世界神話学入門 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
3.42
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062884570

作品紹介・あらすじ

日本神話では男神イザナギが、亡き女神イザナミを求めて冥界に下ります。一方ギリシア神話にも、オルフェウスが死んだ妻エウリュディケーを求めて冥界に下るという非常によく似たエピソードがあります。しかしこのパターンの神話は上記の二つに止まるものではなく、広く世界中に分布しまていす。では、なぜこのように、よく似た神話が世界中にあるのでしょうか?
 2013年にハーヴァード大学のマイケル・ヴィツェルが、この謎を解くべく『世界神話の起源』という本を出版しました。この本によれば、世界の神話は古いタイプの「ゴンドワナ型」と新しいタイプの「ローラシア型」の二つのグループに大きく分かれるとされます。「ゴンドワナ型」はホモ・サピエンスがアフリカで最初に誕生したときに持っていた神話です。それが人類の「出アフリカ」にともなう初期の移動により、南インドからパプアニューギニア、オーストラリアに広がり、アフリカやオーストラリアのアボリジニの神話などになりました。
 一方「ローラシア型」は、すでに地球上の大部分の地域にホモ・サピエンスが移住した後に、西アジアの文明圏を中心として新たに生み出されたと考えられています。それがインド=ヨーロッパ語族やスキタイ系の騎馬民族の移動によってユーラシア大陸全域に、さらにはシベリアから新大陸への移動によって南北アメリカ大陸に、そしてオーストロネシア語族の移動によって太平洋域へのと、広く広がっていきました。つまりこの説によれば、日本神話もギリシア神話もローラシア型に属する同じタイプの神話ということになります。両者が似ているのは、むしろ当然のことなのです。
 近年、DNA分析や様々な考古学資料の解析によって、人類移動のシナリオが詳しく再現できるようになりました。するとその成果が上記の世界神話説にぴったりと合致することがわかってきました。すなわち神話を分析することで、人類のたどった足跡が再現できるようになったのです。
 本書は、近年まれに見る壮大かつエキサイティングな仮説であるこの世界神話学説をベースにして、著者独自の解釈も交えながら、ホモ・サピエンスがたどってきた長い歴史をたどるものです。

感想・レビュー・書評

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  • ギルガメッシュ叙事詩とノアの方舟のように共通する神話を研究する比較神話学に関心を持ち、本著にたどり着きました。
    本著では、大陸移動説をもとにした人類分布から神話形態を分類しています。多様な神話そのものに触れたい方は第2章から目を通すことをお勧めします。

    神話や民間伝承は、大概ぶっとんでいて本著で紹介されているものもなかなか奇妙でした。考えてみれば、エピソード、それも奇抜なものほど記憶に残りやすい。そのため、口承の時代から書物に残るまで語り継がれてきた神話は奇抜なエピソードほど残っているのだと思われます。

  • 著者の後藤明(1954年~)は、南山大学教授の文化人類学者、考古学者。
    本書は、これまで、世界中の神話の類似点から様々な文化の伝播や系譜論が唱えられてきた中で、近年注目されるようになった、世界の神話の系統は大きく二つの流れに分けられるという「世界神話学説」について、世界各地の神話を比較しながら解説するとともに、その中で日本の神話がどのように位置付けられるのかを分析したものである。
    内容は概ね以下である。
    ◆世界神話学説とは、米国のマイケル・ヴィツェルが唱える、世界の神話は大きく「古層ゴンドワナ型神話」と「新層ローラシア型神話」の2つのグループに分けられ、それは、遺伝学、言語学或いは考古学による人類進化と移動に関する近年の成果と大局的に一致するというもの。
    ◆ゴンドワナ神話群は、アフリカで誕生したホモ・サピエンスが持っていたもので、出アフリカによって、南インドからオーストラリアへ渡った集団が保持する古層の神話群で、「人類の原型的な思考」ともいえる。ローラシア神話群と異なり、世界は既に存在しているものとして語られ、また、一つ一つの物語が関連して発展していくという形をとらず、個々の神話の間に関連性が見出せないものが多い。
    ◆ローラシア神話群は、既に地球上の大部分の地域にホモ・サピエンスが移住した後に、西アジアの文明圏を中核として生み出され、様々な集団の移動によって各地に伝播した神話群で、「人類の最古の物語」ともいえ、ヨーロッパ、シベリア、インド、東アジア、アメリカ大陸に広がる。世界の無からの創造を語り、最初の神、特に男女神の誕生、更には天地の分離を語り、大地の形成と秩序化、それにともなう光の出現、火や聖なる飲み物の獲得、原初の竜退治などのテーマが連なり、その後に続く、神々の世代と闘争、半神半人の時代、人類の出現、更には、後に貴族の血脈の起源へとつながり、最後には、しばしば現世の暴力的な破壊と新しい世界の再生が語られる。起承転結や因果関係をもった本来の意味での物語性が強く、我々にも理解が容易である。
    ◆日本神話は、ゲルマン、北アジア、朝鮮、インド、ポリネシアなどの神話と類似性があり、大局的には、ユーラシアに広く分布するローラシア型神話群に属している。ただ、日本列島はホモ・サピエンスが東南アジアから北方アジア、アメリカ大陸へと移住する経路にもあたっていたため、ゴンドワナ型神話の痕跡もあり、それにより、日本神話の複雑さ・多様性が生まれた。
    ◆ゴンドワナ型神話は、「物語」という営みが生まれる以前に存在していた「思考」であり、そもそも人間と動植物や自然現象を区別しない時代、人間もその一員として森羅万象や動物・木々や花々とともにささやき合っていた時代の「神話」である。即ち、進化思想であり自民族中心主義につながりかねない危険性を孕んだローラシア型神話とは異なり、ゴンドワナ型神話は、対等の関係或いは互酬制、調和と共存こそが世界の神秘であり、人類を含む地球上の生きとし生けるものの叡智であることを教えてくれる。
    現在世界各地には、人種も民族も文化も言語も異なる多数の人々が存在するが、原型的な思考、最古の物語を潜在的には共有しているということには、大いなるロマンを感じるし、争いの絶えない今日の世界においても、一筋の希望に繋がると思いたいものである。
    (2017年12月了)

  • 2018.2.5 amazon

  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    世界の神話がどの様になっているのかを俯瞰的に知るには良い本ではないかと思う。
    大きな分類として、ローラシア型とゴンドワナ型があることを知れ、それぞれが解説されており、神話の変遷や要素などから伝承経路を考察するなど、なかなかに面白かった。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/729413

  • 164-G
    閲覧新書

  • 神話の起源、世界神話の共通点がわかりやすく、まとめられていた

  • 神話学という名の人種差別??
    後藤明『世界神話学入門』講談社現代新書. 2018.

    -比較神話学ほど怪しい学問はない・・・とは先日先輩とふとそんな話になったのだが、

    2010年代以降Harvard大学のMichael Witzelが提唱している「世界神話学」なるものを勉強しないといけないなあと思い最近彼の本を買ったものの、とにかく長くて読む気がしなかったのだが、今回日本語で簡単にその内容を紹介している本があったので早速手に取って読んでみた。(日本語で安価で手に入るのは本当にありがたい)

    今までの神話学とは一線を画するところは、それは現代のDNA解析技術を用いて人類の移動の軌跡と、神話の様々な類型の分岐をたどるというものだ。
    それによると世界の神話体系には、
    ローラシア型:ヨーロッパ、アジア、エジプト、メソポタミア、日本、中国、アメリカ先住民
    ゴンドワナ型:アフリカ、ドラヴィダ系南アジア、東南アジア、オセアニア、南アメリカ末端部
    があるらしい。

    ローラシア型の神話は、世界の無からの創造、最初の神、男女の神の誕生、天地の分離、大地の形成etc,
    ゴンドワナ型 そのような神話的思考が欠如している?世界は最初から存在する。

    しかしなんとなくこのような類型は非常に恣意的なものに思われる。例えば、インド東南部のドラヴィダ集団の神話で、ゴンドワナ型として語られているものだが、

    空にプークとその妻ユークが住んでいた。そのとき地上は水に覆われていた。エビとカニがそれを干拓しようとし、エビは触角を使って水に漂っているゴミや草や葉を集め、カニは深く穴を掘った。すると水が穴の中に流れ込み、その下から地面が現れた。エビはゴミの山を積み上げて山を造ったが、地面が柔らかすぎたので、太陽と月が熱で乾燥させた。プークとユークは天から見ていて大地が不毛で乾燥しているのを知った。プークは妻に言った。「緑のものはなにもない。木や草が生えるように水をやりなさい」。しかしユークは「どうやって地上に水をやるのか」と抗った。怒った彼女は腰巻きをめくりあげて陰部を露出した。すると彼女のその部分が太陽のように輝いて空を照らした。プークも怒ってパイプを水の筒の上に打ち付けると雷が起こった。すると雨が降って地上に草木が生えてきた。

    無からの創造、とまではいかなくても、我々がインド神話でよく見る「原初の水」の神話にかなり似ている気がするし、無からの創造なんていうのもそれなりに時代を下らないと見られない。にかなり近いと思われる。ゴンドワナ型かローラシア型かという分類体系は非常に曖昧で研究者の要約の仕方や訳語の選択による、というのが正直な感想だ。

    著者自身冒頭でも言っているように、神話学の殻を被った人種差別であるという批判もあるようだが、まさにその通りであると思われる。結局ヨーロッパや、ヨーロッパ人的に興味そそるアジアやアメリカ先住民の文化を「科学的」な方法で分けているだけのように思われる。これを読んでからWitzelの大著に取り掛かってみるかと思っていたものの、そんな気も失せてしまった。
    2010年代のいつだったか、Witzelが来日した折に、関西外国語大学で講演していたのに参加したが、その時もよくわからんなあという印象だった。
    Witzel自身の言葉をしっかり分析していないので、自分自身で確かめないといけないのは確かだが、神話学を専門にしていない以上は読まなくてもいいかな、という気になってきた。そして日本語で大体の内容や問題点を把握できるのはありがたいものだ。

    もちろん理論的に賛成できなかったからとはいえ、読んで後悔だったというわけではない。一番の収穫は世界のいろんな神話を知ることができたことだろう。特にガーナのアシャンティ族の神話の至高神がオニャンコポンという可愛いお名前だとは知らなかった。これはこれからのいろんなネタに使えそう。

  • 国や地域ごとに伝わる伝承はさまざまであるが、あれ、なんか聞いたことあるストーリーだなと思うことがたびたびある。
    昔聞いたことを忘れていたのかもしれないが、実は日本にも同様のストーリーが伝承されていた、ということもある。
    後者の場合、それは偶然だろうか?この場合2つのパターンが考えられる。
    ・対象のストーリの発生が自然的(人間共通)な考えによるもの。例えば、太陽を神格化するという発想は世界中でよく見られるがそれ自体は太陽による恩恵を考えると世界中でこのような神話が発生するのは自然のように思える。
    ただし、太陽を男性とみると、女性とみるか(または中性的とみるか)は自然的ではない。実際、太陽の性別はと聞かれると男性という人も女性という人もいるのではないだろうか。
    ・次に考えられるのは、もともと根本的なストーリーが存在し、それが民族移動によって各地に同じようなストーリーが広がっていった、というアイデア。

    本書のメインテーマは後者である。
    各地域で伝承や神話を丁寧に分析することで人類が文字を持たないくらい過去での人間の足取りを追えるのではないか、という流れである。
    日本、アジア、南米、アメリカ大陸に伝わる伝承の類似性を検討している。

    まぁしかし神話に頼らずとも最近はDNAによる人類の移動の年代や経路がある程度正確にわかってきており、いまだ解明されていない点がこの神話の分析によって解決することができるかは疑問であるが。
    ということで本書の最終的な結論は(筆者も頭を悩ませたと思うが)、神話を知り、今日の悩みを緩和しようぜ、という本書のストーリーから若干離れた感じになっている。
    問題意識は面白いと思う。

  • 神話学者のマイケル・ヴィツェルによって提唱された「世界神話学説」にもとづいて、世界各地の神話を比較し、そのつながりを論じた本です。

    近年の遺伝学の進展によって、アフリカに誕生したホモ・サピエンスの移動の諸相が解明されてきました。ヴィツェルは、こうした研究の成果に依拠して、地球上のさまざまな神話が、古いタイプの「ゴンドワナ型」と新しいタイプの「ローラシア型」の二つのグループに分類することができると主張します。本書では、そうしたヴィツェルの主張の裏づけとなる世界各地の神話を紹介するとともに、著者自身の研究も加味しつつ、とくに日本神話の源流についても議論をおこなっています。

    本書で紹介されているヴィツェルの議論は、遺伝学の成果をもとに、地球規模の神話の起源と変遷にかんする研究というもので、そのスケールの大きさには目をみはらされます。ただ、神話そのものの分析については、印象論的なレヴェルでの類似が論じられているにすぎないという印象も受けました。

  • 神話がテーマなのにDNAの話から始まって!面白かったー。

  • 2019年1月13日に紹介されました!

  • 主にローレシア型とゴンドワナ型の二種に神話を分けて、人類の移動の歴史と、神話同士と人類の遺伝的形質を合わせて関係性を見て行き、繋がりがどこにあるのかを認識していく内容。そして神話から読み取れる教訓、人類の歴史にあったことだと予想できる事柄を紐解いていく。
    ゴンドワナ型神話は「話の森」ではあるという表現がとても好きでした。

  • とりとめない事例の紹介が延々と続くので、オニャンコポンというパワーワードだけが頭に残った。

    Wikipediaを読む限り、世界神話学は4つの神話を想定している模様。
    - パン・ ガイア神話
    - 出アフリカ神話
    - ゴンドワナ神話
    - ローラシア神話

    本書では最後の二つしか紹介しておらず、その辺りも恣意性を感じた。

  • 世界の神話には、大きく二つの系統があるらしい。

    『ローラシア神話』、
    エジプト、メソポタミア、ギリシャ、インドのアーリア系神話
    中国(日本の古事記や日本書紀の神話も)ゲルマンや北欧の神話
    ストーリー性が強く、世界を無から創造する。
    我々が、今神話だとおもっているもの。
    現代のゲームやハリウッド映画にまで脈々と続いている。


    『ゴンドワナ神話』、
    それより古層の神話。
    アフリカの中南部、サン、コイサン、インドの非アーリア系(ドラヴィダ)
    アンダマン諸島、マレー半島のネグリト集団、
    メラネシア、オーストラリア(アボリジニ)
    アイヌ神話や琉球の神話
    最初から世界が存在する。
    天体や風雨などの自然現象、動植物と一緒に暮らしている。

    おもしろいことに、遺伝子の研究からわかる、人類の分布に重なる。DNAの最新科学が神話学を立証する。(その逆も)

    『「ゴンドワナ型神話とは、物語化することが至難な、というか、そもそも「物語」という営みが成立する以前に存在していたホモ・サピエンスの原型的な思考である。ローラシア型神話は神がいかに世界と人間を創造したのか、いかに人間はその生存域を拡大したのか、また人間の間にいかにして不平等が生まれていったのかを語る神話である。一方、ゴンドワナ型神話は、そもそも人間と、動植物や自然現象を区別しない時代、人間もその一員として森羅万象や動物、木々や花々とともにささやき合っていた時代の神話である。言いかえればそれは文字が要らなかった時代の神話とも言える。少々勇み足をして言えば、それは、自民族中心主義や征服者の思想には決して導かれることのない神話、すなわち現代の世界にもっとも必要とされている思考方法とは言えないだろうか。」』

    『「一方、(ゴンドワナ型神話の)「張り構造」では、すべての要素が互いに互いを支え合っている、そしてどこかが欠落すれば全体のバランスが崩れる。籠を解いていってもどこにも世界の神秘などは存在しない。なぜなら、その籠そのものが世界だからだ。人間も動物も風や天体などの森羅万象も、互いが互いを頼りあい、互いが互いを参照する。そこにはどれがより大事ということはない。上も下もない。だから支配も被支配も、権力も搾取も無縁である。」

    なぜか南方熊楠のマンダラを思い出す。

    『「ローラシア型神話には無からの創造という特徴があった。当然、創造するのは神であり、その神は絶対的な存在である。一方ゴンドワナ型神話では、神的な存在もしばしば祖先の精霊として登場するとしても、その役割はきわめて限定的であり、もともとあった要素を秩序立てるような役割にすぎない。またこの「神」は、仕事が終われば、どこかに去って行ってしまう。そして後世の人々は、風や木のささやき、あるいは儀式の太鼓や笛の音などでその声を思い出す。祖先の精霊は別に人間たちを支配するわけではない。また人間たちの役割も、常にそれを語り、思い出すことにある。」』

    琉球諸島の来訪神、東北のなまはげたち、アイヌ文化の熊祭りが頭に浮かぶ。

    『「カラハリのサンもアボリジニも自分たちは旅をしている、と考えるという。そこには季節的に空間を移動しているという意味だけではなく、時間を旅しているという意味も含まれている。世界は常に流動している。川も海も、雲も風も、太陽も星も。その流れに逆らわずに生きていく。もともと人間も動物も太陽も風も一緒に暮らしていたのだから。」

    すばらしい!

    でもこういう考え方は、こどもは自然にやってる。
    絵本の中で、人間も動物も、木もお星さんも風も、みんなふつうに、お互いしゃべってる。あたりまえのように。

  • 2018-1-12

  • とにかく扱ってる話題がおもしろい。詳しい話を聞いたことがない。でも、章立てやエピソードの整理には改善の余地があるような...

    世界各地で伝わる神話の共通性は、大航海時代以降に伝わった部分もあるにせよ、それでは説明できない、つまり、人類の移動/移住の歴史で説明される部分が少なくない。

    読み終わっても整理できていないけど、例えばこんなモチーフが広く見られる。

    釣り針/槍をなくすと動物の世界に行って動物の長と仲良くなり、帰ってきて幸せに暮らす。浦島太郎、海彦山彦。
    脱皮できなくなったから人間は死ぬ。
    世界は無か水か巨人か卵の中から出てくる。
    大抵、太陽と月は男女で、星は動物。何かと追いかけっこをしている。
    ...その他いろいろ

    多くの神話は、
    偉い人あるいは神を崇めさせるようなタイプ(ローラシア)
    と、
    自然の中にいる精霊とかとのやりとりが断片的に描かれるタイプ(ゴンドワナ)
    にざくっと分類でき、大まかに、前者は農業革命以降(=10kyaくらい以降。余剰資源の備蓄開始、統治者,聖職者の誕生)、後者はもっと昔(言語や抽象概念の成立以降)に成立したと考えられる。

    今成立してる制度やモラルの硬直は、こういう観点を入れれば組みなおすことができるかも。
    "昔から"という正統性のおおもと(神話)は、人間共通であって国特有ではなかったり、社会の統治の開始以降という歴史以上のものは持っていなかったり。

  • 20180211

  • う~ん、この本、何とか読んだけど、失敗だったな。内容が多岐にわたり過ぎ、それぞれが断片的で細かく、ちょっとついていけなかった。神話の共通性から太古の人類の移動経路を推定していくのは大変興味深いのだけれど。

    面白かったのは、ポリネシア神話の、津波に教われた島から新たな島を目指してカヌーで脱出する物語。男女がつがいの家畜を積んで船出したという。ノアの方舟の物語よりリアルで現実的だ。

    著者は、ゴンドワナ型神話が「人間と動植物や自然現象を区別しない時代、人間もその一員として森羅万象や動物、木々や花々とともにささやき合っていた時代の神話」であるのに対して、ローラシア型神話を「神がいかに世界と人間を創造したのか、いかに人間はその生存域を拡大したのか、また人間の間にいかにして不平等が生まれたのかを語る神話」、「鉄器が発達し武器の殺傷能力が高まり、また経済的な不平等が生じ、宗教が不平等を覆い隠すイデオロギーとして機能するようにな」り、「力のある者、能力のある者が権力を握れる社会になって」いくとともに、「王や貴族などが誕生した理由を説明」する必要性から生まれた神話であると説いている。そして、ゴンドワナ型神話こそ現代に必要な思想だとも。この点には共感。

  • 神話には大きく分けて、ゴンドワナ型とローラシア型があること。
    地理的に離れているはずなのに、神話に共通性があり、そこから人類移動の系譜を類推できること。
    専門外の私が読んでもわかりやすく、かつエキサイティングだった。

  • 東2法経図・開架 B1/2/2457/K

  • 各国・各地域の神話の類似性を人類の進出と照らし合わせて提言している。
    過去に読んだ本では日本神話は南洋系と類似性があるという話を神話の中身のみに着目していたが、遺伝子研究などで人類がアフリカを出発してからの軌跡に沿って神話を分析していた感じ。
    ゴンドワナ型とローラシア型の二種類に分類することが出来るという。後者は支配者層の正統性を表すためのもの・支配機構。前者は人間の営み・自然との調和。
    ローラシア型は支配に利用され得るというのが面白かった。

  • 仏教、キリスト教、オリエント文明ときたので、ついに世界の神話まで遡及。自然人類学にもとづいて、神話をローラシア型とそれより原初的なゴンドワナ型に区分し、それぞれに特色ある類型を分析する内容ですが、物語としての神話として構成されるローラシア型より、ゴンドワナ型に神話的思考を見いだすところに、著者に対しる好感を持ってしまいます。

  • アフリカを出た私たちは共通の記憶を携えながら世界各地に散っていった。ケルト神話に浦島太郎と共通のモチーフがあるなんて。

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著者プロフィール

1941年生まれ。東京大学名誉教授(東洋文化研究所)。
専門は西アジア史およびイスラーム史。
主要著作は、単著に『ビジュアル版 イスラーム歴史物語』(講談社、2001年)、 『ムハンマド時代のアラブ社会(世界史リブレット100)』(山川出版社、2012年)、共訳にイブン・イスハーク著、イブン・ヒシャーム編註『預言者ムハンマド伝(イスラーム原典叢書)』(全4巻)(岩波書店、2010年~2012年)など。

「2014年 『イスラームの誕生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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