おどろきの中国 (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881821

感想・レビュー・書評

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  •  3人の社会学者が、中国について話し合うという本。前半は中国、中国人に関する基本的な謎について。なぜ中国人は、日本人から見ると自己主張の強い人たちに見えるのか、中国人にとっての宗教とは何か、そもそもなぜ広大な地域が国としてまとまっているのか、といった問題や、共産党と毛沢東についての話。後半は中国の歴史問題に関する認識の捉え方と日中関係のあり方を論じている。
     今回の3人のうちの2人が参加している『ふしぎなキリスト教』がとても面白かったという記憶があって、中国についてはまともに知らないけど、読んでみた。とても面白いけど、難しかった。まず中国の歴史、特に戦時の日中関係や日本の行動について、おれはあんまり分かっていないというのが大きな問題だった。というか、こういう無知については、著者らも問題にしているところだ。さらに、著者らはやっぱり学者なので、「AにおいてはBということがあるけれども、中国の場合はどうなのか」といった話の展開をすることが多いが、おれとしては「AにおけるB」の部分がよく分からないので、余計に難しい。
     それでも特に前半は、面白いと思ったことがたくさんあった。まずヨーロッパのように、宗教があって政治があるということではなく、政治的統合があって、諸子百家のような「政策的オプション」がある(pp.36-7)という点。そして「文官優位の根本」(p.80)について。軍事力を排除するために、科挙のような物差しを使ってとにかく序列をつけて、その序列にはみんな従うということで合意しているということ。トップが間違っていても、みんなで従っておけば争い合わずに済むという知恵のようなものがある、というのは、おおよそ日本人には発想できないところではないだろうか。また、「漢字によって言語がつくられた」(p.88)というパラダイム転換は、もう少し考えてみたい。漢字があって、その読み方を色々な集団がそれぞれに付けていった、ということらしい。次に、「ネタがベタになる」(p.124)という表現。手段がいつの間にか目的になるという、日本の近代史でよく見られる現象、ということらしいが、歴史の勉強をするときには何がネタで何がベタなのかということを押さえていないといけないと言うことが分かった。最後に、中国の「社会組織の原則」(p.162)について。「1自分は正しくて立派」、「2他者も自己主張している」、「3自己と他者が共存するために枠組みが必要」ということで、「順番システム」を作り上げるというのが、面白かった。(15/05/24)

  • 中国はすぐ隣にあり、歴史的にも深いつながりがあるのに、実の姿をほとんど知らないし、謎に思う側面が多い。でもこの本を読んで、おぼろげながらも全体が見えた気になった。
    そもそも中国とは国家なのか。二千年以上前に統一され、トップが変わってもあれだけ広い土地と国民が、漢字の表記は一緒でも発音は様々というのに、長く国家という認識をもっているのは外からは不思議なことに見える。だがこれが中国の人々には不思議ではないことを理解しないと、中国がわからない。政治的統一を第一に考えること、中華思想や幇、儒教の考え方を知らなければいけない。
    そうして少しずつ歴史と考え方を紐解くと、なぜ歴史問題でこれだけすれ違いが生じてきたのかが薄っすら見えてくる。
    中国と日本との間にあった文脈、日本が伝統的にどう見られていたのか、日本が大東亜戦争と言いながら矛盾した態度をとっていたことがどう見られていたのか、暗黙の了解的なものにより、本来戦争や靖国神社、尖閣諸島をどうすり合わせしていたのかが分断されてしまい、現在のようになってしまったのではないか。

    色々な困難も感じるが、中国の人びとの考え方などへのスケールの大きさも感動する。とても面白い国だ。尊敬する。こんなに合理的な選択をする人たちには日本はそうそう勝てない。共産党一党独裁は続くのか、というセコイ話では、きっと理解が及ばないのだろう。

    日本は中国を嫌うムードになってしまっているが、それよりもまずは中国をもっと知ることが必要ではないかと思った。

  • 社会学者3人による中国理解のための鼎談書。
    タイトルからは、想像できない、骨のある議論がなされている。これが全てとは言えず、まだまだ知らないことが沢山あるのだろう。
    東京裁判と靖国問題については、解りやすい説明であると感じられたし、外交政策上の数々の問題には変革を期待したいと思った。

  • 腑に落ちたところも、「?」のところもあったけれど、総じて面白かった。

    第一部は、中国が何をアイデンティティにして成り立つ国家なのかという話。
    儒教や漢字が大きく作用していて、それは軽く民族や王朝といった枠組みを越えてしまうとのことだった。

    第二部は毛沢東の「権力」とはどのようなものだったかの話。
    フーコーなどの社会理論が当てはまる部分、当てはまらない部分が列挙されていた。
    こういうところが「反知性」の立場の人からは、知的遊戯というか、まだるっこしく見えるんだろうなあ、と思う。
    ただ、私は理論を使いこなすというのは、こういうことなのかなあ、とむしろ好意的に読んだ。

    第三部は歴史問題をどう考えるべきかについて。
    責任の所在への認識があいまいなところが原因となって、謝罪の仕方もただ謝るだけになってしまっているとのこと。
    それはそうなんだろうけれど、宮台さんがいうように、東京裁判の虚構を踏襲するということが、今の日本人にとって実際にできるのかどうか。

    第四部は日中関係のこれから。
    日本は米中関係の付属物になる、という認識は私もよく理解できる。
    だからこそ、戦略的に立ち回らなくては、ということも。

    中国の問題を合わせ鏡に、日本の様々な問題が照射されていた点が面白い。

  • 赤坂Lib

  • 本当におどろきの連続だった。隣の国であり、しかも歴史的にも関わりの深い国であるのに、私自身ほとんど知識がない、そのこともおどろきだった。もちろん私の勉強不足はあるが、教育の問題も大きいと思う。その点の議論がなされていなかったことだけ少し不満は残る。日本人が中国をリスペクトできない理由もそのあたりにあると思うのだが。中国の歴史については全くもって知識がない。そのために、第2部・第3部あたりは読み進むのに苦労した。それでも、全体としては本当におどろきの連続。特に終盤で、尖閣諸島の問題や拉致事件などについて、日本の政治家の失策のため、中国や北朝鮮とも関係を悪化させている、という部分には憤りを感じた。橋爪先生が声を荒げて怒っていらっしゃるのがよく伝わってきた。それにしても宮台さんはどこまで政治に関わっているのか知らないが、よくいろいろな内情を知っているものだ。その点でもおどろきが多かった。大澤さんと宮台さんが学生時代からとても仲良しで、しかも目立っていたというのもおかしい。キリスト教の本に続いて、あまりにも売れていそうだったので、読もうかどうしようか迷ったけれど、これも読んで正解でした。

  • 橋爪大三郎、大澤真幸、宮台真司の3人が、中国をテーマに語り合った本。

    中国という国のあり方は、ヨーロッパの近代国家を基準にして作られた西洋の社会学の枠組みでは説明しきれないところがあるにも関わらず、文化左翼的な立場からの中国論者たちはポストコロニアル批評などの西洋の現代思想を当てはめることで中国を理解しようとしてきました。本書はそうした一方的な中国への共感を戒め、理論社会学についても独自の思想を展開し、中国の実情にも詳しい橋爪を中心にして、理論と現状分析の双面にわたって中国を分析しています。

    日中の歴史問題や、今後の日中関係についての議論も、たいへん興味深く読みました。ただ、座談会形式ということもあって、それぞれの論点の背後にある問題領域が見通しがたく、社会学についても中国についても詳しい知識を持たない読者としては、少し読みづらく感じてしまいました。

  • 日本の政治家がいかに不合理かつ愚かであり、日本の官僚がいかに不合理かつ利己的であるかがわかる本。共産党一党独裁の中国よりも、日本の方がよほどやばいという確信を得た。

  • 隣国でもあり分かっているつもりでいるので、積極的に理解しようとしない。実際には知らないことばかり。我々にとって中国とはそんな国なのではないでしょうか。
    三国志は読んだことあるけど、文化大革命についてはよく知らない・・・私もそんな状態でした。

    中華という思想、儒教と文化大革命、国家というよりも共産党の支配、「帮」という集団意識、中台関係、日中関係の歴史などなど
    学者三名の討論を通して多くの事柄が紹介されていきます。

    少し難解なところもありますが、中国関連のニュースに触れた時にこの本の関係箇所を読み返してみたいと思います。

  • これは面白い!中国庶民の日常感覚を知っている人だから語れる、中国近代史の本当の意味。変に西洋基準で見ると不思議な中国だが、儒教国家として見れば納得できなくはない。確かに日本人の感覚の方が、より変かも知れない。世界の双頭であるアメリカと中国に対して、より良い関係を築いていくためには、お互の歴史と庶民感情を理解する事が重要ですね。

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著者プロフィール

橋爪大三郎(はしづめ・だいさぶろう):1948年生まれ。社会学者。大学院大学至善館教授。東京大学大学院社会学部究科博士課程単位取得退学。1989-2013年、東京工業大学で勤務。著書に『はじめての構造主義』(講談社現代新書)、『教養としての聖書』(光文社新書)、『死の講義』(ダイヤモンド社)、『中国 vs アメリカ』(河出新書)、『人間にとって教養とはなにか』(SB新書)、『世界がわかる宗教社会学入門』(ちくま文庫)など、共著に『ふしぎなキリスト教』『おどろきの中国』『おどろきのウクライナ』(以上、講談社現代新書)、『中国共産党帝国とウイグル』(集英社新書)などがある。

「2023年 『核戦争、どうする日本?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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