殺人出産 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062934770

感想・レビュー・書評

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  • 10人産んだら、1人殺せる

    本当にパワーワードだと思います。
    めちゃくちゃ新鮮で面白かった!

  • 性も恋愛も生も死も倒錯なのかもしれない

  • テレビで紹介されてて、もう読みたくてたまらなくなった一冊。

    10人産んだら一人殺せるっていうルール。
    男でも可能で、体に子宮埋め込んで10人出産するものの、体の消耗が激しくて10人産む前に亡くなる方もいる。など。

    設定が大変リアルでした。

    少子高齢化がこれでなくなるっていう。
    殺人も意味のある殺人で、ただ闇雲にその辺の人殺すわけでもない。1ヶ月前に殺したい人決めて告知。その後、殺害。

    もちろん選ばれた人は、みんなのために死んでくれた人っていう栄光を受けるわけだけど。

    ものすごい歪んだ世界が、読んでるうちにこれもいいかもしれないよね。って思いそうになる自分と、たしかにこういう未来ありそうありそう。っていや、あるかもしれないよな。私なら、、、

    って思いに駆られれなんとも不思議な一冊です。

    罪人は一生子どもを産み続ける刑に処される。

    たしかに子どもは可愛いけど産む苦労はあるよなぁ。でも、あの苦労もなかなか後になって思うと幸せの一部ではあると思うけども。

    なるほどな。でも、子ども育てるわけでもなく、ただひたすら産むためだけに産むなら、それは、幸せなんてーもんじゃないよなぁ。。。 

    すごい刑かも、と。色々考えさせられる一冊でした。
    思った以上に薄い本だったから、ソッコーで読み終えた、、、

  • 価値観が反転していくアハ体験を味わう究極の4編。
    表題の「殺人出産」は正義と倫理について執拗に描いている。花と昆虫食と殺人と出産というモチーフを何度も対比させ、制度や常識といったシステムの脆弱さを炙り出そうと試みている。
    「トリプル」は信仰の話だと思った。性愛と常識という一番遠いようなものが実は最も肉薄している、生々しい描写だからこそ“正しさ”が際立つ。
    「清潔な結婚」、これも価値観の反転。産むのは旦那様のほうなのだ!“排出”という言い方に少し笑う。
    「余命」は星新一を彷彿とさせる掌編。

  • p.15
    "死をもって死を成敗するなんて、本当に野蛮な時代もあったものです"

    p.70
    "残された者たちは、笑いながら虫を食べている。"
    狂気のど真ん中。でもこれがデフォルト。

    『殺人出産』は誰と付き合おうかな〜♪
    『トリプル』は絡まってるジェンダーレス
    『清潔な結婚』は私の理想郷
    『余命』はそろそろ旅行に行きたいな☆
    みたいなノリ。いいぞ。

  • 殺人出産、トリプル、清潔な結婚、余命の4つの話からなる本。

    死生観が独特。普段は常識とされていることがレアなケースとした世の中の話。


    殺人出産は10人出産したら、殺したい人を1人殺す許可がおりる。男性も人工子宮をつけて出産が可能。

    トリプルは、3人交際の話。カップルがレアなケースとされている。

    清潔な結婚は、いわゆる人工授精のもっとオープンな感じ。

    余命は、医療が発達してなかなか死なないので、死ぬ時を好きに決められる、という話。
    1番短くてシュール。


    最初の殺人出産は、気持ち悪い話だなーと読み進め、1冊読み終わるころには今の当たり前を全てひっくり返してみたらこんな世界になるなーと。
    どれも絶対起こり得ないとは言い切れない。
    深い。

    よくこんなの考えつくなー。すごいなー。

  • 村田沙耶香の本を読むのは2冊目
    コンビニ人間がとてつもなく面白かったため他の本も読んでみたくなったため購入。

    村田沙耶香の本は一言で言うと尖っている

    視点は全て主人公目線で描かれている。
    文体は周りの木など無機質なものの様子の書き方の変化によってその場の状況を表していると言う特徴がある。

    内容は自分では考えつかない世界について知れるのが面白かった

  • 面白かったー。

    世の中がもしもこうだったら、っていうお話だけれど、設定がすごい。10人産んだら1人殺せるとか。現実にはあり得ない。それでいてこまかい部分は実際にありそうな展開をするし、もしかしたら数十年後、百年後にはこんな世の中になっている可能性もあるな…と思わせられる絶妙なシチュエーションなんだよね。

    4つお話が入っていて、どれも引き込まれた。オチがよくわからないものもあったけれど、それが別に気にならないくらい設定とストーリーが面白かった。

    村田沙耶香さん、初読みだったんだけど、他の作品もこういうテイストなのかなあ。読んでみたい。

    あ、目頭に唾液とかは感染症が気になって、やめとけーと思ってしまった(笑)。

  • ものすごい内容でした。以前に読んだこの方の作品と根底は同じだと思いました。正しいこと、普通はこうだということは何一つない。時代、世論の風潮によって変化していくという話の超極端な物語だったと思います。はぁ〜〜すごい。。

  • 表題作の殺人出産をはじめ、短編4つの作品集。ディストピア的設定が、あり得ないものであるとわかりつつもそのフレームを別のテーマに置き換えたら、現代社会に実際に現れている問題や事象であることにゾッとする。

  • 内容も面白いけど、発想がすごい
    世にも奇妙な物語で映像化できそう

  • 出会いたかったものに出会えた感覚。タイトル買いだったけど、期待以上に素晴らしかった。多様性って何だろう?って考えさせられた。どんなに多くの選択肢があって、選択の自由が与えられた世界になっても自身の信じる思想と異なるものを認め合うって難しいことだと思った。

  • 誰が1人を殺す為に10人も産み続けるの、本当に1人に執着して無いと無理そう。条件付きでも殺人が認められている世界になっても普通にOLしてる登場人物達を見て、本当に慣れって怖いなと思った。

  • 10人産んだら1人殺せる世界。

    子供を産む人は、産み人と呼ばれ、世間からは尊い存在として扱われる。殺される人に選ばれた、死に人は歓迎すべきこととして周りから送り出される。今の私たちの世界からすると狂った世界でしかない。

    けれど、価値観はゆるやかに変遷していくものだ。
    100年後、200年後には今の価値観と真逆のことがよいとされているかもしれない。
    例えば女性の美しいとされる顔だって平安時代と今では全く違う。美の定義なんて曖昧だ。美以外のものだって曖昧なものだらけだけど、私たちはいつもそれが確かなものだと信じて疑わない。

    正しいことなんて世の中にはないのかもしれない。
    ただその時の世界を取り仕切っている人々が、私たちにどうあってほしいか、
    それで正しさとか間違いって決められているだけなんだろうと思った。

    普段考えもしないことを考えてしまう本だった。

  • 表題作含む短編集

    読んでいてリアルに震えがきた
    やっぱり、村田沙耶香やべぇわ

    収録は以下4編
    ・殺人出産
    ・トリプル
    ・清潔な結婚
    ・余命



    ・殺人出産
    10人生んだら1人殺せる制度のお話

    営業事務として働く育子は、「産み人」となった姉・環がいる
    職場でも産み人となった人の穴埋めのために早紀子が入社し、誰にも言っていないはずなのに、産み人となった姉に会わせてほしいと頼まれる

    「殺人は悪」という常識が覆った世界
    「殺したい人がいるから出産する」「人を殺したならば出産させ続けられるという産刑」
    殺意から命が生まれるというパラドクス

    100年後、人間の価値観が変わって殺人が必ずしも悪ではなくなった世界
    さらに数十年「産み人は命を産む尊い人」と認識されている

    そして「産み人」が指定する「死に人」
    誰でも「死に人」になる可能性はあるわけで
    もしこの制度があるなら人に対してもっと慎重な関係性になるのでは?という疑問が起こる
    しかし職場ではパワハラ・セクハラが見逃される環境

    この辺は、銃社会のためいつ誰がブチギレて発砲される可能性がある国でも人は謹んだ人間関係を築いていないので納得

    それよりも、指定した人を誰でもというのであれば、それなりの信念をもった集団が政治家、企業の重要人物、有名人を殺したりしないんだろうか?
    嘱託殺人のようなものは禁止されているけど、どこでそれを証明するんでしょうね?
    まぁ、自分の半生とも言える期間を産み人として過ごすうちにそんな気持ちもなくなるのかもしれないけどさ

    「死の可能性があるから、生きていることのすばらしさを実感する」という言葉
    ほんとかね?
    誰しもがその可能性を考慮して生きてはいない気がする

    星新一の「生活維持省」でも社会システムとして突然訪れる「死」が描かれていたけど
    案外、人ってそんな制度に影響を受けずに生活できるものかもしれない




    本物の殺意とは何か?
    どこからが本物の殺意か?

    私は明確に「こいつ殺したい」と思った事はないけど、「こいつ死なねぇかな」「死ねばいいのに」と思った事はあるわけで
    自分の意思とは関係ない状況で死んでほしいというのは殺意に入るのか?

    もしくは、「殺したい」と思って何某かの準備をし始めたけど途中で辞めるのは、本物の殺意はなかったのか?
    行動を起こすという意味では、産み人になるのと同じでは?
    もしくは日常のふとした瞬間、例えば包丁を持っているときに目の前の人間を刺したらどうなるかという妄想は殺意になるのかどうか




    昆虫食という風習
    殺人が悪という価値観が変わるのと同様に、人の価値観なんて簡単に変わるというのを示していると思う
    早紀子さんは殺人出産に関しては以前の価値観に戻すべきと主張しているにもかかわらず、蝉スナックに関しては最初は敬遠したものの次は受け入れている描写がある
    その辺が価値観の変容の容易さと、片方の価値観だけ戻そうとする皮肉になっているんんだね



    ミサキの発言を通して、次世代の常識が描かれている
    殺人出産の制度で生まれたミサキにとっては、そのシステムを肯定するしかないわけで
    というか、生まれたとき否定する考えすらない


    環という、現代に於いては異端な考えを持つ存在だけども
    常識が変われば普通に、むしろ称賛される

    早紀子さんも変わった常識の中では生きづらいんだろうか?


    自分にとってホームレスより猫の方が大事とか言って炎上した輩がいるけど
    そんな発言が炎上する世の中にほんの少し安心感も覚えつつ
    その常識ですら簡単に変わるという状況の危うさに震える

    「なんで人を殺してはいけないのか?」という疑問に、これまでは自分なりの答えを持っていたけど
    これを読むとその答えが揺らぐ
    社会の発展のために、システムとして容認された殺人制度
    こんな形で問題提起してくる村田沙耶香が怖い





    ・トリプル
    3人で付き合うことが一般的になった世界
    異性同士で付き合うカップルもいるが、その愛し方の形態が異なる

    ただ単に3人で付き合うというだけでなく、3個体で一つのような振る舞いをするのが特殊な設定なんでしょうね

    カップルの性行為に対して嫌悪感を抱くようになるというのは、生態学的に生殖隔離が起こりそうな予感がする
    この先、さらに何十年後を想像すると常識がもっと変わっていそうで怖い



    ・清潔な結婚
    性を排除した結婚のお話
    「クリーン・ブリード(清潔な繁殖)」をしてまで子供欲しいの?
    もう、それ普通の夫婦じゃんというツッコミはズレているんでしょうねぇ

    「性的パートナー」と「配偶者」が必ずしも一致しない価値観は消滅世界につながる設定になっている



    ・余命
    発達した医療によって、「死」の時期を選択するようになった時代のお話

    自分が死にたいときに、自分のスタイルで死ぬ

    ほんの数ページの物語で、淡々とした死に方の手順が描かれているだけなのに、なぜかものすごく静謐さを感じる






    <総評>

    村田沙耶香は消滅世界、コンビニ人間、地球星人と読んできて4作目
    地球星人を読んで打ちのめされ、人類を裏切るかも発言をした芥川賞より前の作品ならどうかと思って読んでみた

    やはり、村田沙耶香の作品は自分の価値観を100tハンマーでぶったたいてぐちゃぐちゃにしてくる
    やはり村田沙耶香やべぇ

    現代の感覚からしたら狂気と思われるような思考でも
    それが社会のシステムの一部になったとしたらという思考実験
    翻って、今の自分たちの常識ですら昔の人から見たら狂気に見えるかも知れないと考えさせられる
    言われてみれば当たり前なのに、指摘されるまで気づかなかったなぁ


    今からしてみれば異常な世界なのに、所々にそんな常識な時代ならそうかもねと思える説得力
    ツッコミどころのないわけではないけど、それを上回る問題提起力なんだよなぁ

  • なんか申し訳ないのだけど、、、

    作者の書きたいことが先行し過ぎている気がする。
    現在の恋愛、結婚、出産に対しての当たり前、に疑問を呈する話なんだけど、特に表題作の殺人出産レベルの制度改革が起きたら世界の政治や企業経営のあり方が大きく変わってしまいそう。そのレベルの話なのに、OL同士の付き合いやおしゃべりみたいな話題にのみ終始しているのは話の規模が小さすぎると感じました。

  • やっぱりね!『妊娠、出産』て懲罰相当だったんだよ!
    妊娠中の苦しみや出産の痛みは何かの罰かと思うこともあり、この小説読んで『妊娠、出産』賛美に一石を投じてもらった感覚になりました。あと、強制的に男性にも出産させるっていう科学技術が本当に現れればいいのに。

    表題作と他3篇の短編ですが、どれもあり得そうな近未来の設定で、願ってもいることでもありました。
    ありきたりな言葉ではありますが、生と死あるいは性と愛をこんなにも軽やかに淡々と読ませるのはすごい小説。

  • 村田さんの作品を初めて読みました。
    すごいですね……自分の常識が簡単に壊されました。いい意味でグロテスクで、私はちょっと気持ち悪くなりました(笑)殺人出産制度を他人事のように見ていた主人公の末路がもう……
    あと残りの短編は正直あまり共感できず、さらっと流してしまいました。

  • ずっと引っ張ったオチには、さほど意味が無いというところが「純」文学だな、という感じ。

    この物語の中では何もかもが日常のこと。感覚が麻痺していく快感があります。

  • うーん、これはちょっと気持ち悪かったかも。なかでも「殺人出産」は読んだ後食欲をなくしてしまったほど。「トリプル」も描写が濃すぎた…。まだまだ私も常識にとらわれているのか。それと、私にはちょっとspeculativeすぎたかな。『コンビニ人間』や『地球星人』のように特殊設定がないほうが、主人公の違和感に集中できて、入り込みやすいのかも。つまらん!(自分が)
    辛島デイヴィッド『文芸ピープル』に書かれていた村田さんのもろもろが納得できたのは面白かった。『地球星人』の反響に関して「成功の前はカルト作家でした。みんな以前の村田が戻ってきたと言っています」と村田さんが語っていた意味がよくわかったし、向こうの編集者が『コンビニ人間』の次に出すものとして、この『殺人出産』なども候補にありつつ、結局は『地球星人』(←長編だと特異な世界観にじっくり浸れるし、作品としても強度が桁違いだと思う)を選んだっていうのも納得だし、あと、村田さんが自身の作品世界について「ディストピアではなくユートピア」と語ったことに関して。私は収められている4篇の中で「余命」が一番わかるなと感じたんだけど、ここに描かれるのがまさに一見ディストピアなユートピア。これをユートピアだと言えば、責められる現実――生きたくても生きられない人、大事な人を亡くした人もいるのに不謹慎だ、みたいな――はわかってるし、読みながら、ほんとにこれを望んじゃっていいのかな、っていう問題点もいくつか頭に浮かんだけど、それでもいっときこのユートピアを夢見る自由は奪われたくない。
    村田さんの作品を続けて読んで、「合理的」という言葉がよく出てくることに気づいた。一般に文学作品的な文脈だと、機械的とか冷酷とか切り捨てとかちょっと負のイメージがあったり、自己啓発書とかビジネス書なんかで追求されていそうな言葉(偏見か)だけど、そういうのとは違う。あやふやな「情」みたいなものを暗黙のうちに理解することを求められ、それができないと傷つけられたり排除されたりするこの世界で、生き延びるために登場人物たちがすがろうとするのが「合理性」なのかな。まるで祈るように呪文を唱えるように繰り返される「合理的」という言葉がこんなにも切なく響くとは。

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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた・さやか)
1979年千葉県生れ。玉川大学文学部卒業。2003年『授乳』で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)を受賞しデビュー。09年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島由紀夫賞、16年「コンビニ人間」で芥川賞を受賞。その他の作品に『殺人出産』、『消滅世界』、『地球星人』、『丸の内魔法少女ミラクリーナ』などがある。

「2021年 『変半身(かわりみ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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