切にしてくれた。彼は同じ会社の先輩にあたる別部署の人間で、でも女装をした葉子として会うことはお礼を済ませてからはないはずだった。
    しかし寛末の朴訥とした柔らかな雰囲気にズルズルとメールを続け、そしてまた会い、不器用ながらも恋心を伝えてくる寛末にいつしか松岡の方が惹かれていく。
    それでも寛末が好きなのは葉子であって自分じゃない。いつか、いつか言わなければと先延ばしにし、ついに松岡は打ち明ける。
    楽観的にまた恋人のように過ごせると思っていた松岡だったが、それからの寛末は人が変わったようになり…

    終盤苦しい。寛末を責めたくもなる。でも寛末の気持ちもわかる…超絶美人のお嫁さんにしたいと思った人が男。
    終盤の寛末はなんかズルイ感じがして、松岡ももうよくない???って思ったりもしながら読みましたが、惚れた弱み…

  • BLにおいて葛藤の最たる要素である性別という問題にここまで真剣に挑んだ作品もないのではないか。あなたが少女でもおばあちゃんでもいい、と言ってくれた相手は、男であることを明かした途端に引いてしまった。
    ラストの松岡の台詞にグッときます。恋した方が負け。

  • 友人のBL好きの人に勧められて読破。

    木原音瀬さんの作品は初めてで、男性同士の恋愛ものですが、普通に楽しめました。
    読後感としては、「え?ここで終わり?」という感じでした。

    ただ丁寧に登場人物のことを描いていて、文章の表現力は素晴らしかったです。丁寧に書いている分、ダラダラ感は否めませんが、人を愛するという過程としてはリアル感があるように感じました。

    BL小説は初めてでしたが、普通の恋愛小説としても楽しめて良かったです。

  • 2019年6冊目。

    人を愛するってどういうことなのか。

    無償の愛と呼ばれるような精神的な愛の場合、対象の性別を問われることはほとんどないのに、性的欲求が絡んだ途端、対象が同性であることはマイノリティになる。

    寛末に拒絶され関係が壊れても想いを断ち切れない松岡と、恋人関係にありながら自分は寛末に愛されていないのではと不安がる葉山の、それぞれが恋をする気持ちは根本的に同じものだ。

    なのになぜ、同性愛は受け入れられないのか。
    その主題を、それこそ読者が苛立ちを覚えるほど丁寧に描き出したから、この人の小説は文芸として評価を得ている。

    愛されたいと願う。
    その願いから起こしたはずの行動が空回るたび自己嫌悪に陥る。それでも、誰かを愛しいと思うその気持ちは美しいこと。

    江藤葉子に対する寛末の接し方と松岡や葉山に対する寛末の接し方の落差がありすぎて、最終的に私のなかでの寛末の人間的魅力はゼロになったので、もし寛末と松岡がうまくいったとしてもあっというまに破局するのではないかと思わなくもない。
    そもそも松岡も寛末も福田も藤本も、ほとんどの登場人物がうんざりするほど自分勝手なのだけれど、まあ人間の本質なんてそんなものだよね。葉山にしても、事情を知らない人から見れば、イケメン同期に恋愛相談を持ちかけては人前で泣く面倒な女性だし。


    conclusion────
    「お願いだから……」
     声が震えた。
    「俺が寛末さんを好きだってことを、逆手に取らないで……」
     遮断機が降り、ガタンガタンと電車が行き過ぎる。「すみません」の謝罪は電車の音に掻き消された。
     早く好きだと言って……握り締めてくる右手に、松岡は願いを込めた。自分だけを好きだと、ほかが目に入らないぐらい好きだと言って。こんな気持ちから、早く助けて……。
    ─────────

  • 人を好きになることでこんなにも傷つき合わなくてはいけないのかと、哀しさのような切なさがまとわりつきました。

  • 何もかもがただただ美しい
    ゆっくり読みたいのに先が気になって
    生き急ぐように読んでしまう

全160件中 41 - 50件を表示

著者プロフィール

高知県生まれ。1995年「眠る兎」でデビュー。不器用でもどかしい恋愛感情を生々しくかつ鮮やかに描き、ボーイズラブ小説界で不動の人気を持つ。『箱の中』と続編『檻の外』は刊行時、「ダ・ヴィンチ」誌上にてボーイズラブ界の芥川賞作品と評され、話題となった。ほかの著書に『秘密』『さようなら、と君は手を振った』『月に笑う』『ラブセメタリー』『罪の名前』など多数。

「2022年 『コゴロシムラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

木原音瀬の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×