贖罪の奏鳴曲 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062776660

感想・レビュー・書評

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  • すごい、読み終わったあとは、なるほど贖罪か、と納得の溜息の出る作品だった。
    中山七里は「カエル男」が最初で、御子柴シリーズがあるのはそれで知ったけど、金に汚い悪徳弁護士ということで、リーガル・ハイ的な、基本憎たらしい嫌味な弁護士なんだろうなと思っていたけど…
    過去編ですっかり心持ってかれた。

    犯罪者の更正で見かけるのが、「被害者の分まで生きるのが償い」とか、「自殺するなんて逃げ」とか諭されて改心し謝罪と後悔を繰り返す、なんてのがまあありがちで、安っぽくて辟易してた。
    でも今回、さゆりさんのピアノ演奏で御子柴が今まで感じたことのなかった平穏、心が砕けていく場面、
    そして2人の友人の死や教官との出会いで他者への関心を寄せ、そこで初めて殺したみどりの未来や苦しみを考えるシーンはすとんと心に落ちた。
    「罪を償うのは義務じゃない。罪びとに与えられた資格であり権利だ」
    この言葉に尽きるなと思う。被害者に許してもらうための償いでなく、あくまで加害者自身がこの先の未来を平穏に生きるための手段が償い。

    そして今まで渡瀬さんが、なんか万能感出ててあんまり好きじゃなかったんだけど、
    最後御子柴を救うシーンのセリフ、「犯人は…ってんだろ。知ってるよそんなことは」でなんかぶわって鳥肌たった。正義と悪人がかち合ったというか。かっこよかった。

    中山さんの作品は、カエル男、再び、護られなかった者たちへ、さよならドビュッシーで今回5作目だけどハズレがない。
    次は追憶のノクターン。たのしみ。

  • 犯人が最初から分かっているタイプミステリーか〜って思いながら読んでたらまさかのどんでん返し…中盤の主人公の過去回想から一気に読んでしまうほど、途中からの加速が凄かったです!

  • 面白かった
    次のシリーズも読もう

  • 主体であるはずの御子柴礼司の考えを追っているという渡瀬刑事の洞察も冴える。一方で御子柴礼司の生い立ちから稲見教官の関わりが御子柴弁護士の根幹に影響を大きく与えた事が上手く表現されている。憲法第39条(最高裁にて無罪と確定した事件では有罪にできない)にもさりげなく触れ、中山七里の音楽の表現力を存分に発揮した作品で楽しめた。

  • 最初はふーんという感じだったが、
    途中から、どんでん返しというか、どんどんオセロが裏返っていく感じ。
    気持ちよくてドキドキして、とまらなかった。面白かった!次もすぐ読む!

  • 面白かった。いゃぁ、面白かった。

    裁判ものはやはり読んでて面白い。
    どうやってここから巻き返すのか?というのをドキドキしながら読める。

    主人公はダーティーなイメージを持つ異端の弁護士。

    最初から遺体を処理する場面からスタートする。
    「え?主人公が殺人犯?」
    と思わせる所から始まる為、よくあるクライムヒーローを描いたものかしら?と読み進めるが、ストーリーの展開のさせ方が面白い。

    てっきり冒頭の遺体についての事件が進むのかと思いきや、主人公が引き受けている国選弁護についての事件が中心となっていく。
    中心とはなっていくのだけれど、しっかりと関連が明らかになっていく。展開もスピーディで面白い。

    あと面白いのが、主人公の過去の経歴だ。人を殺したことがあるという普通はあり得ないような過去を持つ。
    主人公の少年院での女子受刑者が弾くピアノや親代わりの看守との出会いにより贖罪の意識が芽生え、現在に繋がっていく。なぜ弁護士になったのかのきっかけが描かれている。

    冒頭の遺体処理のインパクト、主人公のバックボーン、裁判の展開の見事さ、真相の解明のスッキリさ。どこをとっても面白かった。

    さよならドビュッシーで有名な中山七里さんなので音楽にまつわるシーンはやはり音楽の圧力を感じる見事な描写だった。その部分はあまり本筋には関わってなかったが、別シリーズで描かれていくのだろうか、楽しみだ。

    御子柴弁護士シリーズの1作目ということなので、今後の作品もぜひ読んでみたい。良作。

  • 単行本からの転載。

    本屋で見つけて気になって購入。一気に読んだ。おもしろかった。
    法廷でのやり取りや、話の持って行きかた、事件の二転三転は非常におもしろく読めた。
    最後まで読むと御子柴より渡瀬の方が上手だったのかなという感じ。
    二転三転でおお!と思ったのにラストはあっさり。

    御子柴の過去の話がいささか受け入れにくかった。感情を取り戻すくだりがややファンタジーじみてる感も。でも、現実もこんなものかもしれないとも思った。
    贖罪についての稲見の言葉、御子柴に接する態度が印象深い。

    個人的に渡瀬と古手川のコンビがよかった。特に古手川の心中のコメントがおもしろい。

  • 依頼人から法外な弁護料をとる悪徳弁護士。なかなか癖のある人物でキャラが立っててグイグイ引き込まれて読みました。
    カエル男を先に読むと楽しめたようでそっちも気になりますが二作目以降も読んでみたい!

  • 『死体に触れるのは、これが二度目だった』から始まる本書。
    この最初の一文から、読者をうまくミスリードしていたんだなぁと、読み終えてまず思った。

    ただ、ミステリーの解決シーンというか、ラストが雑な締めくくりだったなという印象。
    渡瀬刑事はなぜ実行犯・息子、主犯・母とわかったのか?
    3種類の犯罪が絡み合う本書だからこそ、あえてそこに注力しなかったのか?

    主人公が少年院で更生する過程こそ、筆者が最も重要視(読者に表現)したかったところなのかなとも思った。

    ミステリーである一方、考えさせられる本だった。

  • 最初に読んだ中山七里さんの作品が「恩讐の鎮魂曲」で、次が「追憶の夜想曲」、で3冊目となる今回が「贖罪の奏鳴曲」でした。読む順番が逆なのですが、全く違和感なく読めました。もし自分の子供が「殺してみたかった」という理由だけで殺されてしまった場合は、加害者がその後どんなに心を入れ替えて罪を償おうとも決して許すことはできないと思います。御子柴シリーズは、御子柴側に立って読んでしまうのですが、やはり犯した罪は消えないのだと思います。それでも償い続けるしかないところがつらいところです。次に読むのは「さよならドビュッシー」にしようかな。

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著者プロフィール

1961年岐阜県生まれ。『さよならドビュッシー』で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビュー。2011年刊行の『贖罪の奏鳴曲(ルビ:ソナタ)』が各誌紙で話題になる。本作は『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』『追憶の夜想曲(ノクターン)』『恩讐の鎮魂曲(レクイエム)』『悪徳の輪舞曲(ロンド)』から続く「御子柴弁護士」シリーズの第5作目。本シリーズは「悪魔の弁護人・御子柴礼司~贖罪の奏鳴曲~(ソナタ)」としてドラマ化。他著に『銀齢探偵社 静おばあちゃんと要介護探偵2』『能面検事の奮迅』『鑑定人 氏家京太郎』『人面島』『棘の家』『ヒポクラテスの悔恨』『嗤う淑女二人』『作家刑事毒島の嘲笑』『護られなかった者たちへ』など多数ある。


「2023年 『復讐の協奏曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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